10話 成長した女の胸
ウッフーン。
モワワーン。
ボヨヨーン。
湯気がもくもくする中で、アタイは改めて自分の胸の大きさを確認する。
お、大きくなっていやがる!
目の前にいる女、シズカよりも!大きく!
「ビゼ。アンタ最近、生意気じゃない?」
アタイの名前を呼びながら、大きくなったアタイの胸を凝視するのはシズカ。貧乳だ。
色々、訳あってアタイとシズカはこの国を旅している。
「シズカは歳を取らないんでしょ?それなら、ソレも成長しないのは当たり前だよ」
アタイはシズカの胸を指さす。貧相な平原。
シズカはイセカイというところから来たらしいが、そこの出身者は歳を取らないらしい。
「何言ってんのよ!この年齢じゃそもそも成長は期待できないのよ!」
そう言ってシズカがアタイのそれを揉もうとしてくる。
・・・こんな、お色気成分もこんな所で終わりだ。
アタイの名前はビゼ。
それ以上でも以下でもない。
《ムジーク王国ー地方都市リバンタン》
《公衆浴場》
さて、お色気シーンを終えたアタイたちは服を着て、綺麗な身体で冷たい水を飲んでいる。
「ふぅ〜っ!やっぱりお風呂は最高ね!」
シズカは嬉しそうだ。アタイは風呂は嫌いだったのに、シズカとの旅を通じて、毎日風呂に入らないと嫌な気持ちになってしまう身体になっていた。
風呂場から離れた休憩所に、ビラが置いてある。
アタイは、それをただ何となく見てみる。
「ブーーーーーッ!!!!」
水を吐き出すアタイ。
「何やってんのよ!ビゼ!」
「これ!見なよ!シズカ!」
ー〝騎士団長フレデリック!ムジーク王の愛娘アンナとの不貞行為で追放!〟ー
「ブーーーーッ!!!」
生温い水がアタイの顔にかかる。
2人で爆笑した。
「フレデリックのやつ!やらかしたな!」
「・・・まさか、フレデリックさん・・・」
フレデリックとアタイらは、行動を共にし、この国の一大事をなんとかした過去がある。
特にアタイはあの男に救われた。
恋みたいな感情は無いけど、特別な人だ。きっと父親ってのがいるのなら、そういう感覚が正しい。
そんな恩人が・・・ぷぷっ。
不貞行為がバレて、騎士団長追放だってよ!
「格好つかないのもフレデリックっぽいな!」
「あの人は追放されるのが性分なのかしら」
あー、なんか、フレデリックの事思い出したら・・・
ちょっとだけ、会いたくなっちゃった。
「シズカ。フレデリックに会いに行かない?」
「でも、今はどこにいるか分からないでしょ?」
「う〜ん、確かに」
そうだよな、思った以上にこのムジーク国は広くて、人がたくさんいる。
城に行けば会える状況でもないみたいだし、無理かなぁ・・・
「ま、そのうちふらっ、と現れて、何処かで出会うわよ」
「そんな気もする!」
アタイはちょっと寂しかったけど、旅を続ける事にした。
《翌日》
《地方都市リバンタンー国営図書館前》
「ここね、数年前、私が死にかけた場所」
シズカはそう言う。新しい建物だ。
「死にかけた?」
「うん。ビゼに会う前。当時のノイズ派の人がこの図書館を襲撃したの。その爆破に巻き込まれて・・・」
新しい建物は建て替えた後の図書館らしい。
「ごめん」
ノイズ派、というのは、その昔アタイが属していた集団。簡単に言えばテロ組織。
今はシブオンプと言う名前に組織名を変えて、国と対等に会話をし、このムジーク王国を善い方向へ導く為に活動している。
アタイはそのシブオンプのメンバーじゃない。
自らそれを望まなかった。
「別にいいよ。ビゼが直接やった訳じゃないし」
「う〜ん・・・」
アタイは正直、複雑だった。
アタイを・・・旧ノイズ派の人間を憎んでいる人は、たくさんいる。
旅の途中で罵詈雑言、嫌がらせを受けた事もあった。
元ノイズ派の人間は右手の甲に刻印がある。
アタイはそれを隠していない。
それがアタイの枷として生きていかなければならないからだ。
「ビゼのミソギは、もう十分だよ」
アタイには心強い味方もいるし。
その時。
これまで見たことのないような髪型の男がアタイ達に話しかけてきた。
「ちーっす」
ずいぶん軽々しい物言いだな・・・
アタイは無視する事も出来た。
でも、続く男の言葉で、無視する事は出来なかった。
「ねーちゃんのその右手の印・・・ノイズ派の刻印ッスよね?」
身構えるアタイとシズカ。




