08話 不貞行為の元騎士団長
《キーレギエタの街ー地下円型闘技場周辺》
《アシトとの合流予定地》
「はぁ、アシト、大丈夫かなぁ」
マタタキは分かりやすく行ったり来たり歩いて、アシトの帰りを待っている。
「大丈夫だろう。アイツなら」
俺たちは潜入を終えたアシトと合流する予定の場所にいた。
アシトはマタタキを慕っている。それなのに、騎士団長である俺、フレデリックを舐めてかかっている問題児だ。
・・・まぁ、褒めたくはねーけど。
アイツのチート能力は凄い。
対象を睨んで後退りしている間は、その対象からの攻撃が全く効かないというめちゃくちゃな能力だ。
俺が騎士団長としてアシトに戦いの手本を見せた時、アイツに攻撃が効かなかった。
その時からアイツは俺を舐めている。
チート能力というものは、その力を持つ者同士には基本的に効かない。
そういうわけでアシトはマタタキにその力を発揮出来ず、アシトは試合で負けた。
それからアシトはマタタキを先輩と慕っている。
変な奴だ。
「マタタキ先輩ッ!」
曲がり角からアシトが現れる。
後退りで。
「アシト!」
そう、マタタキが言った瞬間、アシトの頭部に鉄球が直撃し、落ちる。
・・・あの鉄球、俺たちを襲ったやつだ。
俺たちがアシトの元へ向かうと、アシトの視線の先に、男がいた。
力の結晶を持ってる。
「先輩!アイツ!魔法使ってやがります!逮捕っスよ!」
「やはり・・・貴様らか」
男は、アシトと俺たちが繋がっている事に何か納得しているようだ。
俺は剣を抜く。
「俺の宿を襲撃したのはお前か?」
「隠すつもりはない。そうだ。バカな酔っ払いが情報をくれたよ。もちろんあのバカは殺した」
イツージの事か・・・?
「お前はこの国の言語が通じるようだな」
「当たり前だ。この国の人間だからな」
そう言って呪文を唱え、鉄球を造り出しを宙に浮かせる男。
コイツのせいで・・・
俺はあの宿の修繕費を払わされたのだ・・・
ただでさえ、金がないというのに!
許さん!
「俺は怒っている」
と格好をつける俺にアシトが水を差す。
「不貞行為の元騎士団長!コイツぁワイの獲物だぜ!?」
ふ、不貞行為のも、元騎士団長!だと!
いやその通りだけど!やっぱりコイツ・・・俺の事舐めてやがる!
俺の怒りは更に増幅した。
「アシト!お前に何が出来る!」
アシトは確かに無敵だ。
しかし、コイツが無敵の時は後退りしているので直接的に攻撃するタイミングが少ない。
しかも、コイツが変なのは俺が弓矢や武器を勧めても、〝男たるもの拳で戦う〟などと言って、武器を持つ事を拒んでいるのだ。
あいつがモノを持つのは物資運搬練習の時の箱と、掘削練習の時のスコップぐらいだ。
本当に変わった男だ。
「エロジジイこそ!あの魔法の鉄球を避けれんのかよ!」
え!エロジジイだと!!!
いや・・・その通りだけど!
それに、魔法を避ける方法はない!
「アシト!お前が盾になれ!俺が斬る!」
「いいとこ取りッスか!?」
「今はそんな事言ってる場合じゃないだろ」
「鬱陶しい・・・」
男が再び呪文を唱えると、今度は小さな鉄球が無数に宙に浮かんでいる。
そして男が手をひゅっ、っと俺たちに向けて振ると、弾丸のように鉄球が飛んできた。
後退りしながら、チート能力でガードするアシト。
その後ろにいる俺。
情けない。コイツの力が最強とはいえ、部下を盾にするなんて騎士団長らしくねぇな。
・・・やってやる!
俺は数話前の黒装束を思い出した。
真似をするように左右の壁を蹴り、高い位置にどんどんと登っていく。
そしてある程度の高さをつけた時、最後の一歩に力をつけ、勢いをつけて壁を蹴り、剣を向けたまま上空から敵に向かって突撃した。
「どりゃあっ!!!」
怒りを込めて。
スカッ!
怒りすぎて冷静さを失う俺。
男の位置よりも少し先に飛び込んでしまった。
「何やってんすか!エロジジイ!」
「うるせぇーっ!」
振り向いてそう叫ぶと、俺が最後に力を蹴って踏みつけた壁が崩落し、それが男を下敷きにした。
「ふ、ふん・・・まぁ、計画通りってヤツだな」
「かっ、カッケェっす・・・不貞行為の元騎士団長さん・・・」
「おい、アシト。とりあえずその呼び方やめろ」
「うっす・・・」
とりあえず、重要参考人確保!!!!




