06話 きな臭い施設
「何故、何も喋らない」
黒装束は俺が剣を首筋に当てても、全く声を出さない。余程の忠誠心なのか・・・?
その瞳は俺を睨みつけたまま動かない。
「どうしてお前は死体を移送している」
喋らない。
「アンダーコロッセオは人殺しにこだわっているな。目的は何だ?」
喋らない。
「自分の立場を理解していないのか?」
喋らない。
いいや・・・コイツ・・・
喋らないんじゃない。
喋れない、んだ。
何故なら、コイツは・・・
「俺の言葉を理解していないのか?」
俺は察した。この黒装束は異国の人間だ。
異国の人間がこのムジーク王国にいる事自体は、別におかしい事じゃない。
ただ・・・アンダーコロッセオというきな臭い施設の関係者であり・・・
死体を運んでいる。
その時。
黒装束の身体がビクっ、っと少しだけ動いた。
「なっ!?お前っ!!!」
男の口から大量の血が出ている。
コイツまさか、自分で自分の舌を切ったのか?
そのまま動かない男。
一体、どうなってるんだ?
マタタキの読みは当たっていた。
このアンダーコロッセオ・・・何かあるぜ。
とりあえずここを離れる必要がある。
死体たちを運ぶ力も残っていない。
俺はフラフラしながら、迷路を抜けるように歩いて、
宿に着いた。
そして眠りにつく。
《2日後ー安宿》
「フッさん!」
マタタキが現れたのは俺の傷口が塞ぎ始めた2日後だった。というか、俺はそれまでずっと眠っていた。
マタタキの声で目が覚める。
「マタタキ。俺も話したい事がある」
「え?」
俺は説明をする。1話前の話。
マタタキが去った後に俺は再びアンダーコロッセオを目指した。
そして黒装束の男に出会い、戦闘になったという事。
男が引いていた荷車の荷台には・・・
「敗北者の死体があった」
「やっぱり、おかしいよ」
「ああ。お前はどうだったんだ?王に掛け合えたのか?」
「何度もトライしたんだ・・・でも謁見すら許されなかった」
「なっ!?なんで!?」
「不貞行為の騎士団に傾ける耳はない・・・って」
「なんか・・・すまん」
「でも、フッさんがアンナ姫に手を出さなければ、アンダーコロシアムには辿り着かなかった」
マタタキ!その言い方止めろ!
「とにかく、何かがおかしいよ」
「そうだな。体勢を立て直して・・・」
「えっ?」
マタタキが急に驚いている。
「どうした?」
「フッさん!僕はしゃがんでいる!未来が視えてる!よく分からないけどフッさんもしゃがんで!」
言われるがまま、腰を低くした瞬間だった。
バン!!!!!
鉄球!?
大きな鉄球が俺たちの位置に飛んで、壁を突き破って通り抜けている。
・・・えっ?
とりあえずマタタキの指示に従って良かった。
「敵襲!?マタタキ、未来は見えるか?」
俺は剣を鞘から抜いた。
怪我も治りかけって言うのに・・・
「とりあえず出口に向かっている!急ごう」
俺たちは訳もわからぬまま、宿を後にした。
ちょうど俺が寝泊まりしていた部屋が丸い大きな穴が空いてブチ抜かれている。
俺とマタタキは走る。
「厄介な事に巻き込まれたみてーだな」
「とにかく、逃げよう」
・・・おおよそ見当はついている。
あのクソジジイ、イツージだ。
あいつとマタタキ以外、俺があそこに泊まっていたことは知らないはずだ。
目的が見えない・・・
とりあえず今は逃げる他無いだろう。
《キーレギエタの街ー郊外》
「ここまで来れば大丈夫だね」
マタタキも俺の鍛錬のお陰で長距離を走っても息切れしてなかった。
「マタタキ。お前、強くなったな」
「フッさんのお陰だよ」
「さて・・・どうしたもんか」
途方に暮れる俺。
ムジーク王の力も借りれない。
とはいえ何かあの場所はきな臭い。
でも、めちゃくちゃ狙われてるし!俺!
「まだ顔の割れていない人を、潜り込ませて、調査させるのはどうかな?」
マタタキが提案する。
「そんな危険な事、させらんねーだろ・・・それに名乗りを上げてくれるような奴もいないしなぁ・・・」
「アシトなら、やってくれるんじゃないかな?」
「うーむ。アイツか。アイツなら、俺の命令は聞かないが、お前の命令は聞くかもしれねーな」
アシト。
ソイツはいわゆる新キャラなわけだが。
アシトは俺の兵士団にいた変な髪型のヤツ。
マタタキとは仲が良い。
何故ならアシトも、異世界からの転生者で、チート使いだから、だ。
「頼んでみるよ」
「あ、ああ・・・」
少し性格に難ありな男。アシト。




