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その座を奪われた主人公   作者: 大野春
第一章 鎬を削る場所
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04話 久しぶりの感覚


イツージの情報を思い出す。

対戦相手の名は、ルベラーバ。

年齢不詳。性別不詳。

異国から現れた剣士、らしい。


俺はその剣士が持っているものを見た事が無かった。

イツージの情報通りのものを持っている。


(あれが突剣レイピアという武器か・・・)


剣というより、凄く長い針だ。

ま、武器なんて関係無いな。

俺はぐっ、っと足に力を込め、大地を蹴り、相手の間合いに詰め寄った。


(行けるッ!)

剣を振り切る俺。

それを軽い身のこなしで、避けるルベラーバ。

俺の横切りに対し、バク転でそれを避けた。


「へぇ〜、ちょっと怖いワ」

ルベラーバは顔色ひとつ変えない。

盛り上がる会場。


「じゃ、次はアチキの番」

そう言った瞬間。

久しぶりの感覚。

ふたつの感覚。


ひとつは、俺の戦士としての感覚。

殺気を感知し、回避行動をとっていた。


もうひとうは、痛覚。

その剣が俺の脇腹を掠めて、刺さっていた。


「ゔぐっ!」

痛い!ルベラーバがその刺さった剣を即座に抜くと、肉が抉られる。

めちゃくちゃ痛い!


血が滴るその剣をよく見ると、無数の矢の刃が連なったような形をしている。

刺すときは刺しやすく、抜く時と抜き辛いし、逆刃が抉る。〝返し〟というものだ。

なんて合理的な武器・・・


「アチキのスピードに勝るなんて素晴らしいワ。次は確実にブチ抜いてアげる。その心臓!」


俺は後退し、間合いを取る。

いやぁ〜、脇腹がめちゃくちゃ痛ぇ!

しかもアイツの剣はリーチが長い。

結構な距離を稼がないとアイツの攻撃を避ける事が出来ない・・・


それに・・・スピードが半端ない!


俺はマタタキの様にイセカイから来たわけじゃないので、チート能力など無い。

脚力に自信があって、踏み込んだスピードで間合いを詰めて切る。それが俺のファイトスタイル。


・・・うん、つまり今は不利だ。


「あっ!」

ルベラーバが観客のひとりを指差す。

えっ?不意に見てしまう俺。


なんてこった・・・


「凄いワねアンタ」


ギリギリ、心臓の横にその剣が刺さっていた。

こ、こいつ・・・卑怯な手を使ったな・・・

いや、これも戦術か。

ここはそういう場所・・・


「これがこの場所の戦い方か・・・」

「やっと、喋ってくれたワね」


武器自由。戦い方自由。


負けは許されない。つまりは勝利の為に天秤にかけるものもない。

これがこの闘技場のスタイル。


俺は自分の実力で勝とうと思ってたが・・・

そろそろイツージの力を使わせてもらうか。





「おい、ブス!卑怯だな!お前!」





イツージから教わったルベラーバの情報。コイツは、容姿を馬鹿にされると冷静さを欠く、というのだ。



「あああああ、貴方、今、なんてアチキの事、なんて・・・」

「何度でも行ってやるぜ。卑怯者のドブス!」


「きいいいいいい!!!!」


「ブス!ブス!ブーーース!!!!」


そう言いながら踏み込む俺。

動きが鈍い!やれる!

俺は自分の剣を振り、ルベラーバの突剣を弾いた。


弾かれた剣が遠くへ飛ぶ。

武器を失えば、コイツは身軽だけど・・・

もうひとつ攻撃を加えれば勝てる。


「お前がどっちなのか!確かめてやる!」

俺は右脚に力を入れ、ルベラーバの股間目掛けて蹴り上げる。



・・・アレの感覚がある。



ルベラーバは痛みで失神した。



観客が湧く。

「いいぞ〜っ!」「殺せ〜っ!」「刺せ〜!」


異常な空気だ。

人を殺すことを望んでいる。

コイツらは戦争を知らない世代だ。


俺はもう60年近くなる時代の戦争を体験している。

色々あって今、この平和な時代にいる。


人の死を身近に感じていない。

だからこそ、人の死を面白おかしく

興味を持ってしまうのだ。



「うるせぇえええええええ!!!」



俺は叫ぶ。



「俺は不要な殺しはしない!賞金のボーナスなんて興味ねーよ!じゃあな!」




その台詞も、歓声に掻き消されていた。




それにしても、身体に穴が二箇所・・・

めちゃくちゃ痛ぇ・・・






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