03話 報酬が増える仕組み
《ムジーク王国ーキーレギエタの街》
王都ピアノから蒸気機関車で移動する事1時間程度。
その街に到着する。
ここは王都から少し離れてはいるが、変わらず都会である。それでいて王都の色は薄い。
そういう訳で、地下円型闘技場の様な無法地帯が生まれたのかもしれない。
右、左、右、まっすぐ・・・紫色の壁の方に向かって歩いて・・・左・・・
迷路の様な狭い路地。高い建物の壁に囲まれていて、太陽もあまり届かない道が続く。
イツージに連れられ、俺とマタタキは忘れてしまう程の複雑な道のりを経て、地下へと降り、目的地へ到着する。
「・・・本当にあるんだな」
「ああ。ここは知ってる奴らだけが行ける夢の場所だ」
その薄暗い階段を降りて行く。
結構な段数があった。
進むにつれ、光が見え始める。
そして、歓声が聞こえた。
《地下円型闘技場》
「まぁ見てみろよ、フレデリック」
イツージがステージを指さす。俺たちよりももっと低い位置にある円型のそれが決闘場のようだ。
俺たち含め、観客は上から観戦している。
ひとりは小さな斧を持った男。
もうひとりは武器を持たず、両の拳を突き出して牽制する男。
戦いの真っ最中であった。
「斧を持ってるのが、マサカリという闘志だな。腕の筋肉を見ろ。並のもんじゃない」
「評価に値する」
正直、驚いた。
あんなに筋骨隆々な男は、俺の元騎士団のメンバーにはいなかったからだ。
しかし、逆三角形のその体型は、斧を振り回すだけの機能を備えているだけにしか見えない。
「武器を使ってる方が有利じゃないか!」
マタタキは不満を漏らしている。
「いいや、あっちの方が強そうだぜ・・・」
「鋭いな。フレデリック。あの男の名前はハドゥンケ。腕の筋肉量はマサカリに劣るが、脚を含めた全体のバランスはハドゥンケの方が良い」
そう。運動量、俊敏性、そう言ったものも戦いには必要だ。
マタタキにそんな説明をしていると、ハドゥンケはマサカリの斧の斬撃が届かない、内側の範囲、つまりマサカリに密着するように近付いて、腹に一発パンチを喰らわせ、ノックダウンさせた。
盛り上がる闘技場内。
「空気感は味わえたか?」
イツージが俺に問う。
「ああ。思ったより本気だな・・・ってあれは・・・」
驚いた。
倒れたマサカリの首を、ハドゥンケが締めている。
「おい、勝負はついてるだろ!?」
「うーっ!!!無理無理!」
目を手で覆うマタタキ。コイツは人が死ぬところが嫌いだし、人を斬ることも出来ない。相変わらずだ。
「おいおい、フレデリック。この場所の勝敗は、命を奪った奴が勝ちで、命を奪われた奴が負けだぜ?」
ニヤつきながら話すイツージ。だからこそ、観衆は熱狂しているのだ、と付け足した。
ええーっ、マジかよ。。。
まぁ・・・
「俺は負ける事は無いから、心配はいらないがな」
「言うねぇ」
「フッさん。僕ここ無理かも。グロ耐性ないし。あと、フッさんが人を殺すところ、見たくない」
「う〜ん・・・」
マタタキの願い。この気持ちについては、未だに俺は理解していない。敗北は死を意味する時代を生き抜いてきた俺からすれば、マタタキの考えは平和ボケしているだけなのだ。
でも、コイツにはなにかとお世話になっている。
「命を奪わなきゃダメなのか?」
「チッ・・・言いたくなかったけどよ、教えておくぜ。相手が再起不能で勝利だ。さらに絶命させれば闘士の報酬が増える仕組みになっている」
「随分と悪趣味だな・・・」
殺す事で報酬が増える?
随分とまぁ・・・戦争みたいな考えだな。
俺がこの賭け事の場の支配人なら、闘士は生かしておく。殺す意味もないし。
「まぁ良い。お前が殺したきゃ殺せば良い。まぁ考えてみろよ。相手は殺す気でかかってくるって事だぜ」
「ふん。まぁ、良い」
《闘士控室》
こうして、俺は控室にいた。
対戦の申し込みをし、試合が決まったのだ。
イツージが対戦相手の情報を俺に流し込んだ。
勝てば賞金。殺すつもりはないから、通常よりは少ない。
イツージは倍率の高い無名の俺に金を賭ける。
俺が勝てば、幾ばくかは金が手に入る。
マタタキは引き気味だし、1試合だけやって、終わらせよう。
そんな事を決める俺。英雄は判断が早いのだ。
こうして俺は、控室のドアを蹴り飛ばして開け、
先程まで決闘を見ていたその場所に立つ。
歓声が聞こえる。
「ヨロシクねぇ」
「戦いの場に言葉などいらない」
剣を構える俺。
相手もまた、剣士だった。




