47話 旅する貧乳
《ノイズ派の王都襲撃から3ヶ月後》
「本当にいっちゃうの?」
目の前のクソガキ・・・マタタキが、寂しそうな顔をしている。私はもちろんこのクソガキを男としては見れないけど、あの日久しぶりに再会した時は、男の顔をしていた。
ところが今、それは子どもみたいな顔で不安そうにしている。
「復興も目処がついたし、私はもうここにいる理由が無い」
私は、目的は無かったけれど、かといって停滞する生活をやめることにした。
少し前まで、フレデリックさんが現れるまでは、私は盗みを働いて、人里離れた教会で暮らす日々を過ごしていた。
そんなスローライフに、今更戻る気は無い。何故なら、こんなにも刺激的な冒険を楽しんでしまった今、退屈な日々をどうにかしたいと思うからだ。
私は魚骨街を後にする。
ずっと旅してきて、同じ異世界からやってきた者同士だったのだけれど、私はマタタキと簡単に別れた。
コイツと旅するっていう選択肢もあったけど、なんとなくそれは辞めた。だって、未来が見えちゃうんだもん。そんなの、ぶっちゃけつまらないじゃん。
「じゃあね」
「寂しいけど、またどこかで会える気がする」
ーーーーー
マタタキと別れて、少し歩いて、ああ、これからどうしよう、なんてそんな事を考えていた。
どこへ行こうか。まぁ、この力があるから、金に困る事はないけど・・・
「シズカ!」
目の前に現れたのは、ビゼだった。
「ビゼ、拘留が解けたのね」
ザークが長期の禁固刑を受ける代わりに、ビゼやトキタビは数日程度の拘留となっていた。ああ、そうだ、私、魚骨街から歩いて来たけど、あそこはビゼの育った場所だったっけ。
「まだ王都にいたの?」
「うん、ちょうどね、実はさっきまで魚骨街にいたんだよ」
「なんでまた、あんな所にいたんだい?」
「ちょーっとだけ。お手伝いって感じ」
特に何かを示し合わせた訳じゃないのだけれど、私たちは並んで歩き出していた。
「シズカ、これからどこに行くの?」
「決まって無いんだよねぇ」
「じゃあさ!アタイと旅に出ようよ!」
「いいねぇ、女子2人旅」
ビゼはもう、ナイフを所持していなかったし、革手袋もはめていなかった。久しぶりに見たその姿は、髪が伸びていて、女の子になっている。
ああ、よく見ると私なんかよりめちゃくちゃ可愛いじゃん。こんな子が爆弾作動させようとしてたなんて、考えられない。
「痛っ!」
街を歩くと、石が飛んできた。
「ノイズ派がいるぞ!!!!」
手袋をしていないビゼの手の甲には、横に広い楕円のマーク・・・ノイズ派の証が見えていた。この街の人間は憎んでいる。ノイズ派を。ノイズ派は解体されたんだけど、やっぱり憎まれている。
「アタイにとって、この刻印は、戒めみたいなもんだよ。受け入れて生きるさ。やってきた事は、もう元には戻らない」
ビゼは手の甲をまじまじと見ている。
「あっ!」
私は、街の復興の手伝いの時にマタタキが落として拾ったままのペンをポケットから取り出した。
マジックペンぐらいの太さで、よく分からないインクで文字が書けるペンだ。
「ビゼ、手を貸して?」
私はビゼの楕円の刻印の横に棒を一本書き加えた。
♩
「え?何これ?」戸惑うビゼ。
「音符」
「何それ?」
「楽しい気分の印」
「ふ〜ん」
「いい感じじゃない?」
「悪くないかも」
これから旅する私たちにぴったりな記号だ。
「どこいく?」
「とりあえずお腹空いた」
「だね〜」




