45話 察しの良い英雄
《ムジーク城ー地下結晶室》
再びきたその空間は、なんつーか、禍々しい空気感が漂っていた。ツヨシの不思議な力で連れてこられる俺。
巨大な水晶。そして、ひとまわり小さな爆弾。ビゼが作動させようとしていたやつだ。
それにしても・・・うまく呼吸が出来ない。
さっきの一撃が強すぎる。
「・・・いいか、英雄サン。俺様は爆弾なんてチンケな物を使うつもりはない」
「はぁ、はぁ、さっきまで、びびってた、くせに、この爆弾によ」
パチン、と平手打ちを喰らう。
「黙ってろ、小物!」
ツヨシが俺の元を離れる。
「いいか?この結晶は魔法として使う為に俺様の力を貯め込んでいるものだ。これは単純に、俺様の力・・・これを一気に解放したら、どうなるかな?」
何を考えているんだ、コイツ・・・
「それはもう、破壊兵器と化すだろう。このチンケな爆弾が城を壊せるなら・・・俺様の力は、この国をぶっ壊すだろうな」
ニヤニヤしながらペラペラと話をするツヨシ。
「な、なんだよ、おまえ、自爆、するのか?」
「・・・俺様には完壁がある」
「この国をぶっ壊して、自分だけ、生き残るのか、つくづく最低な主人公さんだな・・・」
俺の侮辱に、何も言わずにツヨシは俺の腹を、さっきと同じ勢いで殴る。
やべぇ苦しい、呼吸が・・・
これ、マジで俺の身体の中の何かしらが破裂したり折れてるヤツじゃねーの!?
「国に飽きたら、やるつもりだったんだ、遅かれ早かれ、このムジーク王国は終わるんだよ」
なんとか、何とかしないと、力を振り絞れよ、俺!
そのままゆっくりと歩き、ツヨシは巨大な結晶に両手を触れた。
そして、何かを念じ始める。ピエスパさんがやっていたような、魔法を使う為の詠唱か。
結晶にミシミシとヒビが入り始める。そこから溢れる黒く光る力が、ツヨシの力へ入っていく。
それは加速度的に力を蓄えていく。
動かせ、動け俺!
そうだ!こういう時、身体がボロボロでも動けるのが主人公だ!思い出せ!俺には、主人公補正がある!
「うあああああぁあぁぁあああぁぁぁあぁああ!!!!!!」
俺は叫ぶ。
その瞬間、シズカの力が発動する。
ツヨシの詠唱が無音になる。
魔法が中断される。
ツヨシの身体から、そして、巨大な水晶から、無秩序に力が分散していく!
「・・・お、お前、やりやがったな」
ね、狙ったわけじゃない。身体を動かす為に、士気を上げるために声を上げた。それが、力となって発揮されたのだ。
さて、そうなれば、次は、身体を動かすんだ、俺!主人公補正!動け!
俺は剣を強く握りしめ、動かないはずなのに都合よく動く足を使って、走り出す。ツヨシに向かって、一直線に。
「俺は負けない!英雄は負けないんだよ!」
「・・・英雄さん、たしかにアンタは強い。でも、アンタはペラペラと喋りすぎた。その結果、俺様を本気にさせた。あのまま国王に従っていれば、違う未来があったのかもしれない」
ツヨシが構える。
俺は剣を構えながら走る。正面のツヨシの左側から右側へ力一杯、剣を振り切った。
腕をクロスするツヨシ。
「言ってるだろ・・・俺には力がある」
完壁。
その剣が、割れていく。
俺の強さが、ツヨシの防御力に負けた。
剣が・・・これがツヨシの力。
床に落ちる刃。
「待ってたよ、この隙を」
振り切った俺の右手が、壊れた剣を離した。
床に落ちる剣。
しかし、そのまま俺は手を握る。
全ての武器を防御するチート・・・
全ての武器を防御する?
それなら、武器は使わない。
俺はその拳に
これまでの思いを
憂鬱を
全てを
残りの力を振り絞り
ツヨシの顔面にお見舞いする。
それはスローモーションのように
ミシミシとアイツの顔面にめり込んでいった。
呆気なく倒れるツヨシ。
過呼吸になっている。
「ど、ど、どうして、完壁を見破ったんだぁ、はぁはあ、はぁはあ」
「お前がペラペラと喋った。お前がその力の説明をしてくれたおかげで、閃いたんだよ・・・」
「英雄は察しが良いんだ」




