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その座を奪われた主人公   作者: 大野春
第五章 その座を奪われた主人公 
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45話 察しの良い英雄



《ムジーク城ー地下結晶室》



 再びきたその空間は、なんつーか、禍々しい空気感が漂っていた。ツヨシの不思議な力で連れてこられる俺。


 巨大な水晶。そして、ひとまわり小さな爆弾。ビゼが作動させようとしていたやつだ。



 それにしても・・・うまく呼吸が出来ない。

 さっきの一撃が強すぎる。



 「・・・いいか、英雄サン。俺様は爆弾なんてチンケな物を使うつもりはない」

 「はぁ、はぁ、さっきまで、びびってた、くせに、この爆弾によ」


 パチン、と平手打ちを喰らう。


 「黙ってろ、小物!」


 ツヨシが俺の元を離れる。


 「いいか?この結晶は魔法として使う為に俺様の力を貯め込んでいるものだ。これは単純に、俺様の力・・・これを一気に解放したら、どうなるかな?」


 何を考えているんだ、コイツ・・・


 「それはもう、破壊兵器と化すだろう。このチンケな爆弾が城を壊せるなら・・・俺様の力は、この国をぶっ壊すだろうな」

 ニヤニヤしながらペラペラと話をするツヨシ。



 「な、なんだよ、おまえ、自爆、するのか?」



 「・・・俺様には完壁イージスがある」



 「この国をぶっ壊して、自分だけ、生き残るのか、つくづく最低な主人公さんだな・・・」

 俺の侮辱に、何も言わずにツヨシは俺の腹を、さっきと同じ勢いで殴る。

 やべぇ苦しい、呼吸が・・・

 これ、マジで俺の身体の中の何かしらが破裂したり折れてるヤツじゃねーの!?



 「国に飽きたら、やるつもりだったんだ、遅かれ早かれ、このムジーク王国は終わるんだよ」



 なんとか、何とかしないと、力を振り絞れよ、俺!



 そのままゆっくりと歩き、ツヨシは巨大な結晶に両手を触れた。



 そして、何かを念じ始める。ピエスパさんがやっていたような、魔法を使う為の詠唱か。

 結晶にミシミシとヒビが入り始める。そこから溢れる黒く光る力が、ツヨシの力へ入っていく。


 それは加速度的に力を蓄えていく。



 動かせ、動け俺!



 そうだ!こういう時、身体がボロボロでも動けるのが主人公だ!思い出せ!俺には、主人公補正がある!



 




 「うあああああぁあぁぁあああぁぁぁあぁああ!!!!!!」






俺は叫ぶ。


その瞬間、シズカの力が発動する。


ツヨシの詠唱が無音になる。


魔法が中断される。


ツヨシの身体から、そして、巨大な水晶から、無秩序に力が分散していく!




 「・・・お、お前、やりやがったな」




 ね、狙ったわけじゃない。身体を動かす為に、士気を上げるために声を上げた。それが、力となって発揮されたのだ。


 さて、そうなれば、次は、身体を動かすんだ、俺!主人公補正!動け!


 俺は剣を強く握りしめ、動かないはずなのに都合よく動く足を使って、走り出す。ツヨシに向かって、一直線に。


 「俺は負けない!英雄は負けないんだよ!」


 「・・・英雄さん、たしかにアンタは強い。でも、アンタはペラペラと喋りすぎた。その結果、俺様を本気にさせた。あのまま国王に従っていれば、違う未来があったのかもしれない」


 ツヨシが構える。


 俺は剣を構えながら走る。正面のツヨシの左側から右側へ力一杯、剣を振り切った。

 腕をクロスするツヨシ。



 「言ってるだろ・・・俺には力がある」



完壁イージス


その剣が、割れていく。


俺の強さが、ツヨシの防御力に負けた。


剣が・・・これがツヨシの力。


床に落ちる刃。



 「待ってたよ、この隙を」



 振り切った俺の右手が、壊れた剣を離した。

 床に落ちる剣。

 しかし、そのまま俺は手を握る。



 全ての武器を防御するチート・・・



 全ての武器を防御する?


 それなら、武器は使わない。


 俺はその拳に


 これまでの思いを


 憂鬱を


 全てを


 残りの力を振り絞り


 ツヨシの顔面にお見舞いする。


 それはスローモーションのように

 ミシミシとアイツの顔面にめり込んでいった。


 呆気なく倒れるツヨシ。


 過呼吸になっている。


 「ど、ど、どうして、完壁イージスを見破ったんだぁ、はぁはあ、はぁはあ」




 「お前がペラペラと喋った。お前がその力の説明をしてくれたおかげで、閃いたんだよ・・・」




 

 「英雄は察しが良いんだ」






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