42話 年功序列の元英雄
ムジーク王の命令に、気だるそうなツヨシ。
「王様・・・マジでやっちゃっていいわけ?」
ツヨシはあの日のような気力で首を傾げている。
相変わらずムカつくやつだ・・・ってこの空気。
ちょっと待て!
コイツ、俺の仲間になったんじゃないの!?
「早いところ!この国賊どもを殺すのだ!」
ムジーク王は顔を真っ赤にしている。
「ちょっと待て!ツヨシ!」
俺は語りかける。
「ここにいる、このマタタキと、シズカ、トキタビはお前と同じく、異世界から来た奴らなんだ!」
「・・・で?」
少し驚いた顔をするが、大きな動揺もない。
この反応を見る限り、異世界転生者同士に技が効かない事を知らないようだ。
これはある意味チャンス・・・
「ね、ねぇ!君は高校生!?」
マタタキがツヨシに尋ねる。
「・・・前世、はな」
「やっぱり、君も一度死んだ人間なんだね」
マタタキのその言葉にツヨシが一人語りを始めた。
「ああ、そうさ。俺様は弱かった。弱すぎた。病弱だった。この世界に転生したら、最強になった。ここはそう・・・なんつーか」
ツヨシは首筋を左手でぽりぽりと掻きながら言う。
「俺が主人公の世界なんだよ」
「ツヨシ・・・」
いかん、少しだけ感情が揺さぶられる。
詳しいことなんて知らないけど、こいつ、イセカイでは苦労してきたのか・・・
「・・・しっかし驚いたァ。俺様以外にも、異世界からの転生者がいるなんて。それも何人も。でもまぁ、アレだな。俺様が主人公の世界に、俺様以外の転生者は要らない・・・」
「そんな事言わないでよ!」
シズカが反論した。
「女か。女は生かしても良い・・・俺様が良いように扱ってやるよ」
ツヨシがニヤけながら口を開くと、ニチャアと気持ち悪い唾液が流れた。
「は?なに言ってんの」
シズカが冷たくあしらう。
この状況で、もしかして一番怖いのは、オンナかもしれない。
「・・・そうだな、そちらの英雄さんのように、1人ずつ俺様がブッ飛ばしてやろうか・・・?」
ニヤニヤしているツヨシ。
・・・やっぱり、コイツ!
自分の力が、同じ異世界転生者であるマタタキ、シズカ、そしてトキタビに通じない事を知らない!
全員ぶっ飛ばせると思っているんだ!
「ぼ、僕が行くよ」
マタタキが一歩前に出る。
やっぱりコイツ・・・成長したな。
でも・・・勝算はあるのか?
技が効くとか効かないとか
どうでも良くて・・・
その足が動く。
「待て。ここは俺が行く」
剣を抜く。
俺が行かなきゃダメでしょ。
勝ち目無いんだけど・・・
何も考えてねーよ俺。
でもさ、英雄だし俺。いや、元英雄か。
それでもマタタキに行かせる訳には行かねーよ。
「おおー、解雇された英雄さんが時を越えて、俺様に挑戦・・・っと。胸熱だねぇ」
ツヨシが構える。
「フッさん!」
マタタキが俺を呼ぶ。
「どうした?」
「僕の剣を使って!」
突然の提案に驚く俺。お前の剣を!?
「えっ?」
「僕らの想いを託してる!僕やシズカ、トキタビさんの想いが!」
・・・どういう事だ?
ただ、何かマタタキには考えがあるように見えた。
俺は自分の剣を鞘に収めた。
その鞘ごと、マタタキに渡す。
「それじゃあ、俺の想いはお前に託すよ。もし俺が・・・いいや、そんな事は無いな。大切に持っていてくれ」
「わかったよ」
「・・・お友達の剣を使う・・・アツいねぇ・・・」
ツヨシは体慣らしの体操を始めている。
相変わらずコイツは舐めた野郎だ。
俺は、マタタキに渡された剣を手に取る。
ツヨシと俺は対峙する。
あの日を思い出す。
屈辱的なあの日。
ツヨシの後ろにいた4代目ムジーク王は気が付けば遠いところに退避している。
腰抜けめ。
俺の後ろには
マタタキ、シズカ、ザーク、トキタビ、ビゼ。
さて、どうやって戦えば良いんだ?
集中しろ、俺!
「それじゃあ、お構いなく・・・」
決戦の火蓋が切って落とされる。
ぎゅっ、っとその剣を握る。
その瞬間、俺の脳内に情報が溢れ出した。




