40話 分かってる女
《ムジーク城ー地下結晶室》
地下に広い空間があり、その部屋の真ん中に俺の身体の3倍程の高さがある黒い真珠のような物がある。
これが結晶なのか?
そして、その結晶の真前に、これまた大きな〝どう見ても爆弾〟みたいな精巧な機械がある。
そして、よく見るとその上に・・・逃したビゼがいた。
「ビゼ!侵入者はお前か!」
俺はビゼに語りかける。
広い天井で声だけが響いた。
「フレデリック!!!丁度いいとこに来やがったな!」
ビゼはナイフを遠くにいる俺に向けている。
「・・・空間転移魔法で爆弾をこの場所に持ってきた・・・のか?」
ツヨシが隣でつぶやく。
「空間転移魔法?」
「ああ。全く・・・俺様の力も、良いように使われてるもんだぜ。やれやれ」
「お前の力?」
「何をこそこそ喋っていやがるお前らッ!」
ビゼは殺気立っている。
気のせいか・・・少し震えているような。
「ビゼ!お前が乗っているその機械は何だ!?」
「見りゃ分かるだろ!特大級の蒸気爆弾さ!」
やっぱり、爆弾か。
「お前!それをどうするつもりだ!」
「見りゃ分かるだろ!爆発させるつもりさ!」
「馬鹿の会話をするな」
隣のツヨシのこめかみ付近に分かりやすい水滴が垂れる。
「ツヨシ、どうする?」
「・・・うーん。どうしようもないな」
「おい!何言ってんだ」
「なんとかしろよ!チートってやつでさ!」
ツヨシは頭を抱え始めた。
えっ!?最強王じゃないの!?
「・・・わかりやすく言えば、時間の問題。俺様は力に特化したチートを多数持っているが、あの華奢な女のところへ瞬間移動する力は持ってない。確かに超飛躍のチートを使えば目測で7秒であそこに行けるが・・・その間に爆発する可能性もある」
「えっ!?」
お、お前!どうしてこういう時に!
役に立たないんだよ!
「おい、ツヨシ、お前が魔法作ったんだろ?それなら空間転移みてーな技、使えねーのかよ!」
「あの結晶を見ろ」
俺はビゼの先にある大きな黒い真珠を改めて見てみる。
「あれはな、俺様の力を最高純度の水で結晶化した、力の結晶だ。その力をうまく読み解いて使うのが魔法。どうやら転移魔法を使ったようだが、俺様は俺様だ。力はあるが、使い方は知らない・・・」
説明の長台詞が続くツヨシ。
要するにツヨシは転移魔法が使えない。
「おい!!!そろそろ押すぜ!」
「待てよビゼ!こんなとこで爆発したら、お前も死ぬんだぞ!」
「ンなこたぁ!分かってるよ!」
ビゼは今、冷静さが欠けている。
「お前!何をしたいんだよ!」
「アタイだって分かんないよ!」
「なら辞めろ!そんな事してどうなる!」
ビゼ、お前、自暴自棄になってるのか?
俺は今、お前を止める事で精一杯だけど、
よく考えたら、俺もお前と同じだ。
俺だって何をしたら良いのか分かんねーよ。
隣に憎むべきかも分からない、目的があっさりと現れちまったんだ。
その時、ビリビリ、と走る雷。
マタタキ、シズカ、ザーク、トキタビが現れる。
「ビゼ!辞めるんだ!」
ザークが叫んでいる。
「うるさい!裏切り者!アタイはやるよ!」
ビゼの足が震えている。
「その行為に何の意味があるんだ!」
「もう!意味なんて無いのさ!」
遠くからは、おおよそ確認し難いが、ビゼの目から涙が流れているのが見えた。
そう、見えただけかもしれない。
「アタイの人生なんて、アンタらには分からない!孤独ってものが!ひとりになるって事が!」
「分かるよ」
分かるさ、お前の人生の事は分からないけど。
ひとりぼっちになるって事が。
俺は踏み出していた。
飛び出していた。
ビゼ、俺もそうだったよ。
でもマタタキやシズカがいて
仲間が出来て、安心した。
お前だってそうだろ。
あの日、たまたま矢が刺さっただけかもしれない。
たった数日の旅だったのかもしれない。
「・・・おい!馬鹿ッ!」隣でツヨシが喋っている。それでも俺は無視をした。
「近づくな!」
ビゼがそのナイフを爆弾に向けている。
その刃を振り下ろせば、爆発するのだろうか?
ま、そんな事はどうでもいい。
俺は確信していた。
ビゼはこの爆弾を爆発させる気はない。




