39話 肩を並べる英雄
「・・・んー?アレ?」
目の前にいる大賢人ヒスショトは、どこからどう見ても、俺の知る限り、その男だった。
ー最強王強史。
この俺の物語の全ての始まりの男。
ヒスショト・・・いや、ツヨシも俺の登場に驚いているようだ。
「・・・あれ、オッさん、どこかで会ってるよな?」
相変わらず、気怠そうに喋るツヨシ。
「覚えていないのか」
「もう何年も生きてるからなぁ」
頭をポリポリと、面倒くさそうに掻いているツヨシ。あの日の姿と変わらない。
何年も生きてる?・・・ん?コイツは50年近く経つのに、あの日の姿のままだぞ???
「ちょ、ちょっとまて、50年近く経つのに、どうしてお前はあの日のままの姿なんだ?」
俺は質問する。
「この世界では、年齢なんて関係ないんだ」
ん?この台詞どこかで・・・そうだ、マタタキとシズカが喧嘩する度、言っていた。
「異世界転生者は歳を取らないという事か?」
「おっさん、察しが良いね」
会話の途中で、ツヨシの目が少し開く。平然を装うこの男だが、少なからず驚いた顔をしている。その表情の変化を俺は見逃さなかった。
「ああ・・・、あの日、俺様がワンパン食らわせた騎士さんね」
ツヨシが俺の事を思い出したようだ。
「そうだ」
「俺様のチートスキル〝全部吹飛〟で飛ばしたおっさんだ」
ゼンブッパ???何それ???
ー【説明しよう!全部吹飛はツヨシの数あるチート能力のうちのひとつだ!対象を物理的に、そして、時空をも吹き飛ばす力である!フレデリックはこの力を喰らい、物理的に、そして50年近くという歳月をも飛ばされたのである!】ー
ちょっと待て!唐突に説明を入れるな!
でも解説助かる!やっぱりそういう事だったのか!
「その通りだ。この城に戻ってきた」
「な!なにぃ!やはり!過去から来たというのは本当だったのか!」
俺たちのやりとりを聞いていた4代目ムジーク国王が驚いている。
「何度も言ってるだろう。俺はこの男に飛ばされて来たんだ!」
それでもどこか疑ったような目をしているムジーク王。
「・・・で、俺様になんか用なの?」
う、うーむ。
俺って、本当はコイツにあって何をするつもりだったんだ?一発殴るって事には変わりないけど、殴ってどうしたいんだ俺は?
最初は、もう一度勝負を挑んで3代目ムジーク王に再雇用してもらう予定だった。
気が付けば50年余りの時が過ぎていて、ムジーク王は4代目になってしまったし、ハーレムだって・・・あの日のオンナ達はババアになっちまったし。
コイツが魔法や蒸気を発明したのであれば、国の発展の為に尽くしていた訳だし・・・
一発殴ろう、そう思っていたはずなのに。
いざ目の前に現れると、何をしていいのか、正直・・・ワカラン。
でも殴らなきゃ気が済まない。
「俺は、お前に会ったら、一発・・・」その時。
部屋に大きな音が鳴る。
「な!何事だ!」
ムジーク王が慌てている。部屋の天井付近の穴から鐘の音が鳴り、人の声が響いている。
ー〝地下結晶室にノイズ派及び同派の巨大兵器と見られるものが侵入!!!衛兵は直ちに地下結晶室へ!!!〟
「地下結晶室?」
「・・・ま、俺様の仕事場っていうか」
ツヨシはヤレヤレという顔をしながら、とぼとぼ歩き出す。
「キ!キミィ!今こそ出番だ!地下結晶室に行きたまえ!」
ムジーク王が俺に指図する。まだ、国に仕えるとは言っていないぞ俺は!
「しょうがない・・・ムジーク王。勘違いするな。俺は国の為にノイズ派を止める。アンタの為じゃない」
「うーわ・・・カッケェなおっさん」
ツヨシが軽く拍手をする。
そして続けて
「俺様が案内してやるよ。一緒に行こうぜ、英雄。守ってくれよ」
と言う。よく分からない展開だ。
こうして何故か俺とツヨシは肩を並べて、城の地下室へ向かう。
物語の幕が閉じようとしていた。
【第四章 おわり】




