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その座を奪われた主人公   作者: 大野春
第四章 頼もしい奴
33/101

33話 懐かしい景色


少しの隙で俺の手から離れたビゼが目の前で立ち膝の姿で何度も咳をしている。


「フレデリックさん?」

俺が教えた方法で、シズカはもう一度弓を引く。

俺に向けて。



「シズカ。説明が難しい」



「次、ビゼに何かしたら、もう一度矢を放つ」

シズカの矢を食らったところでダメージは少ない。


「シズカ。ビゼはノイズ派の人間で・・・」

と説明している瞬間。


シズカの首筋に当てられるビゼのナイフ。

目にも留まらぬ速さでビゼは移動していた。


「ビゼ?」

急に人質に取られるシズカ。

でも、恐れてはいない様子だ。

「シズカ、逃げよう!フレデリックは敵だ!」


「おい!何を言ってるんだ!」

「来ないで!」とシズカ。

おいおい、オンナってのはオンナの味方をするのかよ!


その時、またしても爆発が起きる。

そして爆風が砂埃をあげる。

視界が悪い。

もくもくと茶色い煙が巻き上げて、それが風に流されて消えた時、2人の姿は無かった。


その場で立ち尽くす俺。

少し頭を冷やして、考えてみる。


まぁ、いいか。


ここまで来れたのだから。


俺は瓦礫を踏みながら、地下水道のある備蓄庫へ向かおうと考える・・・しかし。


ビゼが待ち伏せしている可能性がある。

どうしたものか・・・


この混乱に乗じて、正々堂々と城へ入れないだろうか?


10分も歩けば城に到着する。

確認する価値はあるかもしれない。


それにしても・・・

あっという間に景色はめちゃくちゃだ。


遠くで爆発音が聞こえる。

ノイズ派とは縁があるな俺は。


背中の浅い傷が痛む。

趣味は悪いが、俺は死んだ人間の服を奪って着た。




《ムジーク王国ー王都ピアノームジーク城》



《城門前》



懐かしい。懐かしい景色だ。

この城・・・あの日も、俺は馬車でこの城をくぐった。


ついにここまで来た。

時間も場所も吹き飛ばされるのは一瞬で、戻ってくるのには途方となく時間が掛かった気がする。


城の周りは堀で囲われていて、架け橋が無ければ城門を潜ることは出来ない。


緊急事態という事もあり

当たり前なのだが架け橋は降りていない。


・・・それにしても呑気だ。

兵たちの動きがない。

出兵している訳でもなく、籠城しているのだろうか?

明らかに城は蒸気爆弾のダメージを受けているのに、反撃しないのか?


というか、反撃はどこから・・・

この王都に潜んでいたノイズ派が攻撃しているのか?



「貴様!何をしている!退避せよ!」

どこからか、兵士が現れる。

いつのまに現れた?それもひとりか?


「俺は城に用事があるんだ」

「なにっ!?貴様!ノイズ派の人間か!?」

兵士は構えを変えた。

「違う」

俺は念の為、右手の甲を見せた。


「とにかく今は緊急事態だ!早く逃げるといい!」

「待て!お前らこそ、何をやっている!こんな状況で兵士も見当たらない!」


「何も知らないのかお前は!とにかく逃げるといい!」


そう言った後、兵士は姿を消した。

それは文字通り、何処かに隠れるということではない。消えたのだ。

あれはあの日の・・・透明化インビシブルとかいうやつだ。


なるほど、兵士達もピエスパのような魔法を使えるのか・・・


感心している場合ではない。


架け橋が降りていない・・・どうする。

城に行く事も出来ない。

やはり地下水道を通るしかないのか・・・?



その時。



ビリビリ、という聞いた事のないような音が聞こえる。

小さな稲妻のようなものが目の前に現れた。

そして、瞬く間にその稲妻が空間を切り、その割れた部分から3人の人間が飛び出してきた。





「フッさん!」




「ま、マタタキ!?」




久しぶりに見るその顔。

って、ほかの人間は誰だ!?


「すまん。状況が全く分からない」


目の前に現れたのはマタタキ。

そして見慣れぬ男・・・

あともう1人は・・・

どこかで出会ったような・・・


「私がノイズ派のリーダー。ザークだ」


ザーク・・・

ノイズ派のリーダーか。


「俺はさぁ、トキタビって言うんだ」


トキタビ!?こいつは知らん!

けど、どこかで見た事あるような・・・


「フッさん、急ぐ状況なんだ。手短に言うよ」


マタタキは拙い言葉で喋り出した。


別々の方向を歩み始めたあの日。

マタタキとピエスパは国境を越えて

ザークに会いに行った、という事。



そして



ピエスパが死んだという事。




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