29話 確認する意思
槍の刃先を向けたまま動かない敵兵。
どうやら、コイツは大層な防具をお持ちのようだが、戦いには慣れていないようだ。
まったく。この国の兵力も下がったな。
俺がかの、ソーレント戦役で活躍した頃の兵士たちは優秀だった・・・
おっといかん、昔のことを思い出している場合ではない!
二度目の攻撃!俺は同じ様にその脚力で兵士を斬れる間合いに入り込む!そして剣を振る!そして兵士は同じく後退りする!
その瞬間を捉えた。
どうやらコイツの履いてる靴には滑車のようなものが付いており、俺にはよく分からないが蒸気がプシューッと吐き出されて移動しているようだ。
要はコイツの靴が汽車!
分かったところで対策が無い!
「フレデリック!どうすんの!?」
「考え中だ!」
コイツの回避行動は真後のみ!同じ様な槍で突けば攻撃は届くかもしれない。
剣で突くか?剣を投げるか?
・・・いや、鎧をぶった斬る力が届くかも分からない。投げて武器を取られたらオシマイだ。
「シャラ臭いぜフレデリック!アタイがやるよ!」
ビゼが腰に掛けた4本のナイフのうち1本目(殺す用)と2本目(皮を剥ぎ取る用)を両手に持ち、身体を捻りながら兵士の元へ走る。
ひゅん!と空気を切る音。
頼もしい奴だ、ビゼ!
しかし、兵士は素早く交代する。
「一本目ぇっ!」ビゼが逃げる兵士を捕らえるようにナイフを投げる。
カツン、と鎧に簡単に弾かれてしまう。
その怯んだ隙を捉えたビゼが前進し、3本目のナイフ(臓器を抉る用)を取り出しながら2本目のナイフで斬りかかる。
しかし、またしても、逃げられる。
「二本目ぇーっ!」ナイフを投げる。
それも、弾かれた。
そして同じく4本目を手に取り、3本目で斬りかかる。
そしてそれを避ける敵。
・・・コイツ、無計画???
「三本目ぇーっ!」ナイフを投げる。
次の攻撃は1本目のナイフを踏みつけながら、高さをつけての投刀だった。
しかし、ナイフは敵の鎧にすら当たらない。
そして、ビゼは「四本目ぇーっ!」と言いながら、思っ切り4本目(それ以外用)のナイフを投石の要領で投げる。
敵兵の横を抜けたナイフが、あり得ない挙動をする・・・あれは・・・
1本目のナイフが、4本目のナイフと糸で繋がっている。
いつのまにか地面に刺さっている1本目を中心に、敵兵を巻き込むようにナイフと糸がぐるぐると敵兵に絡みつく。
「もう逃げれないぜ!」
ビゼは2本目と3本目を陽動に使い、罠を仕掛けていた。糸によって自由を奪われる兵士。
「フレデリック!アタイにはパワーがないから、よろしく!」
「助かるよ」
俺は身動きの取れない兵士の兜をめがけ、剣を振り下ろす。
兜割だ!真っ二つにしてやるぜ!
ガツーーーン!!!!
あまりの兜の硬さに、俺の剣ではそれを斬る事は出来なかった。
鎖といい、最近の素材は凄いなぁ。
感心する俺。
打撃となった兜への斬撃は兵士の脳を揺らし、脳震盪を起こした兵士はぐったりと、倒れた。
「ビゼ・・・凄い」とシズカ。
「動物を捕まえるほうがよっぽど大変だよ」
ビゼが仕掛けを解いている。
その仕草すら手際が良い。
「とりあえずコイツが気絶している間に・・・」
俺たちは兵士の武器防具を剥ぎ取り、可哀想ではあったがその男を木に括り付けた。
「なぁ、このカギ・・・」
ビゼが兵士の鎧からカギを見つけた。
ーーーーー
ガチ!っと開錠。
「こんな、ご都合主義的な事あっていいのか?」
兵士が持っていたのは、備蓄庫の鍵そのものだった。
「いいんじゃない?元々壊すつもりだったんでしょ?」とシズカ。
「ま、まぁな!」
結果良ければ!ってヤツだな。
カビ臭い備蓄庫の箱や麻袋を動かし、床にある大きな扉を開く。
その先は階段になっていた。
「へぇー。マジであるんだ」驚くビゼ。
「ちょっと怖い」とシズカ。
ああ、言っておかなくちゃ。
確認しておかなきゃ、俺。
「お前ら。この先は、どうなるかも分からない。命の保証も無い。どうする?」
そうだ、俺の目的のためについてきている彼女たちに確認をしてみる。
「私は、ついてくよ」とシズカ。
「アタイも」とビゼ。
「危険が迫るかもしれない。今みたいな追っ手が来るかもしれないんだぞ?」
「フレデリックさぁ、何言ってんのよ」とビゼ。
「守ってよね。英雄なんでしょ?」とシズカ。
ああ、そうだった。
俺は英雄フレデリック。
ただ今、約50年ぶりに、王都に帰還する!
【第三章 おわり】




