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その座を奪われた主人公   作者: 大野春
第三章 認めてしまった少年
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28話 無視をする英雄


《ムジーク王国ールシンバ》



「ここでお別れだ。マーヤ」



俺はマーヤに別れを告げる。

ルシンバの駅のホーム。

マーヤもここで降りる。


「フレデリック様・・・まさか王都へ向かわれるのですか?」

「そうだ。あの男に一発お見舞いしないとならない」


俺は心底怒っていた。

自分の弱さに。

変わってしまった人や、それの被害を受けてしまった人がいる事に。


「・・・アタイはもうアンタに用はない。まぁ、強いて言うなら、育てて貰った恩は一応、忘れない」


目の前のビゼがどんなに辛い思いを堪えているのか、俺には分からない。

ただ、コイツは強い。俺はこの女の芯の強さを感じた。

売られる寸前だったのか。通りで野グソをして、下半身を晒しても恥ずかしがらないわけだ。


「どうか、ご無事で・・・」


「マーヤ。この国があるべき姿を取り戻したら、足を洗え」


そう言って、俺たち3人はマーヤを置いて歩き出した。



「フレデリックさん、良かったの?」

面倒な質問をするシズカ。

それを無視する。



ーーーーー



このルシンバは王都から連なる街で、区画で別れているだけ、もはや王都と言っても過言ではない。駅から東へ30分も歩けば王都ピアノの西地区に到達する。


事前の情報が間違いない事を確かめる為、まずはその区画の境まで歩く。


【ノイズ派活動激化により、王都への往来を禁止する】と沢山の貼り紙がある。


兵士が道という道を塞いでいた。


ピエスパ曰く、結界が張ってあるとの事だが、その壁のようなものは確認出来ない。

透明だと言っていた事を思い出すが、それを確認する術は無かった。


とにかく、結界がどうであれ、兵士がいる以上王都への侵入は難しい。


「計画通り、地下水道を通るぞ」

シズカとビゼに伝える。


俺たちは来た道を戻りながら、街中の曲がりくねった道を進んでいく。


建物が新しく、見たことのない景色ばかりだが、道は変わっていなかった。

これは幸いだ。



「不自然なくらい、変わりのない景色だ」



たどり着いたそこはあまり目にも止められないような広場で、その片隅に無人の〝国営備蓄庫〟がある。

備蓄庫はこの王都内外に複数あり、全てが地下水道へ繋がっている。

これは俺の時代では当たり前なのだが、ピエスパ曰く秘匿事項だと言う。



「ここから入れるの?」とシズカ。

「ああ」



引戸の備蓄庫には鍵がかかっている。

鎖で繋がれている。



「フレデリックさぁ、カギ持ってんの?」



「そんなものは必要ない」



俺は剣を抜く。

鎖に剣の先を差し込み、力を込めて引き抜いた。



こんな劣化した鎖、斬る事は容易い・・・ということもなかった。


「あれ?」


俺は格好をつけて、剣で鎖を切るつもりだった。

しかし、思った以上に硬い。

俺が現役の頃は、敵の鎧ごとぶっちぎってたんだぞ!


「え、ダサ」とシズカ。

「何やってんのよ」とビゼ。


とてつもなく、恥ずかしい。


「まぁ待て。もう一回・・・」


引き抜く力では不安な俺は、鎖に向かって思いっきり斬りかかる。同じミスは出来ない!英雄だぞ!俺は!


ガチン!


「あ、あれれ・・・」


「ちょっと幸先悪くない?」

「元英雄なんだよね?」

「他の方法試さない?」


「いや、斬る!」


ーと、俺がもう一度剣を振り上げた時。


「貴様ら!何をしている!!!!」

王都の兵士が現れる。

やべえ!見つかった!



おそらくこの兵士は地下水道の事は知らないはずだ。

しかし、見つかった以上、やる・・・殺るしかない。



「貴様ら!ノイズ派か!?」

兵士が槍を俺たちに向けている。

1対3だ。有利な戦いになるはずだ。



「ノイズ派ではない!」

「ここで何をしている!?」

「備蓄庫の食糧が欲しかっただけだ!」


「貴様!なぜ備蓄庫に食糧がある事を知っている!?」


「なぁっ!やっちまった!」


ぐっ、と足に力を込める。先手必勝だ。

俺は兵士を斬りかかる間合いに入る。

勢いをつけ、剣を振る!


決まった・・・!

と思ったら、俺の理解を超える動きで、一歩後退りをする。

こいつ、足も動かさずに・・・どうやって!?


蒸気カラクリの靴を履いてるぜコイツ!」

ビゼが兵士の足元を指差す。


そうか、50年も経てば防具も進化しているのか。



感心してしまう俺。

しかし、ここで負ける訳にはいかない。



恥ずかしいところを女に見られている。



ここで名誉挽回だ!





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