27話 帝国の役人
「俺が王都から逃げた際に利用した地下水道を通り、3人の精鋭が王都内に侵入している」
正気になったザークは、ピエスパさんの瞼を閉じ、毛布をかけて眠らせた。
僕は、僕の事をザークに伝えた。
正直、この目の前の人は悪人に変わりない。
けど、ピエスパさんが命を懸けてこの男の誤ちを正した。
言うなれば、ザークは元悪人。
そして僕は死んだピエスパさんから、この元悪人の事を頼むと、託された。
僕は胃がずっとキリキリするけど、それでも今やる事は分かっていた。
ザークの言う通り、王都への攻撃が始まるなら尚更だ。
止めなくちゃならない。
「封鎖されている王都へ侵入し、爆弾も用意している。手薄な状態を逆手にとって、一斉攻撃を仕掛ける予定だ。最悪なのは城を飛ばす最終兵器ムオンを使う事もあり得るという事」
とにかく、止めなければならないのだ。
「はやく!止めないと!」
「作戦の決行日は明日。とにかく急ぐ。俺も王都へ向かい、彼らに説き伏せる。まずは一度作戦は中止であると」
「ザーク、僕にはこの世界の距離感が分からない。けど、ここに来るまでも数日かかったのに、明日王都につくなんて考えられないよ」
とても現実的な距離の問題を考える。
僕は今、国境を越えた違う国にいる。
それに、国境を超えてもそこから王都へ行くなんて、とても遠いはずだ。
「優秀な部下がいる。まずはそいつを見つける」
「優秀な部下?」
「説明する、時間がない。君はどうする?」
「行くよ。当たり前だろ」
胃が痛いし、足も震えている。
それでも数日しか時を共にしていなかった、今は亡き人の為に、僕は勇気を振り絞る。
「すまない。苦労ばかりかける」
《グラフィカ帝国ー国境付近ー第七関門》
基地を出る。まだ明るい。
いつのまにか用意されていた馬車で
僕とザークはすぐに国境の関門に着く。
「急ぎの用事だ」
それだけ伝えると、兵士はいとも容易く僕らを歓迎した。
「お通り下さい」
「ザーク。どうして簡単に国境を越えられるの?」
「俺はグラフィカ帝国と手を組んでいる。いや、手を組んでいた。・・・いや、手を組まされていた、と言った方が正しい」
ザークが淡々と説明する。
彼がこのノイズ派を立ち上げる為に必要なこと、それは支援。物的、金的、人的、技術的。
ザークはムジーク王国での研究成果をグラフィカ帝国に売り、そしてムジーク王国弱体化といつ名目で帝国からの支援を得る事が出来たのだと言う。
先程まで僕たちがいたノイズ派のアジト、蟻穴もそうだ。
帝国が昔使用していた場所を利用しているらしい。
ピエスパさんの予想通りだった。
「俺は帝国の役人だ。そしてこのムジーク王国の裏切り者・・・」
罪を懺悔するように喋るザーク。
僕は許せなかった。
何人も人が死んでいる。
《ムジーク王国ー南西部ーハモニク村》
僕は久しぶりにその村へたどり着いた。
「トキタビと言う男を探している」
馬車をとめ、降りてすぐ、ジークはそう言った。
どうやらトキタビという部下を探しているらしい。
それが有能な部下だと言う。
「そんな男はいないな・・・英雄と名乗る男が少し前に〝飛んで〟来たが・・・」
フッさんの事だ!でも、今はその話じゃない。
有力な手がかりはないのですぐに次へ向かう。
「ねぇ、そのトキタビって人はどんな人なの?」
「とても賢い男だ」
「えっ?」
「研究熱心で、すこしヘンな男ではある」
「はぁ・・・」
「奴は魔法という仕組みでさえ、たまたま手に入れた結晶から読み解いた。そして、空間を転移する、高度な魔法を使うことの出来る男だ」
「そうなの!?」
空間転移!?それって、瞬間移動できるような力!?
「トキタビは我々に力を貸してくれたが、彼自身、悠々自適な生活を送りたいとの事で、戦いには積極的ではない」
「そうなんだ・・・」
全く掴めない、その男の姿。
「そして、おそらく、君と同じ」
ーイセカイから来た男だ。
確かに、ザークはそう言った。




