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その座を奪われた主人公   作者: 大野春
第三章 認めてしまった少年
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22話 緊張する少年


 今、僕はとてつもなく緊張している。


 ここは国境付近。

 ムジーク王国とグラフィカ帝国の境目だ。


《ムジーク王国ー国境付近ー第七関門》


 どうして緊張しているかと言うと、僕とピエスパさんは無断でこの関門を突破して、グラフィカ帝国へ行こうとしているからだ。


 方法は至って単純。

 ピエスパさんの魔法で透明化して、そのまま姿を見せずに進んでいく。

 こうして門を抜ける計画だ。


 僕がピエスパさんについていった理由・・・

 フッさんにも話をした通り、進むべき未来が視えたからだ。

 そして、僕は理由を探していたのかもしれない。

 図書館の爆破に巻き込まれたあの日。


 フッさんが躊躇もなく、人を殺した・・・

 僕にはグロ耐性が無い。

 フッさんの事は好きだけど、僕は少しあの人が怖くなっていた。

 それに、あんな悲惨なテロ行為が繰り返されている。

 ノイズ派を止めなくちゃならない。

 そんな使命感が僕には芽生えていた。

 そしてその大きな鍵となるピエスパさんがいる。

 この人は結構な年齢だから、付き添いが必要な筈だ。


 そんな、色んなことを考えながら、未来が視えた。この力も僕を後押ししたんだ。


 ピエスパさんは、ノイズ派のリーダー〝ザーク〟を探している。

 情報によるとこの国の手が届かない、隣の国に潜伏し、指示を出しているのだという。


 透明化した僕たちは音を立てないように関門を通過した。門は無防備に開いていて、兵士がたくさんいたんだけれど、僕たちはなんなくそこをすり抜ける事が出来た。


しばらく歩き、門が見えなくなった頃、ピエスパさんが魔法を解除した。




《グラフィカ帝国ー国境付近ーブラエア平原》




「き、緊張したぁ〜」

僕がポツリと漏らすと、ピエスパさんは少し笑った。

「私も残り少ない寿命が縮まった」

寿命が少ないだなんて、死亡フラグみたいな事を言うなぁ、なんて思う僕。


「それにしても、凄いなぁ、魔法って」

僕は嬉しい。

魔法が存在するという事。

「何度も言うが、これはあくまで力を代理で行使しているに過ぎない。便宜上、魔法と呼んでいるだけだ」


「それでも凄いよ」


「発明というのは、人を幸にも不幸にもするんだ。この力も、元々は戦争の為に開発されたものだ」


「えっ・・・」


「見せよう。力の代理行使は、結晶への問いかけで様々な扱いが可能だ」


そう言ってピエスパさんは腰の巾着から力の結晶を取り出し、念じた。

 あの日、回復魔法を使った時とは異なる、威圧的な唱え方で結晶に語りかける。


ぼっ!


「熱いっ!」


 目の前に火の玉が浮いている。

 それを遠くへ飛ばした。RPGでよく見るやつだ!

 飛んだ先の火球は平原の岩にぶつかり、ぶわっ、と広がってすぐに消える。草花が焦げて黒くなった。


「この力は、最も容易く自然、人を傷つける事が出来る」

「うん」


僕は足りない例えてみた。

僕を轢き殺した車だって、殺しの道具じゃない。

でも、殺せる。

使い方による、そういう事だと思った。


「さて、この先・・・もうすぐ先にザークが潜伏してるという基地がある」


僕たちは再び歩き出す。


「ピエスパさん、基地にはどうやって?」

「私の名前を出せば簡単に入れてもらえるだろう」

「そうなんだ」


「まず、必要なのは対話だ」


ピエスパさんは訴える。

回復魔法でザークの思考を正すのは最終手段で、まずは話をするんだ、と。


平原を抜け、丘の上にぽつりと人が立っているのを確認する。


「あれはノイズ派の見張りだ」


ピエスパさんは堂々と、見張りに話しかけた。

「私の名前はバッハ・ピエスパだ。この名前だけ伝えてくれれば構わない。ザーク・ド・ルヴに会わせて頂きたい」

「何者だ」

「伝えた通りだ。話せばわかる」


「分かった。但し、ザーク様の判断によってはお前たちの命はない」


見張り役が草の茂みに隠れていた木製の扉を開け、中へ入っていった。


「どうやらこの丘全体がザークの基地になっているようだな」

「凄いね・・・」

「その昔の戦争で作られたものなのだろう。しかし、それを簡単に利用できるということは・・・おそらくザークはグラフィカ帝国と繋がっている」


僕にはよくわからない。


「ザーク自身の、国を救いたいという思いが・・・いつの間にかこの帝国に利用されているのかもしれない」


ピエスパさんとザークの深い関係は僕には分からないけど、僕にはピエスパさんがザークを悪者扱いしたくないんだと、そういう風に思った。

でも、あんなテロを起こす団体のリーダーなんだよね・・・



「お入りください」




先ほどまでの態度と打って変わり、見張り役は僕たちを歓迎した。


その隠しの扉から

薄暗い基地の中へ入って行く。



とってもドキドキする。



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