22話 緊張する少年
今、僕はとてつもなく緊張している。
ここは国境付近。
ムジーク王国とグラフィカ帝国の境目だ。
《ムジーク王国ー国境付近ー第七関門》
どうして緊張しているかと言うと、僕とピエスパさんは無断でこの関門を突破して、グラフィカ帝国へ行こうとしているからだ。
方法は至って単純。
ピエスパさんの魔法で透明化して、そのまま姿を見せずに進んでいく。
こうして門を抜ける計画だ。
僕がピエスパさんについていった理由・・・
フッさんにも話をした通り、進むべき未来が視えたからだ。
そして、僕は理由を探していたのかもしれない。
図書館の爆破に巻き込まれたあの日。
フッさんが躊躇もなく、人を殺した・・・
僕にはグロ耐性が無い。
フッさんの事は好きだけど、僕は少しあの人が怖くなっていた。
それに、あんな悲惨なテロ行為が繰り返されている。
ノイズ派を止めなくちゃならない。
そんな使命感が僕には芽生えていた。
そしてその大きな鍵となるピエスパさんがいる。
この人は結構な年齢だから、付き添いが必要な筈だ。
そんな、色んなことを考えながら、未来が視えた。この力も僕を後押ししたんだ。
ピエスパさんは、ノイズ派のリーダー〝ザーク〟を探している。
情報によるとこの国の手が届かない、隣の国に潜伏し、指示を出しているのだという。
透明化した僕たちは音を立てないように関門を通過した。門は無防備に開いていて、兵士がたくさんいたんだけれど、僕たちはなんなくそこをすり抜ける事が出来た。
しばらく歩き、門が見えなくなった頃、ピエスパさんが魔法を解除した。
《グラフィカ帝国ー国境付近ーブラエア平原》
「き、緊張したぁ〜」
僕がポツリと漏らすと、ピエスパさんは少し笑った。
「私も残り少ない寿命が縮まった」
寿命が少ないだなんて、死亡フラグみたいな事を言うなぁ、なんて思う僕。
「それにしても、凄いなぁ、魔法って」
僕は嬉しい。
魔法が存在するという事。
「何度も言うが、これはあくまで力を代理で行使しているに過ぎない。便宜上、魔法と呼んでいるだけだ」
「それでも凄いよ」
「発明というのは、人を幸にも不幸にもするんだ。この力も、元々は戦争の為に開発されたものだ」
「えっ・・・」
「見せよう。力の代理行使は、結晶への問いかけで様々な扱いが可能だ」
そう言ってピエスパさんは腰の巾着から力の結晶を取り出し、念じた。
あの日、回復魔法を使った時とは異なる、威圧的な唱え方で結晶に語りかける。
ぼっ!
「熱いっ!」
目の前に火の玉が浮いている。
それを遠くへ飛ばした。RPGでよく見るやつだ!
飛んだ先の火球は平原の岩にぶつかり、ぶわっ、と広がってすぐに消える。草花が焦げて黒くなった。
「この力は、最も容易く自然、人を傷つける事が出来る」
「うん」
僕は足りない例えてみた。
僕を轢き殺した車だって、殺しの道具じゃない。
でも、殺せる。
使い方による、そういう事だと思った。
「さて、この先・・・もうすぐ先にザークが潜伏してるという基地がある」
僕たちは再び歩き出す。
「ピエスパさん、基地にはどうやって?」
「私の名前を出せば簡単に入れてもらえるだろう」
「そうなんだ」
「まず、必要なのは対話だ」
ピエスパさんは訴える。
回復魔法でザークの思考を正すのは最終手段で、まずは話をするんだ、と。
平原を抜け、丘の上にぽつりと人が立っているのを確認する。
「あれはノイズ派の見張りだ」
ピエスパさんは堂々と、見張りに話しかけた。
「私の名前はバッハ・ピエスパだ。この名前だけ伝えてくれれば構わない。ザーク・ド・ルヴに会わせて頂きたい」
「何者だ」
「伝えた通りだ。話せばわかる」
「分かった。但し、ザーク様の判断によってはお前たちの命はない」
見張り役が草の茂みに隠れていた木製の扉を開け、中へ入っていった。
「どうやらこの丘全体がザークの基地になっているようだな」
「凄いね・・・」
「その昔の戦争で作られたものなのだろう。しかし、それを簡単に利用できるということは・・・おそらくザークはグラフィカ帝国と繋がっている」
僕にはよくわからない。
「ザーク自身の、国を救いたいという思いが・・・いつの間にかこの帝国に利用されているのかもしれない」
ピエスパさんとザークの深い関係は僕には分からないけど、僕にはピエスパさんがザークを悪者扱いしたくないんだと、そういう風に思った。
でも、あんなテロを起こす団体のリーダーなんだよね・・・
「お入りください」
先ほどまでの態度と打って変わり、見張り役は僕たちを歓迎した。
その隠しの扉から
薄暗い基地の中へ入って行く。
とってもドキドキする。




