21話 野生的な女
「オイ!アンタら!どうしてくれんのよ!私のプリティな肩!」
女は腰に4本のナイフを携帯し、革の手袋を両手にはめ、身軽な服装をしている。山で狩りを行うような、そんなイメージを持った。
何よりこの女・・・肩に矢が刺さっているし・・・
「す、すまない、それよりも・・・その・・・」
下半身が無防備・・・半裸である。
「ぬあっ!!!野グソしてた所だったんだよ!!!」
どうやらこの女の脳内に、恥じらい、という言葉はないようだ。
慌てて下の服を着る。
「ごごご、ごめんなさい!私の矢が!!!」
シズカが慌てふためいている。
練習の為に放った矢が、まさかの人間に直撃。
「そんなに深くねーから平気よヘーキ!」
そう言って女は草むらから適当な雑草をちぎって、手際よくすり潰し、刺さった矢を抜いてはその傷口に塗り込んだ。
「なんて野生的な女なんだ・・・」
思わず口に出てしまう俺。
遠くから近付いて来る女の肌は浅黒く、日焼けをしている。
「矢を放ったのはテメーか?」
シズカを指差すワイルド女。
「ご、ごめんなさい・・・」
「旅の連中か?弟子にしてくれぇ!」
え?弟子????
「えええっ!?」
驚くシズカ。
「アタシはさ、狩をして暮らしているんだけど、アンタ、矢を放って私を射抜くだなんて・・・只者じゃないだろ?」
「いや、あれはまぐれで・・・」
天文学的な確率だ・・・
初めて矢を放ち、木を目指して打ったはずが・・・
野グソをしていた女の肩に刺さるという事・・・
シズカの引きの強さは、確かに只者ではない。
しかし俺たちには旅がある。
「矢を間違ってしまっただけだ。それは申し訳ない。俺の指導不足なんだ。ただ、俺たちは目的がある。すまないな・・・」
と俺が説明をするが・・・
「フレデリックさん!この人面白そうだし、どう?」と何故か乗り気のシズカ。
「なにっ!?」
「女ひとりって寂しかったの!」
シズカの思惑はこれか。
「いやでも、お前のその矢はまぐれだろう。そこの女はお前の矢に惚れて・・・」
「細かい事はいいじゃねーかっ!」
ワイルド女がニタニタ笑う。
「俺たちは王都へ向かうんだ。それでもついて行くというのか?」
「へぇ、王都ねぇ。別に良いけど?」
「決まりだね」
要らぬタイミングで要らぬ荷物が増えたような・・・女は旅のお荷物だ。
「まぁ、いい」
平気で下半身を見せてくるような女だ。
多少の肝は据わっているかもしれないな。
「アタイは、ビゼ」
それがビゼとの出会いだった。
《キッテン山ー7合目(山頂付近)》
この山の折り返し地点、7合目山頂に着く頃には、この女がダラダラと喋る話を聞いていて、正反対に思えるようなシズカと意気投合していた。
「いやしっかしまぁ!スゲーなオイ!シズカぁっ!」
ビゼは弟子入りしたはずなのに師匠のシズカを呼び捨てしている。
シズカの力にビゼは驚いていた。
この旅で出会う人間は何かしらあるので、この女がイセカイから来た者だと期待していたのだが。
シズカの力が働くという事はビゼはイセカイから来た者ではなく、俺と同じ種類の人間だ。
親のいないビゼは子どもの頃、逃げる様にこの山に来て、5合目集落で暮らしていたのだという。
身寄りもなく、誰かが親になってくれることは無かったらしいのだが、集落の人たちが皆で世話をしてきたらしい。
ビゼ自身も、生きていくために狩りを覚えたそうだ。話を聞けば聞くほど、この女はワイルドで肝が据わっている。
「ビゼ。君はナイフを4つも持っているようだが・・・」
「ん?コレ?1本目が、殺し用。2本目が、皮を剥ぐ用。3本目が内臓取る用。4本目はそれ以外用」
整理されているのかよく分からない分け方だな。
しかし、この女、考え様によっちゃあ、戦力にはなるかもしれない。
イセカイから来た者じゃないけど・・・
「意外としっかりしてるんだな、お前」
「まぁな、狩っていかなきゃ、生きていけねぇし」
「たくましいなお前は」
よく見るとコイツのつけている皮の手袋は幾多の命を奪ったであろう、獣の血が染み付いている。
時が時なら、コイツを傭兵として雇っていただろうな。
「オジさん、ところでこの山を降りたらどーすんの?」
「話を聞いていなかったのか?キーレギエタの街に行き、汽車で王都を目指す」
「へぇ・・・王都ね」
「どうした?」
「まぁ、曰く付きってところ。別に構わないけど」
「そうか。これは俺の目的の為の旅だ。身の危険を感じたら離れても構わない」
「あっそー」
登りよりも早く、
俺たちは2人から3人になり
下山を続ける。




