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その座を奪われた主人公   作者: 大野春
第三章 認めてしまった少年
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20話 弓矢と女



「シズカ。良かったのか?」

空を目指すような方向に歩いていく俺。



《ムジーク王国ーアンダンテ地区ーキッテン山ー3合目》


「それ、何回聞くのよ。その質問、今後禁止かも」

シズカの声は苦しそうだ。



「分かった」



マタタキと別れてから、既に5日は経っただろうか。俺たちは山を越える途中であった。

シズカは俺についてきた。特に理由を語らなかった。


この山を越えると、アンダンテ地区・・・王都の属する地域に入る。

とはいえ広大な土地なので山を越えたからと言ってすぐに王都に到達する訳ではない。


しかし、山を降りればキーレギエタの街に着く。この街は蒸気で走る〝汽車〟の途中駅であり、そこから汽車に乗れば王都の近くまで行けると言うのだ。



キッテン山はその険しい高さをなだらかにするため、緩やかな傾斜の道が長々と続いている。

山はシズカの世界で言う所の7合目まで、7区分に分かれていて、7合目が山頂。

俺たちは今3合目にいて、5合目が集落となっているので、そこを目指している。



「はぁ〜、クソしんどいかも」

シズカの息が荒い。

「緩やかとはいえ・・・傾斜のある道を永遠と歩くのは大変だな」

「フレデリックさんは、余裕なの?」

「俺は鍛えてきたからな」


フン!という自慢げな顔をするが、シズカはただ果てしなく続く道を見ていた。



「フレデリックさんってさぁ、恋人とかいたの?」

息を切らせながらシズカが質問してくる。

何故このタイミングでその話なのか。


「俺は恋人は持たない主義だ」

「主義?」

「恋人がいると弱くなるからな」

「へぇ〜、さすが英雄さんだね」


ま、俺にはハーレムがある(いや、あった)ので、そこら辺は恋人がいなくても問題ない。


・・・って、もしかしてシズカ、こんな質問をするなんて・・・


「まさか、私と恋仲になりたいのか?」

「タイプじゃないかも」


ふっ。こっちから願い下げだ。

ただなんとなく悔しい。


「あのさ、私も、武器を持っておきたくて」


シズカがそんな事を言い出した。


「戦うのか?」

「う〜ん、護身用だけど。有用性のある奴が良いかも」

そうか。数日前の爆破事件を含め、彼女自身が自分で自分を守りたい、そういう気持ちが芽生えているのかもしれない。


「この先の街に武器屋があるかもしれない。寄って行こう」


シズカの様な女性でも扱える武器か・・・

限られてくるが・・・



《キッテン山ー5合目ー宿場町》

 


「うん、多少小型ではあるが、この弓矢が良いと思うぞ」


空気の薄い山の5合目の集落に到着した俺とシズカは、まず武器屋に立ち寄った。


「へぇ、弓矢かぁ〜弓道はやった事ないなぁ」

シズカがまじまじと弓矢を見ている。

キュウドウ?何だそれは。


俺がシズカの武器として弓矢を選んだ理由・・・

女性でも扱いやすいという点。

そして、この弓矢というシステムの欠点を彼女が

補える点にある。


「矢を引く力が必要になるが、その反動を利用できる。シズカでも扱いやすい。しかし、そのツルがしなる大きな音が弓矢の弱点。びゅん、と音が聞こえればすぐに回避行動が取れてしまう。そこで、シズカ。君の力だ」


そう。

矢を放った時、弦が振動したり、矢が空を切る音をシズカは消す事が出来る。


「叫びながら撃てば良いってことかな?・・・私に扱えるからなぁ」


そんな事を言いながら、弓矢を購入するシズカ。


「今日はここで休もう」

武器屋の隣の宿場で一晩を過ごす。

そして翌日。

朝早くから、俺たちはまた歩き出した。


「あの鳴いている鳥を狙ってみろ」

俺はシズカに提案する。

少し離れた場所で朝を知らせるために鳥が鳴いていた。呑気な動物だ。木の上で鳴いている。


「無理。可哀想だし」

「そんなんで人を撃てるのか?」

「護身用だもん」

「なら尚更、練習は必要ではないか」

「う〜ん。動物じゃないのならやれるけど」


「よし、それなら、あの木に向かって矢を放ってみろ」


俺はシズカに寄り添って、弓矢の引き方を教える。

先ずは天を射るように空へ向け、矢を引き、引いたその手を中心に弓と矢の先を動かしていく・・・

少し密着して教える俺。

決して意識などしていないぞ!

これは昔もやっていた、指導というやつだ!


「よし、やってみろ」

「行けるかなぁ?」


手を離し、矢を放つシズカ。

しかし、弦の強さにその正確な軌道を描くことが出来ず、矢は思った以上の角度をつけて飛んでいった。


こりゃ、ほぼ真上だな。

そんな空に飛んだ矢が地面に落ちた時。




「い!!!!痛ぇええええ!!!!」




草の茂みから、女が飛び出してきた。

肩に矢が刺さっている。




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