15話 助けを乞う少年
お!落ち着け!僕!
こういう時は自分を思い出すんだ!
僕の名前は、又滝瞬。
エロDVDを拾おうとした所、車に轢かれて死んだ。車にぶつかっても死なない自信があったのに、呆気なく、その衝撃は僕の身をボロボロしてしまった。
恥ずかしい死に方をしたんだ。
そうして気が付けば、この世界にいたんだ。
僕は意味もなく、剣を持って過ごしていた。せっかくこんな感じの世界にいるんだから、剣を持つべきだ!そんな気がしたんだ。
そしてある日、自分は力を持っていることに気がついた。
進むべき未来を視る事の出来る力。
なんとなく、その未来に従ってずっと緩やかに生きていた。気分を変えて、住む場所を転々とした。
そして、あの日も・・・サクスの街で領主のソナタに悪口を言ったのも、あれは進むべき未来が見せたもの、それに従ったんだ。
そうしたら、フッさんに出会ったんだ。
きっと僕の進むべき未来にはフッさんがいた。
そしたら、シズカにも出会った。
アイツも僕と同じ世界から来た人間だった。
ーーーーー
その、2人が、今、僕の視界の中に収まり、倒れている。
シズカはフッさんに助けられてから、全く動いていない。眠るように倒れている。
そして、フッさんも倒れたまま動かない。その周りに血溜まりが出来ている。
ー助けなくちゃ。助けなくちゃならないのに、足が動かない・・・震えている。震えているんだ、足が。
頭が混乱している。吐きそうだ。色んな気持ちが絡み合っている。
最も容易く人を殺すフッさん・・・僕はグロ耐性が無いのに・・・目の前で、人が死んだ。怖い、怖いよ。フッさん・・・
それでも助けなくちゃ。フッさんを。シズカを。
どうしたらいいんだ僕は・・・
「・・・だ、だれか、たすけてよ」
声が小さい!いや、僕なりに振り絞ったのがこの声だ、限界だよ・・・
それに、おかしいよ・・・こんな爆発があるのに全然人がいない。
ふと、僕は空を見上げる。
都市から煙が複数上がっている。
この時、僕は知らなかったのだけれど、大体の時を同じくして、この都市リバンタンはノイズ派のテロ攻撃を受けていた。
その時。
僕には〝進むべき未来〟が見えた。
僕は、2人とは逆の方向へ歩いて行く。
何故?2人を置いて行くのか?
いや、そんなはずは無い・・・
僕は状況が好転する事を信じて、進むべき未来が示す先へ進んだ。
人だ!人がいる!
僕はもう一度未来を見る!
その人に何かを訴えている僕がいた。
あの人に助けを乞う必要があるんだ!
「す、すみません!な、仲間が!倒れているんです!」
僕が話しかけたその人は、オレンジ色のフードを被った老人だった。
「・・・神の思し召しか・・・」
老人は深く頷く。
僕は老人をフッさんとシズカの元へ連れて行く。
まずは血塗れのフッさんの元へ行く老人。
「おお・・・なんという事だ・・・少年よ。彼を運ぶのを手伝ってください」
僕と老人でフッさんを運び出す。
実際に触ると、筋肉質なその身体に、僕との大きな差を感じる。
「何処へ?」
「日陰で構いません・・・とにかく太陽の当たらない場所へ・・・もう一人の女性も運びましょう」
建物の影にフッさんを置き、次はシズカを運ぶ。フッさんを運んだ後である事、出るとこ出てない女性の身体を運ぶのは容易かった。
「お、おじさん、どうするんですか?」
「少年よ・・・私は神の啓示を受けたのかもしれない」
おじさんが神を語り出した。
「神の啓示?」
「そうだ。今日、私は応用技術である〝回復魔法〟を完成させたのだ」
「カイフク・・・マホウ?」
ゲームで見たやつだ!
「この2人を治療出来るかもしれない」
「た!頼むよ!おじさん!」
老人は腰につけた巾着から、ビー玉のようなものを取り出した。
「おじさん、これは?」
「力の結晶、だよ」
「力の結晶?」
「魔法の力を閉じ込めた結晶だよ。これは〝比較的溶けにくい氷〟で閉じ込めている」
「よく分からないよ」
「分からなくて良い。これからこの結晶に問いかける。力を出してくれ、こういう方法で力を放出してくれ・・・と」
おじさんはそう言いながら、そのビー玉を持ち、何かを念じ始めた。
それは、僕がこの世界に転生されて夢見ていた景色だった。間違いない。魔法だ。
そう、それしか、説明できない。
そのビー玉から不思議な光が放たれたんだ。
光は細かい粒子になり、2人の身体へ入り込んでいく。シズカの鼻の中へ。フッさんの全ての傷口へ・・・
光がきらきらと、きらめきを放って飛んでいく。
「私の研究に間違いが無ければ、2人は助かるだろう。ダメならダメだ。もう助ける方法はない」
僕とおじさんは、胸を高鳴らせながら、2人の回復を待った。
その間も、街は爆発音に包まれていた。
都市の状況なんて、どうでも良かった。
とにかく、治って欲しい。
僕は祈るしかなかった。




