14話 襲いかかる凹凸
充満した煙が視界を奪う。
シズカを探すのに難を要する。
視界が灰色で、手と足の感覚だけが頼りだ。
聴覚は木の燃える音に奪われている。
「シズカ!!!」
その時、何かを蹴る感覚。
シズカが倒れている。
すぐに持ち上げ・・・
コイツ貧乳の癖に少し重いな・・・
煙を吸って、倒れたのか!?
煙というものは吸うと死に至る病へと発展する。
これは常識だ。しかしシズカはそれも分からずパニックに陥ったのだろうか?
とにかく運び出した安全な場所へ・・・手当てをしなければならない・・・
煙を吸えば死に至る確率は高い・・・
そんな事を思いながら図書館の外へ運び出すと・・・
「フッさん!助けて!」
マタタキが男2人と対峙している。
「マタタキ!?どういう状況だ!?」
俺はシズカを優しく降ろし、剣を抜く。
これは先日新調したものだ。
中級のモノである。
「コイツら!図書館を爆破させた・・・!ノイズ派の奴らだよ!」
男2人は凹凸コンビと言うべきか、筋肉質の大男と、小柄で痩せ型の男のコンビだった。
痩せ型の凹の方が、甲高い声で語る。
「キヒヒ!お前ら!俺たちを見つけちまったなら残念だが殺すぜ!」
「どういう事だ!」
「俺たちはノイズ派だ!俺たちに権利を与えないこの悪しき施設を破壊した!そしてお前達はその場所に居合わせた!」と凸の大男。よく喋る。
「お前ら、それだけの目的の為に破壊行為をしたのか!?」
「そうだ!悪いか!」
大男は大きな斧。小柄の方は右手に短剣、左手によく分からない小さな玉の様なものを持っている。
「よくも俺の読書時間を奪ってくれたな!」
「キヒヒ!真面目な奴め!勉強家もろとも全員死ねば良いのだ!」
俺は・・・
俺は怒っていた。せっかくこの国の歴史を読み解けるチャンスを手に入れたというのに。
それを邪魔された事・・・
そして何より・・・
「仲間を傷つけた事、許さないからな・・・」
俺は剣を構えた。
いつもなら間合いに入るまで粘るが、自ら仕掛けに行く。足を動かす。
マタタキは未来を視れるが、戦いには積極的ではない。殺しを知らない。2対1だ。まずは強そうな大男から・・・
ぐっ、と大地を蹴る。大男が近づく俺の存在を認知し、両手を振り上げ、斧を振り下ろそうとした時、それは既に遅かった。
久しぶりだ。
布を、皮膚を、筋肉を、血管を・・・そして骨にぶつかる。
斬る、という感覚。
分厚いその男のせめてもの細い部分、それを目掛けて、剣を振っていた。
首。
瞬間に、多量の血を吹き出し、倒れる大男。
「ヤ、ヤベェー!!!!」
小柄の男は逃走を図ろうとする。
逃すものか!背を見せて、隙だらけの奴め!
大男の首の骨まで差し込まれた剣を抜く。
ぐっ、と大地を蹴り、小柄の男の所まで3歩で辿り着く。
「キヒヒヒッ!!!」
振り向いた小柄の男は不適な笑みを浮かべ、左手に構えていた玉を瞬時に地面に叩きつけた。
その瞬間・・・
地面から大きな音と発光。
その瞬間・・・俺は理解した。
これが、蒸気爆弾・・・?
それを察知した瞬間に回避行動を取るが、爆発の衝撃と、その中から飛んでくる無数の釘が俺の身体に突き刺さる。
「お前、許さないぞ・・・」
俺は身体の痛みに耐え、立っていた。
英雄はこんなものでは死なない。
顔は腕で覆っており、ダメージはなく、視界は良好だった。その分、腕には釘が刺さっている。
気力を振り絞り、男を斬ろうと考えたが、その必要はなかった。
男もまた、その釘を受けていた。自爆か・・・見るも無惨な姿になっている・・・
それを認識し、安心したのか、次に痛みが俺を襲う。よく見てみる。全身血だらけじゃねーか。それを認識すると、今度は意識が薄れていく。
や、やべえよこれ・・・座り込むように倒れる俺。
「フッさん!!!!!!!!」
マタタキの声が遠のいていく。
ー〝地方都市リバンタン 市立図書館爆破事件〟
ー〝総死者数・・・〟
ー〝3名〟
ー〝しかしこれは、ノイズ派による地方都市リバンタンの連続爆破テロの始まりでしかなかった〟
ー〝王都新聞・・・より〟




