49話 前に進む
「このキャラ被りッ!」
「友よ!ここでは俺が上の立場にあるのだ!」
目の前のレオナルドと手合わせを願い、勝負のつかない勝負を続ける。
あの日以来・・・そして騎士団再編の時から、俺とレオナルドは友であり、そしてライバルのままだった。いつもいつも、訓練終わりに勝負をする。
実力は互角だった。だからこそ、騎士団長の座を奪われた事は悔しい。
今日は36回目の勝負。戦績は36戦36引き分けだ。何故ならいつも、良いところでマタタキが現れて、戦いを止めるからだ。決着がつかない。
弾き合う剣の音が響き、そして、今日もそろそろマタタキが止めに来るかな・・・なんて思っていたのだが、来ない。
ちょっと心配になって、試合を見学する兵士達の方を見る。マタタキは浮かない顔をしていた。
ちょ!誰か止めてくれ!
ーーーーー
結局、今日の試合はアシトによって止められた。
汗だらけの身体を冷やしながら、俺はマタタキの所へ向かう。
「どうした?」
「えっ?」
マタタキは虚をつかれた様な顔をしている。
「なんか、元気ないぞお前」
「そうかな?」
コイツと出会ってから、数年の時が経つ。マタタキは異世界からの転生者で、何故か歳を取らない。それなのに、出会った頃のマタタキ少年はもうそこにいなくて、彼はもう立派な兵士・・・大人に見えた。
「一丁前に、悩むようになったんだな。お前も」
「さすがフッさんだね」
「お前のアニキみたいなもんだろ、俺」
「うん・・・」
俺はよく分からんが、マタタキの背中を、パン、と叩いた。こういう事はレオナルドには出来やしない。
「リザレクトの街の事を考えていた」
マタタキはそう言う。コイツは人を斬ることができないし、グロテスクな事は嫌いだ。
何より人の死に敏感で、1年以上経った今でも、自分たちのせいで被害者が現れた事を、ずっとずっと・・・重荷として背負っている。
「あれは難しいな」
かくいう、俺、フレデリック・ショパニもそれを負い目と感じている。そもそも俺が皇帝の父親を戦争で殺さなければ、こんな事にはならなかったかもしれないからだ。
「フッさんは、どう思うの?」
「俺か?」
マタタキがどう思っているかは知らないが、俺は俺の答えを、語る。
「どう思うも何も、本人じゃねーからな」
「なんだよそれ」
「お前らだって、一度死んだ人間だろ?」
いつの間にか目の前にアシトがいた。
「まぁ・・・そうだけど」
「当人の気持ちなんて、分からん」
俺は言い切る。俺は俺で50年後の世界に来たが、その気持ちなんてお前らには分からない。
「あっ・・・あのー。マタタキ先輩?」
アシトがこっそりと会話に混ざってくる。
「どうした?アシト?」
「この前、先輩、あの街の人の事、聞いてきたじゃないっすか?」
「うん」
「ワイは、馬鹿なんで、よくわからねーんすけど・・・言っていいすか?」
「うん」
それは、ごく当たり前の言葉だった。
ある意味、アシトらしい言葉。
「前に進むしか、ねーんスよ」
「そ!そうだぞ!マタタキ!俺もそれを言いたかったんだ!」
俺は同調する。何だか、今回は良いとこばかり、色んな人に取られている気がする。
今回ばかりは、俺が、俺の座を、仲間達に奪われている気がした。
「ありがとう。アシト。フッさん」
きっと簡単に飲み込めないのがコイツの性格なんだろうけど、こういうのは時間が解決する事もある。
コイツの外見は変わらないが、きっとこうやって、答えの無いことを考えて・・・そうやって成長していくに違いない。
その時。
訓練場に新たに設置された〝スピーカー〟なるものから、声が流れた。




