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その座を奪われた主人公   作者: 大野春
第五章 過去の過ち
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49話 前に進む


「このキャラ被りッ!」

「友よ!ここでは俺が上の立場にあるのだ!」


目の前のレオナルドと手合わせを願い、勝負のつかない勝負を続ける。

あの日以来・・・そして騎士団再編の時から、俺とレオナルドは友であり、そしてライバルのままだった。いつもいつも、訓練終わりに勝負をする。


実力は互角だった。だからこそ、騎士団長の座を奪われた事は悔しい。


今日は36回目の勝負。戦績は36戦36引き分けだ。何故ならいつも、良いところでマタタキが現れて、戦いを止めるからだ。決着がつかない。



弾き合う剣の音が響き、そして、今日もそろそろマタタキが止めに来るかな・・・なんて思っていたのだが、来ない。


ちょっと心配になって、試合を見学する兵士達の方を見る。マタタキは浮かない顔をしていた。


ちょ!誰か止めてくれ!




ーーーーー


結局、今日の試合はアシトによって止められた。

汗だらけの身体を冷やしながら、俺はマタタキの所へ向かう。


「どうした?」

「えっ?」

マタタキは虚をつかれた様な顔をしている。


「なんか、元気ないぞお前」

「そうかな?」


コイツと出会ってから、数年の時が経つ。マタタキは異世界からの転生者で、何故か歳を取らない。それなのに、出会った頃のマタタキ少年はもうそこにいなくて、彼はもう立派な兵士・・・大人に見えた。


「一丁前に、悩むようになったんだな。お前も」

「さすがフッさんだね」

「お前のアニキみたいなもんだろ、俺」

「うん・・・」


俺はよく分からんが、マタタキの背中を、パン、と叩いた。こういう事はレオナルドには出来やしない。


「リザレクトの街の事を考えていた」


マタタキはそう言う。コイツは人を斬ることができないし、グロテスクな事は嫌いだ。

何より人の死に敏感で、1年以上経った今でも、自分たちのせいで被害者が現れた事を、ずっとずっと・・・重荷として背負っている。


「あれは難しいな」


かくいう、俺、フレデリック・ショパニもそれを負い目と感じている。そもそも俺が皇帝の父親を戦争で殺さなければ、こんな事にはならなかったかもしれないからだ。



「フッさんは、どう思うの?」

「俺か?」



マタタキがどう思っているかは知らないが、俺は俺の答えを、語る。



「どう思うも何も、本人じゃねーからな」

「なんだよそれ」

「お前らだって、一度死んだ人間だろ?」


いつの間にか目の前にアシトがいた。


「まぁ・・・そうだけど」


「当人の気持ちなんて、分からん」

俺は言い切る。俺は俺で50年後の世界に来たが、その気持ちなんてお前らには分からない。



「あっ・・・あのー。マタタキ先輩?」

アシトがこっそりと会話に混ざってくる。


「どうした?アシト?」

「この前、先輩、あの街の人の事、聞いてきたじゃないっすか?」

「うん」

「ワイは、馬鹿なんで、よくわからねーんすけど・・・言っていいすか?」

「うん」



それは、ごく当たり前の言葉だった。

ある意味、アシトらしい言葉。



「前に進むしか、ねーんスよ」



「そ!そうだぞ!マタタキ!俺もそれを言いたかったんだ!」

俺は同調する。何だか、今回は良いとこばかり、色んな人に取られている気がする。

今回ばかりは、俺が、俺の座を、仲間達に奪われている気がした。



「ありがとう。アシト。フッさん」



きっと簡単に飲み込めないのがコイツの性格なんだろうけど、こういうのは時間が解決する事もある。


コイツの外見は変わらないが、きっとこうやって、答えの無いことを考えて・・・そうやって成長していくに違いない。




その時。

訓練場に新たに設置された〝スピーカー〟なるものから、声が流れた。




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