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命って。残酷だ。それは優しかったり、残酷だったりすると彼女が教えてくれた筈なのに、今は俺にとっては寂しいものでしかない。懺悔なんかで罪を軽くしようとも思わない。一回だけ、嫌いになれたらとも思ったけど、そんなことが可能ならきっと俺はこんなに辛くもないし、苦しくなんかならないんだ。仕方ない。一緒に居るしかないんだ。そう俺が望んだことだ。善とも悪とも思わないんだ。人間が決めた法なんか、都合の良いものでしかない。道徳なんかとうの昔にどこかに置いてきた。人間の作った幻想という名の神にさえ、背こう。俺だけの人生だ。与えてくれたのは親だけど、決めるのは俺だ。忘れないこと、生きていくのも自由だ。死ぬまで、結局逢えないのなら最後の君の記憶者として生きていこう。忘れないことで君の存在が消えないのなら、この世界にも執着なんかしない。だから、これ以上掻き回すな。池田。俺をこの世界に引き入れるな。そう刹那に願う。これからあの村に行って、余計に記憶は甦るだろう。しかし夏目が居る。きっと側に。鬱陶しく彼女の痕跡を消されはしないかと不安に思う。それだけは嫌だ。決心したはずなのにまた迷う。大丈夫、大丈夫。気づかれはしない、けれど荒らされてしまうだろう。どうしよう、どうしよう。現実に住む夏目はあの村では浮世離れするだろう。きっと彼女の記憶を、脆い世界を打ち消してしまうほどに、存在は強いのだ。壊すな壊すな壊すな壊すな。
あの場所を消さないで。否定しないで。何も言わないで。
三時間、新幹線に比べれば鈍足な速度で、電車は田舎の無人ホームに辿り着いた。意識はそこらに飛ばしていたから、長い時間とも思わなかったけど、流石に腹が減ったと夏目がぐずりはじめる。買っておいたコンビニのおにぎりをバッグから二つ取り出し、夏目に押し付けた。
「またまた櫻井、四次元ポケットかよ。すげーな。準備良すぎ」
いただきますと、ありがたそうにわざとらしく受け取る夏目を一瞥し、無人駅のこじんまりとした待合室の椅子に腰掛けた。木材で作られた自然を基調とした待合室は、モダンな雰囲気があって駅の中とは




