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思えない。滅多に人の来ない、観光地にしても移動が難しいというのにこの駅は少し造りが懲りすぎてやしないか。昔は観光地にしようと建築されたのだろう。様々な土産が誰も居ない売店に干からびたように置き去りにされていた。破れて黄ばんだ解読できないポスターが壁に貼ってある。寂れてしまった風景とは裏腹に、造りは結構豪華に出来ている。車が移動手段の地元の人にとっては無駄なことだったのではないか。毎回来ているのにいつも思う。金のかけすぎだ。
「人いねーな。さみしー」
駅を眺めながらそうひっそりと呟いた夏目の声が、やけに耳に届いた。袋からおにぎりを取り出す。隅に設置してあった数少ない種類の自販機からお茶を買う。交通費は負担してもらっているのだ。これ位のものは買わないと悪い。二つずつ二人で黙々と食べた。静かだ。今更ながら共通する会話の話題がないことに気づく。特に聞きたいこともなく、亜紀穂から話しかけようとは思わない。すると夏目が口を開いた。
「この後バスに乗んの?一時間だっけ?」
「そう。まだ二十分位時間あるけど」
「こんな田舎にバスがあるなんて奇跡だな」
「高齢者が多いからね。車乗れない代わりにバスを利用する人が多いらしいよ」
「ふーん、過疎化地域だね。大変だ」
時刻表時間ちょうどにバスが来た。二人してそれに乗り込む。年寄りが利用できる交通機関はバスが主だ。しかし病院に診察しに行くでもなく、都市に向かうでもなく、むしろ不便な鬱蒼とした山奥に流れていくからなのか、車内は誰もいなかった。調度良い風が吹いて、冷房の代わりにバスの窓が全開してある。




