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夏目も続く。外の何処かから地元とは違い、静かに鳴く蝉の声を聞いた。寂しい鳴き方だ。場所によって虫も謙虚になったりするのだろうか。
乗り換えの電車に乗り、また北を目指した。変わらず夏目は読書を続け、亜紀穂はぼんやりと外の景色を眺めていた。時間が経つたびに緑が濃くなっていく。思いの外夏目は亜紀穂に話しかけたりはしない。ずっと本を読んでいる。遠慮してくれたのかもしれない。また静かに、思い出を鮮明に焼き付けるには十分だった。
亜紀穂、記憶はいつか消えてなくなるのだろう。それで良い。それしかないと思う。それが君の為だ。俺はここでの生活しか知らないから手遅れだけど、亜紀穂はまだ若いんだから、まだまだ先は長いだろう。だって忘れなかったら、君は生きていけないだろう?一緒に行ってしまうだろう?そんなことさせたくない。今までありがとう。きっとあの子は最後まで幸せだったろう。君のお陰だ。そう思ってくれ。そうしないと君はいつまで経っても、彼女に囚われてしまうのだから・・・。幸せになれないのだから。忘れてくれよ、最後のお願いだ。
誰かがそう言った。あの場所から逃げるように離れるときに誰かがそう言ったのだ。誰かは忘れたけどきっと彼だったような気がする。泣きながら俺の肩に手を乗せて、震える声で縋るように懇願し、慰めるように諭してくれた。けれど、どうして?俺が幸せになったことなど一度もない。それを貴方は見てきたはずだ。彼の哀願を泣きそうな笑ってしまうような気持ちで、静かに確かに拒絶した。そんなこと、出来るわけない。彼女が居たから幸福だったのに、それでもまだ誰かは俺が幸せに、穏やかに生きていけると思っているのか?それなら貴方は馬鹿だ。馬鹿で、甘くて、現実から目を逸らして、誰もが幸せになれると祈る何も出来ない信者でしかない。俺は君を葬りたくない。姿、骨さえ残らなかった君を繋げて生きることは困難だけれど、それでも忘れたくない。不幸でも幸せでもない今を、忘れたくはない。
葬って、葬って、葬って、いつしか消えてしまわないように。沈めてしまわないように。そうすることが悪いことだとは思わない。幾つ




