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「何で起きてた池田の方が鈍いんだよ」
「本が面白すぎてやばかったんだよ!今から犯人分かる所だったのに・・・。そしたら良いところで駅に着いちゃうし・・・」
「いつでも読める」
叫びながら急いで電車から降りた夏目が駅のホームを駆けてきた。滅多に人の来ない、駅。ここにいる自分たちが不思議に思えた。駅員もいない、無人駅。売店のお婆さんが暇そうに売り物の雑誌を眺めている。そこの売店の冷凍庫からカキ氷を二つ取り出し、お婆さんに二百円払った。
「あんた、前にも来たよね?親戚ん家が近くなのかい?」
「ええまあ、そんな所です」
遅れてきた夏目に一つ手渡す。いくら涼しいといっても電車内の冷房部屋に比べると限界がある。うっすらと滲んだ汗を息をついて身体を冷ます。プラスッチクのスプーンで青く透き通った氷を口に含んだ。冷たいソーダ味が口内に広がる。夏目もあっちーと言いながら、美味しそうにアイスを貪った。懐かしい、この味。甘い冷たくて、頭がキンキンする。いつも毎年ここで同じ種類のアイスを買う。だから食べたのは二年ぶりだ。違うことといえば夏目のために二つ買ったことだけだ。水に溶ける氷を眺める。やはり思い出す。水といわれれば、連想するものはあの場所しかない。濃い緑色の、水色の美しい湖、海、川、雨、甦る。考えていられなくなる。
食べ終えたアイスのカップをゴミ箱に放り込み、もうすぐ着く乗換えの電車の切符を夏目に買わせた。けっこうな金額だ。
「もうすぐ電車来るから。」
「え、もう?待て待て、荷物重いんだよ」
「どれだけ持ってきてるんだ。山道歩けないぞ」
「お前だって沢山持ってきてるじゃねーか」
「俺のは食料が主だ」
重そうなバッグを引きずり、夏目は亜紀穂を追いかけた。ホームに戻る。現在、時刻九時七分。後二分で電車が来る。急いで歩き出した。




