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ろう。それしか生きる理由がないのか。それでお前は疲れ果てたりしないのだろうか。壊れたりしないのだろうか。
輝く硬い宝石が、一瞬で砕けるように。
覚醒してきた意識の中で、今見ている夢はもうすぐ終わると亜紀穂は確信した。亜紀穂の体内時計の感覚は、そこそこ正確だ。もうすぐ二時間は経つ。終電の時間だ。身体は休めたけど、やはり親しくもないクラスメートの目の前で熟睡することは憚られたので、亜紀穂は意識だけ俊敏にさせていた。夏休み中ずっとこの調子かと思うと自分の神経の細さと、環境の順応性が欠けているとうんざり思い知らされた。こんなことで、ストレスを溜め込んでたまるか。当の目の前の本人は、もうすぐ最寄り駅に着くことに気づいてないらしく、亜紀穂があげた小説を食い入るように読んでいた。ゆっくりと瞼を開け、身体を伸ばし、背中を反らせる。座り込んで眠ったせいか首の骨がポキッと歪みを修正するように、高低の判断が付きにくい鈍い音を立てた。その音が聞こえたのか夏目が本から顔を上げる。呆けた表情が少し可笑しい。
「起きたのか?おはよ。あれ、もう着く?ここ降りる駅なのか?」
周りを見渡し、人が誰も乗っていないことに驚いたようで夏目は興奮気味な声を出す。それとは対称的に無人の電車は人のいた痕跡も残さず、寂しさを募らせるようだった。冷房だけがたった二人の身体を冷やすため、乾燥した冷たい空気を送り込む。夏目を無視して、大荷物を降ろし亜紀穂は電車を後にする。手動のドアを開けると、亜紀穂たちの住む地元より幾分か涼しい爽やかな風が流れ込んだ。同じ県といえど多少の移動距離で気候はだいぶ変わる。ここのような中途半端な田舎は特に。美しいといえる自然の景色とも出会えるし、快適に暮らせる都市もある。その中間もある。その後ろを夏目が待てよと言いながら追いかけてきた。少し歩くペースを落とす。




