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ど不安に押しつぶされそうになるのはその時だけだ。走るという行為はどうしても嫌いになれなかた。恐れを持ち合わせながらも愛着も拭えないもの。原始的で美しく人類が、生物が必ず行う動きだ。
亜紀穂に似ていると思った。誰でも持ち合わせる負の感情、正の感情どちらとも強い。ただただ強くあり続ける。しかしその感情を押しつぶし、殺そうとしている。不可能に近い不毛な行為を無意識か、意識的にか昔から長年続けている感じがした。人と関わりあうことがないように。
規則正しい寝息が聞こえてきた。今日の準備であんまり寝ていなかったのだろう。当たり前だ、直前に誘って来てもらったのだから。一方夏目は旅行に行く気満々で、事前に内密で準備してきたからそこまで昨日の旅行は忙しくなかった。気持ちを高ぶらせながらも、身体は睡眠をとるのだ。正直亜紀穂がこの旅行に連れてってくれるなんて思いもしなかった。強引に促したとはいえ、こうも上手くいくとは夏目自身も驚きを隠せない。本当は来たかったのではないか。けれど来れない理由があったから無理だった。夏目はただのきっかけに過ぎない。そう思う。嫌われている自分と夏休み中一緒に過ごすのは亜紀穂にとってはかなりのストレスだろう。夏目は嫌いではないけれど、むしろ憧れている。とも違う、惹かれているのだ。亜紀穂は苦手といった。嫌悪と苦手意識。どちらがより早い時間で、消滅するのか。早く仲良くなれたら良い。亜紀穂の閉じた瞼がピクリと動く。長い睫が揺れた。幸せそうな優しい顔をしているところを見ると、よほど良い夢でも見ているに違いない。亜紀穂にとって、幸福な夢とは何だろう。幸せとはどういうものか。それに君はもう夢でしか幸せになれないのか、亜紀穂。しかし分かり合うことはなくても、見続けることは可能だから。だから俺はこうして行動を共にしている。見届けたいと願う。
孤独も、悲しみも、別れも、限界も、美しさも全て背負い亜紀穂は生きている。まるで宿命を全うするかのように。いつも誰かを心に留め、囚われている。大事に大切に、忘れないように悲しみと共に。よく見ていれば分かってしまうほどに。なぜ今まで気づかなかったのだ




