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水を飼う彼女  作者: きゃべつ
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夕日が亜紀穂の顔を紅く染め、照らし、遠くから見ても絵画のようにそれ以上に儚げに、その姿が、大きく伸びた影が、周りから浮き彫りになったのだ。静かに変化し、天に近づいていくのかもしれない。この男は。いつ死んでしまってもおかしくない。それがまた新しい夏目に見せた、亜紀穂の一面だった。

今夏目と亜紀穂は電車に揺られ、会話をすることもなくのんびりと過ごしている。亜紀穂が寝ているからだ。新幹線で行こうという夏目の提案は、降りる駅が通り過ぎるから、という一言によって掻き消された。初めて亜紀穂の顔が冷ややかに苛立つのを駅のホームで見た。それから電車の中でいかに性格が悪いかということも、嫌でも知ってしまう。大きな漆黒の瞳が睫で陰った。眉を潜め、自嘲気味に笑う。シックな服装とその顔がかなり似合っていた。とても自然体で、違和感なんてなかった。そうか、これが亜紀穂の姿だったのか。静かに恐れることなく穏やかに生きている、そんな人間だと無意識の内に思っていた。だって亜紀穂はいつも孤独なんて微塵もかんじさせない、笑うことも滅多にないオーラを放っていたから。どちらの亜紀穂も自然体なのだろう。静かに過ごす、女子の告白を好きではないから、相手も本気じゃないから断る、一人で図書室にいる、面倒が嫌い、考えを押し付けられると怒る、自分が下らない生き物だと自覚し、しかし最低評価をしすぎている。全てではないけれど全部が彼の一部であって、どれもやめろと否定することなど出来ない。どれも亜紀穂らしく、人間らしい行動だった。湖の中で見た亜紀穂より、図書室で話した亜紀穂より、様々な思考を持つ彼の行為は人間らしい。他人と関わり合わない秋穂は人間らしく生物に似通っていた。夏目が止めることは出来ない。個人の性質が消滅してしまうから・・・。何より亜紀穂の生き方に惹かれてしまった夏目はそんなこと出来なかった。

だから受け入れた。夏目が否定する権利はないから、仕方がない。もう確立してしまった性格はこの年になってからじゃ直せない。夏目自身も分かっていた。

本を手渡される。サスペンスの小説だった。読んでみると案外面白

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