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に寝かせた。息を整えた彼は、少しだけいつもの亜紀穂に戻っている。まあ、それは俺が見た櫻井の一部分でしかないのだけど。
そこで、溺死体になりかけた亜紀穂を助け、なんとかお互い面識はもった、と夏目は思う。亜紀穂にしては、夏目は早く片付けたい厄介ごとだと分かっていても、関わり合いたかった。このままにしてはいけない。亜紀穂は死ぬつもりだったのではないか、だからあんな湖に入ったのではないか。そうとしか考えられない。
一つ貸しを作ることにした。放課後いつもいなくなる亜紀穂を校舎内を駆け巡り探しまくった。ホームルームが終わると、すぐに教室から出て行くのに下駄箱の靴は収まっている。帰っていない証拠だ。問題はどこに行ったか。よくよく考えてみれば亜紀穂が何の部活に入っているのか知らなかった。入っていることさえ知らなかった。余り目立たないものだから、教室から帰りに出てっても何の疑問も持たなかった。早いな、何か用事があるのかな位の認識だ。迂闊すぎた自分に走りながら涙が出てくる。こんなことなら夏休み前に話しかけて頼んでおけば良かった。そう出来なかったのは、事前に頼み込むと亜紀穂が断るという自信が確実にあったからだ。直前にギリギリのスケジュールで話したほうが良い。それに夏目本人にも恐怖があったのだと思う。現実離れした亜紀穂に関わって良いものだろうかと、不安に思ったからだ。
しかしこんな状況に陥ったのは予想外。担任に所属している部活を聞きだし居場所に向かう。うちの学校に文芸部なんかあったのか。意外な部活動があることに驚いた。しかも亜紀穂一人だけ。部誌を作る場合なんかどうするのだろう。
走りまくる。暖かい空気が走る夏目の身体によって、鋭く切れる。足音が音を追うように、足で廊下を蹴り上げる度乾いた音を響かせた。階段を駆け上げると第一音楽室から合唱部の甲高いソプラノの声が聞こえた。賛美歌のアメージング・グレイス。今日は合奏部の活動はないらしい。メロディーに合わせて歩いた。図書室の扉の前で軽く足踏みする。超特急で走った後にいきなり止まると身体に悪いのだ。暑い。




