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たのしそー」
「誰も欲しがらなかっただけだよ。それだけ行きにくいところだから」
少しだけ口調がきつくなってしまう。とっさに亜紀穂は口を押さえた。いけない、いけない、いつもは大人しい優等生を演じているのだから。すると夏目が意外そうな顔で顎に手を添え、考えるように亜紀穂を観察した。
「なんかさ、櫻井もしかして俺のこと好きじゃない?」
「もしかしなくても俺はそういう趣味はないよ」
電車がホームに風を送りながら、こちらに向かってくる。ゆっくりとペースを落としながら、風の余韻を残し、停止した。手動式のボタンを押すと、二、三人の乗客がパラパラと降りていく。休日のしかも夏休み初日に、好き好んでこれ以上北の田舎に行く乗客は少ない。中に入ると、冷房が効いていて涼しい空気が火照った身体を纏う。空いているボックス席に腰掛けた。向かい側に夏目が座る。電車の窓から見慣れない景色を眺める。次第にゆっくりと確実に電車は早く動き出した。
「そうじゃなくてさ、嫌われてんの?俺。なんかいちいち言動に棘があるんだけど」
「無理やり誘われた夏休み旅行で愛想良く出来ると思う?寛大な精神の持ち主の池田ならまだしも、器の小さい凡人の俺には無理があるよ」
「やっぱ嫌われてる?ごめん。無理言って」
電車に乗り込んでから謝られるとかなり腹立たしい。乗ってしまったのならもう今更だ。もう間に合わない。諦めに近い安堵が溜息となって吐き出された。暑かった身体は電車の中の冷気によって冷め、汗がひいてくる。少し頭が痛くなった。亜紀穂は冷房に弱い。強く効かせるエアコンに当てられると眩暈がするのだ。いや、眩暈がするのはエアコンだけのせいじゃないかもしれない。
「別に嫌っていないよ。ただ、苦手要素が夏目は多いから、あまり関わりたくなかった。夏目と関わると色々面倒だから。」
「嫌いじゃないのか?じゃあいいか。俺もお前のこと感謝してるけど、




