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る恐るその人の肩を叩いてみる。するとガバリと顔を上げ、あ、と言った。
「あ、・・・櫻井、居たんだ。はぁ、良かった。探してたんだよ。お前図書室にいつもいるって国語の先生から聞いて・・・走ってきたんだけど、はぁ、まだいて良かった」
「水飲みに行ってたんだよ。ごめん。で、何?」
「ちょ、タンマ・・・限界」
また死人のように床に倒れる。どんだけの猛スピードで走ってきたんだよ、と亜紀穂は内心呆れた。明日から夏休みなんだから別にたいした用でもないだろうし、休み明けにでも話してくれれば良いのに、なんでいきなり全速力でここに来てこいつは倒れているのだろう?夏目が息つく度に図書室の床の埃が舞い上がり、外の細い光に反射し、キラキラと星みたいに散らばっている。それを眺めながら溜息をついた。もう驚きよりも早く帰ってくれないかなという気持ちの方が勝っている。さっさと用件を言えよ。
「あのさ、前に言ってたお礼ってまだ有効?」
すでに回復しいつもの調子で夏目が言う。さすがスポーツ特待生、回復が早い。っていうかその為だけに、ここまで走ってきたのか。
「池田に助けてもらった時の?一応まだ。何?決まったの?」
そう言ったら気持ち悪いくらいに夏目の顔がパアッと、輝く。本当にコイツ高校生か?引き気味にその顔を観察する。顔は良いくせに子供っぽい。むくりと起き上がりじっと、亜紀穂を見つめながら念を押すように再度確認した。
「なんでもいいか?お金のかかるものじゃないから!だからそれ以外に、何でも叶えてくれたりする?」
「君はのび太か?」
亜紀穂は大きな色素の薄い瞳で冷ややかな視線を送る。その零下に竦む夏目を見、亜紀穂は溜息をつきながら、言い易いように促した。
「何して欲しいの?出来ることならするけど、無理なことなら頼まないでね」




