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あるが記憶していた。同じくクラスの女子だろう。名前は何と言ったか忘れてしまったが。クラスの中で比較的騒がしい子だった。そんな彼女が亜紀穂を俯きがちに見つめ、長く伸びた爪を弄りながら頬を染めているのだから、自分に声をかけた理由は安易に想像できるというものだ。行事の時に猛暑の夏休み前日の学校はやはり浮かれるものがあるが、進学クラスは補習、合宿、部活、ボランティアその他もろもろの用事がわんさとある。中学生の頃も、受験、受験と一年の頃から言われ続けていたが、高校に入ってからもそれは変わることなく進学、進学と今の一年から呪文のように聞かされる。希望制だが殆どの人が補習と合宿を希望し、夏休みの大半を、勉強に費やすのだ。そんな忙しさを前に、日数の減った休みを少しでも青春らしく過ごしたいと願う学生は前日か、二日、三日前に気になる異性に告白する。
「何?」
気づかぬ振りを精一杯装いながら、亜紀穂は上目遣いに彼女の顔を見上げた。いつもの騒がしさとは天と地の差ほどの小さい声で彼女は無駄な会話を続ける。
「あのね、その今日の放課後話したいことがあるんだけど、よかったら教室に残っててくれないかな?あ、時間はそんなに取らせないから」
「え・・・っと。今日は・・・」
「忙しい?ダメかな・・・?」
不安に揺れる顔をした円らな目を機械的に観察する。赤茶色に染めた長い髪をさらさらにして、スタイルの良い足をスカートを短くしてよく焼けた太ももを見せびらかしている生徒は誘うような甘ったるい声で亜紀穂を見つめた。前髪は目が少し隠れるぐらいに長く揃えられているのが邪魔そうだ。細い目を隠し、大きく見せようと言わんばかりにマスカラが睫に塗られている。こんな暑いのによく落ちないなと感心していたら、目の端から黒い汗がマスカラと交わって垂れてきた。本人はそれに気が付いてはいない。残念ながら亜紀穂は彼女の名前が思い出せない。「田」が名字に付いていたことは覚えているのだが、田中だったか田村だったか田野だったかどうにも分からない。なんだっ




