◇Square 9
※山田真凛視点
アリスが初恋だったのだと、そう本人が言っていたのを聞いたのは、アリスが去って半年くらい経った頃だった。
アリスが去ってから、湖一は明らかに元気がなくなった。
友達が一人去ることは寂しい事、それは私も同じ気持ちを持っていたから「寂しいんだね」と思っていた。
だけど、いつもの湖一とは違う落ち込んだ姿に違和感を感じ、なんだか私の中で湖一が気になって気になって仕方なくなった。
でも、元気がなくなったのは湖一だけでは無かった。
なのに、私が気になったのは湖一だけ。
そこで私は、自分が湖一を特別に見ていた事に気付いた。
湖一を元気にしたい。
湖一に笑ってほしい。
そんな風に思った。
ある日湖一の家に遊びに向かった時、湖が見えるベンチに湖一と湖一の父親が座っているのが見えた。
そっと近づき驚かせようとした時、会話が聞こえてきた。
「湖一はアリスちゃんが好きだったのか?」
好きという表現に衝撃を受けた。
「アリス、もう会えないのかな」
「そうだな」
「アリスに会いたい」
うん、私だって会いたい。
「アリスちゃんは確かに可愛くて素直で素敵な子だけど、湖一にはもっと似合う相手に出会えると思うけどな」
出会える?・・・湖一はアリスではない誰かと出会って・・・そして?
「なんでだよ!俺っ!アリスがいいんだ」
「そう興奮するな」
「逆さ山が見えたらまたアリスに会える?」
「・・・好きだったんだな」
父親が湖一の頭を撫でた。 湖一は泣きだして何度も頷いていた。
私の方がずっと長い時間湖一と居たのに。 湖一はアリスがいいんだって・・・
恋を自覚して、半年での失恋。
悲しいとか悔しいとか思わなかった。
ただ、私ではダメなのだと自覚した。
アリスがいいと言った湖一。 アリスではないもっと似合う相手と出会えると言った湖一の父親。
それは、既に出会っているのに湖一に必要とされていない私ではダメなのだと分からせるのには十分だった。
でも、それでもいいじゃないか。
湖一に好きになって貰えなくても、湖一が元気で笑えるようになってくれれば。
そしていつか、アリスと再会するか、アリス以上に想える相手と出会い、湖一が幸せになるのを見れるなら。
私の恋はきっと一生叶わない。
だって、私とアリスに共通点は一つもない。
髪の色も、目の色も、肌の色も、全てアリスとは全然違う。
せめてアリスの髪形を真似してみようと思ったのは、未練がましいと言われてしまう行動かもしれない。
自分の伸ばした髪を見て、笑うしかないけど。
だって、私の髪は真っ黒なストレート。
金色に輝くふわふわとしたアリスの髪には似ても似ついていない。




