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カラフルピース —探偵の自罰的事件収集—  作者: 秋野キリン
『下心・真心』

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第5片 「露出狂は肌で世界を感じているので」

「結論から言うと町中でいきなり消えている。そりゃあもう、いきなり異世界に召喚されたんじゃないかってぐらい唐突なのよ。そうとしか考えられないのですよ」


 それが本当なら確かに妙な気がする。大抵の場合、この手の行方不明というのは単なる音信不通であったり、どこか異郷の地へと行っているというのが大半なのだけれども……。だから「町中で」忽然と消えるなんてことは誘拐ぐらいしかないと考えるのが普通なのだが、わざわざ大学院生や教授なんかを誘拐するのだろうか?それに誘拐したなら何かしらの要求を突き付けてきたり、本人に用があるものなのだが、要求があったなんて話はされていないし、後者でも一体何の用事があるというのだ?


「そう言い切るだけの根拠はあるんですか?」

「そりゃあありまっせ。さっきも言ったでしょ四六時中研究所に引きこもってるやつもいるって。とはいえ、そんなあいつでも大学の敷地から出ることはありましてなー? 歩いて2分ぐらいのコンビニに夜食を買いだめに行くことがあるのよ。そこで忽然と。そのコンビニのオーナーはわちしらの同士だからさ監視カメラの映像を見させてもらったし、大学側にも監視カメラの映像を見させてもらったけんどからっきし、その後捜索願いを出したんだけど駅だとかの防犯カメラにも映ってない」

「徒歩二分ほどの間で消えてしまったと……。ちょっと見て来て良いですか?」

「もちのろんだよ。ついでにお金あげるからアイス買って来て」


 ……。案内してくれた彼も言っていたけど本当に人使いの荒い人である。




 閑静な住宅街。家の庭に小さな池がある和風建築の家やレンガ造りのおしゃれな家が時々あってどことなくこの界隈に住んでいる人々の階級が高そうな雰囲気を醸し出していた。そうするとあっという間にコンビニについてしまった。

 うーむ。歩いてみてもおかしなところは何もないな。そりゃあ当然か大勢の学生がこ登校しているのだ。おかしなことがあればすぐに問題になるだろう。誘拐の線を追うのであればやはり車に連れ込んでのものだろうか?住民が寝静まった深夜ならば目撃者もいないだろうし。





「さあさあパシ……じゃない、探偵君? 何か見つかったかね?」

「ツッコミませんよ。今のところは被害者を車に連れ込んでの誘拐ってのが一番ありえそうですかね」

「つまらないな~。そんな答えじゃ、探偵殿がわざわざ調べなくても分かることじゃねぇんですか?」

「そう言われましても……」

「キンちゃんはチミならできるいやさ、チミにしかできないとふんで雇ったはずなんよね~」

「……ずいぶん性性(せいしょう)君のこと信頼してるんだね」

「そりゃワチシらのキングだからねそれなりに長い付き合いだしね」


プルルルルルルルルルルルッ


「おっ、噂をすればキンちゃんからですな。あ~はいはいもすもすワチシでござりますが」

「んー。あー。はいはい了解ですます」


 短いやり取りだった。


性性(せいしょう)君はなんて?」

「どうやら助っ人が来てくれるらしいよんっ」




 待つこと数時間。日は沈み、外はすっかり暗くなっていた。助っ人を引き連れて僕らは被害者が誘拐されたと考えられる地点を歩いていた。

 僕は地面を凝視していた。別に地面が見たかったわけではない、地面しか見たくなかったのだ。助っ人は裸だった。正確にはコートを羽織っているけれど。それがなんだと言うのだ。ここまで分かりやすい露出狂が今までいただろうか? ……きっといたのだろうな。だから、露出狂のテンプレートとして思い浮かべるのだろうな。じゃあきっと唐草模様の風呂敷を使う泥棒もどこかにきっといるのだろうな……。


「あの、すいませんがどうして背を向けるのですか?」

「そうだよ。せっかくの助っ人に失礼じゃないのん?」

「逆に聴きますけどあなた方の価値観はどうなっているんですか?」

「どうって?」

「そりゃあ……、ねえ?」


 二人が顔を見合わせる。ような気配がする。理解できない者どうしで通じ会われてもこっちは何も分かんないんだよ!


「まったく、これだから人見知りは困っちゃうよね」

「そういう問題じゃないですよ」

「確かにそうであるな。それにしてもこれはなかなかの絶景だ」

「そんで何か感じます?」

「そんな霊感みたいに言われましても、と言いたいところですが何も感じませんね。今のところ」


 助っ人露出狂の(助っ人外国人みたいに言っても異常さは全然誤魔化せなかった)一糸畿内いっし きないさんは視線に異様に敏感らしい。人に見られて人生が終わるかの瀬戸際のすれっすれを楽しむのがご趣味なのだとか。曰く、

「学生時代。私は真面目な人間でしたね。というかそれしか生き方を知らない人間でした。先生の言うことを聞いて、友達に頼られて。悪くない学生生活だったと思いますよ。ただし学級委員としてヤンチャな生徒を注意するとき密かな憧れも抱いていました。私もあれほど自由に生きられたらなと。社会人になったある日。露出狂と出会ったんです。30代後半くらいの男性だったでしょうか。お世辞にも容姿が整っているとは言えない方でした。ですが、どことなくカッコよさを感じたのです。顔は生き生きとしていて堂々とした態度で露出していて、確固たる自我を世界に表現していたのです。私はそれに感銘を受けて露出をするようになりましてね。気持ちが良いですよ。世界を感じられて」「いや~感動ですなぁ」烏賊いずくさんは泣いて感動していたけれど、僕はもちろん理解を放棄したのだった。とにかく彼女なら何かつかめるのではないかということらしいのだ。


「任せて下さいよ探偵さん必ずや何かしらの手がかりを見つけて見せましょう」


まったく、頼もしい限りだ。


「露出狂は肌で世界を感じているので」


露出狂でさえなければ……。

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