Scene6 ―― 私は私を守らなくては
「理由を聞かせてもらおうか」
仲間に入れて欲しい、そう言った楓の目を冷たく見据え時雨は問う。彼は彼女の真意を測ろうとしていた。
「私は……。私が生き残るため、ですかね。あなたは新しい世界を作ろうとしているんですよね? そこに愚かな人間はいらない、だから一掃しようとしている。私は消されたくない。生き残るためにあなたの側になりたいと思った」
時雨は答えない。外見上では分からないが、何かを考えているようだった。
沈黙のあと、おもむろに口を開く。
「それだけの覚悟があるというのか? 俺の計画は絶対だ。この世の人間を根絶やしにする。お前の両親も、友達も、その他全て」
迷うことなく楓は頷いた。
「はい。人は、争わずには生きていけない。そういう生き物です。結局誰も自分のことしか考えられない。それなら私は私を守らなくてはいけない。そうですよね?」
「……あぁ。この世で確かなものは自分自身、それだけだからな」
「蹴落とされたくないなら蹴落とすしかない。友情や絆なんて全く当てになりません。そういう目に見えないものは私には必要ない」
「しかし、お前の大事な美青はどうする? あれを助けるために走り回っていたんじゃないのか?」
楓は言葉を詰まらせる。彼女にとって鈴音は己を捨てでも守るべき存在であり、自分を周りの世界と結び付けてくれる唯一の存在だった。
「……美青は、私にとって自分以上に大事な子です。できるなら、私と一緒に生かしてほしい。ですが、どうしてもというのなら……あの子も殺して構いません」
一瞬、時雨の目に失望にも似た感情がよぎる。しかし楓はさらに続けた。
「とはいえ、そう簡単に諦めることはできません。もし私を仲間に入れてくれるなら、必ず役に立ってみせます。あなたの期待以上の働きをする、そうしたら……、あの子も仲間に入れてください」
時雨は一つ頷いた。その表情は満足そうにも見える。
「それがお前の覚悟か」
楓は時雨を見上げ、「はい」と小さく呟いた。決意のこもった声だった。
時雨はかすかに微笑む。しかし次に口にしたのは想像外の言葉だった。
「そう簡単に信用するわけにいかないがな。本当に俺の仲間になるつもりなら、今のお前の仲間を一人生贄にしろ」
険しい顔で楓は返す。
「それは、爆弾を解除するための生贄にしろということですか?」
「あぁ。もうすぐ奴らはここに辿り着くだろう。自ら人質となったお前には選択権をやる」
楓は諦めたように頷いた。
「私が犠牲となって皆を助けるか、仲間を裏切って自分……と美青を助けるか」
「分かってるじゃないか」
時雨はにやりと唇の端をつり上げた。




