Scene5 ―― 仲間に入れてください
「まず聞かねばならないのは、あの女……楓といったか、あいつがどれほどの情報を得たのかということだ」
時雨は真っ直ぐ楓の目を見つめながら問う。下手な嘘はつかぬ方がいいと判断し、楓は一つ息を吸ってから話し始めた。
「制御装置の場所と起動方法、そして手動で爆弾を起爆させる方法についてと、解除する方法についても」
「詳しく、話せ」
有無を言わせない口調だった。楓にも逆らうつもりはない。
「お城の塔の中にオルゴールがあり、正しい音を打ち込むことで制御装置が起動、爆弾は解除される。音階も聞きましたが覚えていません。私と結翔でお城の中に入りましたが、塔に行く方法が分からなかったので美青と合流することにしました。結局私は、塔に登る方法は分かっていません」
「……ほう」
「手動で起爆させるためのスイッチがあるそうですね。あなたが持っていると思っていますが。詳しくは聞いていませんが、誰かひとりを手錠で繋ぐ、そうすると爆弾が一時停止し、その人が自爆することで完全に解除されると聞きました。ここからは私の憶測ですが、あなたの持っているスイッチでは爆弾を直接起爆させることはできないんじゃないですか? 午後十時のタイムリミットにならなければ、なんにせよ爆発はしない。その時限装置を動かすためのスイッチではないかと。私に生贄になるかどうか選ばせるつもりですか。それとも、会長達に誰を生贄にするか選ばせるつもりですかね」
少しの間、時雨は腕を組んで考えていた。風の音だけが二人の間を抜けていく。
「そこまで分かっているならなぜ自ら捕まった? 何が狙いだ」
今度は楓が黙る番だった。
「それは……お願いしたいことがあるからです」
顔を上げ、きっぱりと言う。その表情からは強い決意が見て取れた。
「聞いてやろう」
「私を、あなた達の仲間に入れてください」
ヴー、ヴー、ヴー……。
「時雨から電話だ」
その一言で三人に緊張が走った。
鈴音の案内で火山の麓に到着した時だった。火山型ドーム内はジェットコースターで大人気のアトラクションなのだが、その中の一部が改造されて時雨の基地になっているらしい。最後の仕掛けである生贄を乗せる潜水艇もここにあるそうだ。
時雨はスピーカーをオンにし、応答ボタンを押す。
「ようこそ、我が基地へ」
「なんの用だ。彩花を返すつもりにでもなったか?」
「まぁ、話は後だ。特別にお前達を歓迎してやると言ってるんだ」
歓迎、という言葉に漣と鈴音は顔を見合わせた。
「入れ」
同時に楽しげな音楽が流れ始め、閉まっていたシャッターが上がっていく。
躊躇する五十嵐の様子を見ているかのように時雨は笑った。
「罠などないさ。早く来い。仲間を助けたいんだろ?」
五十嵐が答える前に電話は一方的に切られた。プツッという音が白々しく響く。
「行くしかないな」
ほとんど独り言のような五十嵐の言葉に漣が低く答えた。
「あぁ。歓迎されてやろうじゃねぇか」
五十嵐を先頭に鈴音、漣が続く。無人のアトラクションは非現実的で、まるで夢の中にいるような気分だった。
「彩花……。大丈夫、かな」
ぽつりと鈴音が呟く。
「大丈夫だろ、あいつなら。それに俺らが助けに来てんだからさ」
「そうだけど……。でも、どうするの?」
鈴音は時雨がするであろう交渉のことを言っていた。その事には三人とも不安を抱えている。
「……どうにかなる」
長い沈黙のあと五十嵐が口を開いた。
「どうにかするさ。心配するな」
無理やり笑って見せたが、これといった解決策が浮かんでいるわけではなかった。




