↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救世チュートリアル  作者: 紫吹
第四章:海上の死踏会 ~愛は闇夜で輝くか~
PR
51/57

Scene3 ―― 私を信じて

「時雨っ!! やめろ!」

 五十嵐は走りながら叫んだ。漣と同じように湖越しに時雨を発見し、急行してきたのだ。その後ろに漣も姿を現す。

「おまえら大丈夫か!」

 その声に反応し、振り返る楓。

「来ないで!」

 驚いた二人はその場に立ち止まった。荒い息づかいだけが響く。

()()。大丈夫だから。あとは……。時雨さん、行きましょう」

 そう言う楓の肩に手を置いて時雨は頷いた。次の瞬間、彼女の首にナイフが突きつけられている。

()()!」

 鈴音は手を伸ばそうとするが、ナイフに気がついて動きを止めた。

「おい……どういうことだよ! ちゃんと説明しろ!」

 漣が怒鳴る。楓は微笑んだ。

「私が人質になるの。楓のこと、よろしくね」

 そう言い残し、楓と時雨は歩き去った。彼女の首に流れる一筋の鮮血を見ては五十嵐も漣も動けるはずがない。

 二人の姿が見えなくなると、五十嵐と漣は鈴音に駆け寄った。

「どういうことか説明してくれるか?」

 鈴音は涙目になりながら頷く。

「あのね……」


「なるほど。如月鈴音ならばここにいるクズ共全員の命を足したよりも価値がある。そう言いたいのか」

 楓は自信満々に頷いた。

「はい。私をどう使うかはあなた次第ですが、まぁあなたなら上手くできるんじゃないですか」

 どうしよう……。どうしよう。私は何もできず、ただ見守ることしかできなかった。とりあえず、楓のことは()()と呼ばなきゃいけない。一回会長の前で楓を本名で呼んでしまったという大失敗があるから、今度こそ間違えるわけにいかないもん。

「……悪くない」

 時雨はふてぶてしく呟く。ついてこい、と歩き出そうとする時雨を無視して楓はぎゅっと私を抱きしめた。

「わ、ちょっと……」

 驚く私に囁く。

「時雨をはめる。私を信じて」

 え? 楓が何をするつもりなのか分からない。何か計画があるみたいだけど……。

「分かりました。行きましょう」

 聞き返す間もなく楓は身体を離し、時雨の方を向いていた。


「なるほどな。鈴音として捕まったってわけか」

 渋い顔で五十嵐は腕を組んだ。漣も大きく溜息をつく。

「ほんと、勝手なことするよな」

 鈴音は暗い表情で夕日に染まる城を見上げた。

「まずは、爆弾の解除が先ですかね。時雨さんが言ってたんですけど、そろそろ次のステージに進むみたいです。どういうことかよく分かりませんけど……」

「次のステージ、ね……」

 鈴音の視線を追って、五十嵐も城に目を向ける。

「じゃあとりあえず城に行くべきだな。その間に分かってること教えてもらおうか。お前の記憶力なら大体のことが把握できてるんじゃないのか?」

 そう言いながらずんずん歩いていく五十嵐の後を、鈴音と漣は小走りで追いかけた。

「はいっ! 私、ちゃんと色々見ときました! 私じゃよく分かんなかったんですけど、五十嵐さんなら色々分かると思って……!」

「ふーん、お前もちゃんと考えてんだな」

「え、なにそれ! バカにしてるでしょ」

「してねぇよ。普段なんも考えてないだろうが」

「うぅ、あとで彩花に怒ってもらうから」

「はっ、勝手にしろよ」

 二人のやり取りを聞いていた五十嵐は苦笑しながら振り返った。

「お前らなぁ、もうちょっと緊張感もてよ?」

 そうは言いながらも、彼自身今までの不安が薄れ、希望が見えたような気がしていた。人質を取られていることに変わりはないが、こちらには情報を得た鈴音がいる。なにより楓のことだ、まったくの無策というわけではあるまい。次のステージに進むという時雨の言葉は気にかかるが、こうなったらとことん付きあってやろうじゃないか。

 お前がしかけたこのゲーム、勝つのは当然俺たちだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。