Stage13 ―― Connected!
ヴー、ヴー、ヴー……。
走りながら振動するスマホを取り出した。電源を入れ、表示された見慣れぬ番号からの着信に眉をひそめる。
ちらりと背後を確認した。楓と漣が城の中に入ったあと、俺が連れてきた二人にも扉を閉めることを伝えたまではよかった。時間を稼ぎながらも裏門にたどり着き、俺が嘘の情報を言っていたと分かると奴らは俺の正体を追及し始め、城の扉が閉まったのを確認してから人に紛れて逃亡する。
俺を追っても意味がないと気づいたのか、もう追手はいないようだ。人気のない建物の裏に身を隠し、鳴り止まぬスマホを見つめる。出るべきか一瞬迷うが、誰かからの重要な連絡かもしれないと思い直し通話ボタンを押した。
「……はい」
「あ、五十嵐さんですか?」
声を聞いた瞬間、相手が鈴音だと分かる。
「無事だったのか! 今どこにいる? 状況は?」
思わず足を止めて聞いた。とにかく、連絡できるということは今ある程度落ち着いた状況にあるということだろう。まだ安心するのは早いかもしれないが、本当に良かったと思う。
「えーっと……急いで言いますね。どこかは分かりませんが、基地みたいなところにいます。パソコンとタブレットがあって、中を見ました。ここに仕掛けてある爆弾のこととか、色々。制御装置はお城の塔の一番上にあるオルゴールです。正しい音を打ち込むと作動します。音は…………」
鈴音の言った音符からメロディーを想像し苦笑した。数秒間の短いフレーズ、それは記憶の奥に埋もれていた俺たちの高校のチャイムの音階だった。
時雨、これは俺へのメッセージか? お前は……一体何をしたいんだ。
「それと、爆弾は時雨が持ってるスイッチで一斉爆破できます。それが押されたら止める方法はひとつ、誰かを生け贄にすること、だそうです」
生け贄。鈴音に似合わない言葉が、冷たく耳に響いた。
「結局機械なんてなかったな」
話しかけられて我に返った。会長からのメールは新たな情報が多すぎて、とにかく鈴音が無事だったことに安心している。情報が交換できるって本当にすごいことだな。スマホ一つでどこにいても繋がることができる。そう、私達は一人じゃないんだ。
「そうですね……。嘘だったんですかね」
当たり障りなく返事をしながら、どうやって塔に登ろうかと考えていた。中には階段などもなかったし、そもそも行けるようには作られていないのかもしれない。
「そういえば、あの放送で言ってたミッションはクリアしたんですか?」
ふと気になって聞いてみる。
「いや、まだだよ。どうしようかって悩んでる間にこのメールが来たからさ」
まだ参加していないこの人の情報が、既に時雨に渡っている。入園時に読まされたQRコードで私達を把握していると考えて間違い無さそうだ。あとはどれだけの個人情報が抜かれているかだが、時雨ならなんでもできそうだ。
「私達もまだでした。でも機械がないってことは、私達はもう安全なんですかね」
安全、という言葉でなにかを思い出したらしい男達。
「そうか、そうだよな。あいつ、外で待たせてるんだった。なぁ、俺達が中にいる必要ねぇよな?」
今日は必ずペアで入場している。二人とも女性をおいてここに来たのだろう。
「そうですよ。もう大丈夫だよって伝えたほうがいいと思います」
この人達が出ていってくれれば、安心して城内の散策ができる。漣も彼らの背中を押した。
「一瞬開けて、あんたらが出たらすぐ閉めますよ。俺らはここにいたほうが安全そうだし」
「……そうだな、じゃあ開けてもらおうか」
頷くと例の小部屋へ入っていく。
「じゃ、ありがとう。無事に出られるといいな」
「ほんと助かった。気をつけろよ」
「はい! ありがとうございます」
いい人達だった。丁度扉が動き出し、二人は隙間から外へ出ていく。
「……もう閉めていいよ!」
漣に聞こえるよう叫び、私も小部屋に向かった。もしかしたら塔に登るための仕掛けが隠されているかもしれない。
背後で扉の閉まる低い音が響いた。ふと振り返ってあることに気づく。入口近くの壁、扉が開いている時は隠れて見えないその位置で何かが光っている。
近づいて確認すると、小さな鍵穴だった。丁度光を反射したのだろう。そうでなければ見逃してしまったかもしれないほどに、ひっそりと小さな穴が開いていた。




