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救世チュートリアル  作者: 紫吹
第四章:海上の死踏会 ~愛は闇夜で輝くか~
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Stage11――城の周りで

「会長!」

 人混みの向こう、一瞬だけ見えた人影に向かって叫んだ。

「会長!!」

 漣も叫びながら人をかき分けて進む。お城のことは会長に任せ、他の場所へ向かおうとしていた私と漣だが、お城の周りに物凄い人だかりができていることに気づき様子を見に来て来た。

「通すな! 押さえつけろ!」

「捕まえろ!」

「離せ!!」

 不穏な怒号が飛び交う。何が起きているの、さらにテロでも始まったのか?

「彩花! 結翔! こっちだ、一旦退こう」

 突き飛ばされるように人波の向こうから現れた会長は、私たちの手を取り走った。引かれて走りながら尋ねる。

「どうしたんですか、あの人たち何してるんですか?」

「時雨の仲間か?」

 漣がすぐに手を振りほどいた。会長はすぐに私の手も放し、お城から少し離れた建物の陰に身を潜める。

「いや……ただの客だと思う。誰も城に入れるなと言っていた」

「なんで?」

 漣の率直な疑問。

「さぁ。周りの奴らは入ろうとしてる。それであんなことになってるようだな」

 絶えず怒号や悲鳴が聞こえている。城に入りたい者と、入れたくない者。時雨が関わっているのは間違いないとして、なぜそんな二つの勢力が生まれたのか。

「……こういうのは、聞いてみるのが一番早い」

「え?」

 驚く二人を置いて城の前に戻った。戦闘に巻き込まれないよう、遠巻きに様子を窺っている男女に声をかけた。

「あの……。あの人たち、なんで暴れてるんですか?」

 男はぎょっとして振り返り、女の方は警戒心あらわに一歩後ずさる。

「お城の中に何かあるんですか?」

 続いて問いかけると二人は顔を見合わせた。やっぱり、私たちが知らない何かがあるようだ。

「友達を助けたいんです。その子が、お城の中にいるかもしれないんです」

 ダメもとでそう言ってみたが思った以上の効果があったようで、男が溜息をついて口を開く。

「それなら、中にはいないと思いますよ。あそこには装置があって、それを使えばここから出してもらえるみたいで」

「それは……誰から聞いたんですか?」

「あの放送してた人だと思いますけど」

「……じゃあなんであの人たちは中に入れてくれないんですか?」

「さぁ」

 その理由は分からないのか。しかしいい情報が聞けた。とりあえずはこれで十分だろう。

「なるほど……ありがとうございます」

 軽く頭を下げ、足早にその場を後にした。これを仕組んだのは時雨、それは間違いない。恐らく、個人個人のスマホにメッセージでも送ったのだろう。ここから脱出できる人とそうでない人、どのように区別するのだろうと思っていたが、恐らく彼はスマホを介して私たちを管理している。その管理方法まではまだ分からないが……。とにかく、時雨は二種類の情報を流している。その1、城の中にある機械を使えば、ここから脱出することが可能。その2、城の中に人を入れることにより何らかの不利益が生じる、または城の中に人を入れないことで何らかの利益が生じる。さぁ、ここから導き出せる結論は……。

「彩花。……おい、あやか!」

 声をかけられて我に返った。

「あ……なに?」

「なに、じゃねぇ! 勝手に動くな!」

 漣に怒鳴られる。

「ごめん」

 大きく溜息をつく漣。普段人のことなんて気にしないで好き勝手やってる人に言われたくないけどね。

「で、何か分かったのか?」

 会長に促され男女から得た情報、そして私の考えを伝える。

「なるほどな。それでお前の結論は?」

「城の中に美青はいない。あるとしても制御装置でしょう」

 もちろん私たちの目的には制御装置の起動も含まれている。しかし鈴音も見つけ出さなければならない。むしろ爆発を阻止したところで鈴音は見つけなければ助けられないのだから、彼女の救出を一番に考えるべきだろう。

「中にあるのが制御装置なら、時雨はなぜ中に入れば脱出できるなんて言ったんだ?」

 漣の質問に会長が答えた。

「まぁ、あいつのことだからそれも本当だろう。装置が二つあるのか、制御装置で脱出の手続きも出来るのかは分からないが」

「じゃあ、中に入れさせない奴らはなに?」

 今度は私が答える。

「恐らくだけど、そういう指示を時雨から受けてる。誰も中に入れるな、装置に触らせるなってね。見返りはその指令を受けた人たち全員の命の保証かな」

 しばらく二人は黙って考え込んでいた。先に口を開いたのは漣。

「となると、そう簡単には中に入れない。でもさ、制御装置さえ起動させれば全員の命が助かるんだぜ。そのことを言えばいいんじゃねぇの?」

「そんな簡単にいくかな。中に入りたいのは私たちだけじゃない。他の人たちは自分が助かるためだけに、中に入ろうとしてる。制御装置が本当に中にあるのかも分かってないこの状況で、私たちの言うことを信じてもらえるとは思えないな」

 漣は深く息をつく。やれやれと首を振った。

「じゃあどうすんだよ」

 会長は何も言わない。私もいい考えが浮かんだわけではなかった。

 この状況……厳しいな。タイムリミットまで、あと、八時間。

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