Stage10――Another Side 2
時々、下の階の様子が見えた。通気口なのかなんなのか、鉄格子の隙間から除くと行き来する人の様子やたくさんのモニター、ごちゃごちゃと色々な物が置かれたテーブルなどが確認できる。もしかしたらここは……時雨の本部?
両手を縛られた状態から脱出し、発見した隠し通路を進むこと約十分。なんだかすごい冒険をしてるみたい! 楓と一緒なら、もっと楽しかったのに……。
さっきまでは早く脱出して楓たちと合流しようと思っていた。でも今は、まずこの時雨本部に忍び込んで何か情報を得た方がいいんじゃないかと思い始めている。もちろん私は漣君みたいに運動神経が良いわけでも、楓みたいに頭が回るわけでもない。これといった特技もないけれど(楓の前で言うとその記憶力と学力でよく言えるねと呆れられるけど)、私も頑張らなくちゃ。
そして大事なのは連絡手段を確保すること。私の荷物は取り上げられてしまって、使えるのはさっき手に入れたロープだけ。私の鞄、なんとか見つけたいな。
数メートルの距離に人がいるので、音をたてないように気を付けて進む。左右に枝分かれもあって迷路のように入り組んだ通路を、とにかく適当に選んで進んだ。考えても分からないなら、考えるのって無駄だよね。
変わり映えのしない景色が続く。しばらくすると見覚えのある場所にやって来た。一周して戻って来たらしい。次はさっきとは違うほうに行く。
これを繰り返すうち、ほとんどすべての部屋を覗いて回ったことになった。部屋数は八、そのうち六つには人がいる。人数は全部で五人。全員男だ。
私に見守られているとも知らない男Aが、タブレットを操作し始めた。誰かと電話をしながら隣の部屋に移動する。私も急いで後を追った。
誰かと話しながら机に置かれたパソコンを起動させた。時折頷きながら何かを打ち込んでいく。数分後、机の上にタブレットを残し部屋から出ていった。付いていくと、男B、Cが机に向かって事務的な作業をしている部屋に入って空いていた席に座る。あそこが彼の席なのだろう。
私は急いで先程の部屋に戻った。あのタブレットやパソコンから、何か情報が得られるかもしれない。楓たちにも連絡できるかもしれない。
まずはこの鉄格子を外さないといけない。屈んだままなので力を入れにくいが、端を掴んで思い切り引き上げた。ずずっと少しだけ持ち上がる。重い……けど、固定はされてないみたい! 体勢を変えてしっかり踏ん張り、もう一度持ち上げる。隙間ができたところに足を差し込んで持ち直し、さらに上げていく。引き上げるよりは押し上げる方が楽だろう、這いつくばるようにして下から押した。四五度を超えると急激に軽くなり、勢い余って倒さないよう慎重に、自分も穴から落ちないように注意して反対側に回り込み、そっと床に寝かせた。二枚ある鉄格子のうち、一枚が外された状態だ。腰に巻いていたロープをほどく。私が今いる天井から床までの高さはおよそ二メートル。普通の家より少し低いくらいだろうか。とはいえ一度降りたら最後、戻ってこれなくなってしまう。そうすれば下にいる人たちに見つかるのは時間の問題……。よし、こうなったら。
ロープは、三本の紐がより合わさって出来ている。それを解いて、端と端を結び、細いが三倍の長さのロープにする。それを鉄格子に通して、両端を持ったまま格子にぶら下がる。手を放して飛び下りた。
ドン! っと鈍い音がしてしまったが、怪我なく着地する。ロープは鉄格子を支点に垂れさがっている状態だ。それはそのまま放置しておき、タブレットを手に取った。電源を入れるとパスワード画面が表示される。上からでは画面の内容までは見えなかったが、男Aの手の動きはしっかり覚えていた。同様に入力し、難なくロックを解除する。
パソコンも同じだ。二三文字のパスワード、これは上からキーボードが見えたので簡単だった。かたっぱしからファイルを開いていく。高速でスクロールしながら文字列を追った。
「……え? なに、これ…………」
その驚くべき計画に、私は目を見張った。早く楓に、知らせなきゃ……!




