幕間劇――望月&五十嵐
「よぉ」
「……」
「飛牙!」
「……」
「ひゅうがくーん」
「……うっせーな、ついてくんじゃねぇ!」
肩に置かれた手を振り払った。
「えー、冷たいなぁ。せっかくの友達に随分ひどい態度じゃないか?」
立ち止まって振り返る。目の前の望月を冷たく見据えた。
「お前と友達になったつもりはないし、なることもない。付きまとうのはやめろ。いちいち絡んでくるな。それと名前で呼ぶな」
一息に言ってきびすを返す。なんでか知らないが、こいつ……台詞じみた適当なことばかり言ってどこまでが本気か分からないいけ好かない望月時雨に必要以上に懐かれてしまっていた。
「ふふ、注文が多いね。ま、それくらいの我儘は許してあげるとも」
いらっとするぜ、まったく。
「なぁ飛牙、提案があるんだ」
俺の答えは期待していないらしく、無視しても構わず話しかけてくる。鋼の精神だな、感心するよ。
「来週の期末試験、競わないか? 一教科でも俺に勝てたら、希望通り絡むのはやめるよ」
前に回り込み肩をすくめて見せる。無視することを諦めて睨みつけた。
「本当だな」
「お、話す気になったようだね。無論、男に二言はないさ」
「……こんなことはありえないが、もし。もし万が一、俺がお前に全ての教科で負けたら……。何が望みだ?」
こいつは抜け目ないからな。何か企んでいるに決まってる。
案の定、にやりと悪い笑みを浮かべて望月は言った。
「君が負けたら、これからも俺の遊び相手になってもらうよ」
清々しいほどに全教科で奴の力を見せつけられた
俺は、とことん望月につきあってやろうと腹をくくったのだった。高校一年の夏。未知の生物、望月時雨との出会いは俺にとって苦い敗北の記憶だ。
「飛牙、勝負しようぜ」
「……次は勝つ。覚悟しとけよ」




