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救世チュートリアル  作者: 紫吹
第四章:海上の死踏会 ~愛は闇夜で輝くか~
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Stage4――僅かで確かな団結

 鈴音を探し出し、爆弾を解除する……。口で言うのは簡単だが、実際何から始めていいのか分からない。

「会長、時雨のやりそうなこと、大体分かるんですよね。ちょっとくらい目星付かないんですか?」

 完全に彼任せだが私が考えるよりも正解に近づく可能性が高そうだった。

「それはそうだが……。逆に言えば、俺が考えることもあいつに読まれてるってことだ。そうなったらもう裏を読むしかないが、そんなことしてたらきりがない。つまり――」

 漣が悔しそうな会長の後を引き取って言う。

「分かんねぇんだな。美青の居場所も、制御装置の場所も」

 3人揃って溜息をついた。現在の時刻、11時42分。タイムリミットまであと10時間ちょっと。

「三手に分かれるか?」

 重苦しい空気の中、漣が提案する。賛成しようとしたが、会長に止められた。

「いや……。正直、時雨が美青を人質にするとは思ってなかった。あいつはもう俺の想像を超えた策を練ってるのかもしれない。危険だ、お前達二人は一緒に行動してほしい」

 時間は限られているのだ、ここは少しでも捜索を効率よく行いたかったが、確かに私や漣まで捕まってしまえば目的の達成はより難しくなる。

「分かりました。会長がそう言うなら、しょうがないですね……」

 渋々そう答えると、漣が口を尖らせた。

「なんだよ、そんなに俺と組みたくねぇの?」

 私は溜息をつく。

「そうは言ってないでしょ。すぐそういうこと言うのやめてよ」

 鈴音を、鈴音を見つけなきゃいけないの。酷いことされてないかな。怪我、してないかな……。私が守らなきゃいけなかったのに。

「……そうだな、とっとと探しに行くか。どうすんだ、どこを探す?」

 やけに大人しくなった漣の様子が少し引っかかるが、今は気にしてられない。そう、それが問題なのだ。時雨は見つけられるものなら見つけてみろと言った。あの余裕、私達には絶対に見つけられないと思っているんだ。一般人が入れない場所、あるいはその存在すら知らない場所、そんな所に監禁されているのなら確かに見つけるのは至難の業。

 私が黙りこんでいると、徐に会長が口を開いた。

「絶対とはとても言えないが……。時雨は劇的な演出を好む。それと、確実に勝敗の決まった勝負はしないはずだ。だから、どう考えても見つけられない、俺達は必ず負ける……そんな場所じゃないと思う。考えれば分かる場所、閃ける場所、何かしらの手がかりはあるはずなんだ」

「なるほど……。それで最後に言うんですか? 『こんな簡単なことに気づけないなんて可哀そうに……。最初から、ヒントは与えてたんだぜ。残念だったなぁ、自分達が愚かなせいで大事な仲間を失うのはどんな気持ちだ?』」

 時雨になりきって言うと、会長は目を見開いて私を凝視した。そしてふっと視線を逸らす。

「お前……いや、なんでもない。そうだな、あいつならそう言うだろう」

 望月時雨か……嫌な奴だ。でも勝機はある。

「油断……」

 私の呟きに漣が目を上げた。

「は?」

「相手は油断してる。自分が絶対的に有利だと、格上だと思い込んでる。そこを突くしかないね」

 漣は重々しく頷いた。

「あんなムカつくやつに踊らされてたまるかよ。ぶっ潰してやる」

 ギラギラと分かりやすく闘志を燃やす。

「いい意気込みだな。よし、エリアを分けとこう。さっきまでと同じでいいか、俺がAとD、お前たちがBとCだな」

「分かりました。こまめに連絡取り合いましょう」

 会長が右手を差し出した。私はその手を見つめてから、強く握る。

「じゃあ、また後で」

 短く、そっけない彼の言葉。いまさら余計なこと言う必要は、確かにないな。

「はい。次は、四人で会いましょう」

 続いて会長は漣に同じことをする。嫌がる彼と強引に握手をして何事か囁いた。

「……!!」

 何を言われたのだろう。驚いて手を引っ込めた漣の肩をポンと叩き、会長はにやりと笑った。

 軽く手を振り振り返ることなく歩いていく会長の背中を、2人無言のまま見送った。

「会長になんて言われたの?」

「なんでもない」

「ふーん……。もう一つ聞いていいかな」

 漣は訝しげにこちらを見る。

「なに?」

 彼に向き直り、距離を一歩縮めた。

「なんだよ……?」

 じりじりと後ずさる漣を壁際まで追い詰める。

「私ね……。君のこと、まだ信じてないんだよ」

「…………は?」

「私達の仲間になったふりして、実はSO側の人間だったり……しない?」

 漣は即座に否定した。

「そんなわけねぇだろ! じゃあ俺のこと、スパイかなんかだと思ってんの?」

 私は短く溜息をつく。

「教えてよ。なんでSSに入ったりしたの? わざわざ私達に接触してきたのはなんで?」

 いくら好奇心旺盛だとしても、こんな怪しげな会に入会する人はそうそういない。自分で言うのも悲しくなるが、私は皆に好かれているわけでもないし、何か共同で作業するには嬉しくない人材だろうと思う。

「それは……えーっと」

 漣は目を泳がせ口ごもった。

「答えて!」

 さらに詰め寄る。この機会にはっきりさせておきたかった。今となっては可能性は大分低いが、もし本当に漣がSOと繋がっていれば、鈴音についてなにか聞き出せるかもしれない。

「だから……その……。分かった言うよ! お前と美青が入ってるって聞いたからだ! 彩花は覚えてねぇかもしんないけどさ、俺はまだお前に勝ててない。絶対ぶっ潰してやるって決めてんだ! 分かったかバーカ!」

 凄い剣幕で捲し立て、ぷいっと歩いていってしまった。

「……勝ててない?」

 呆気に取られながらもその言葉が引っ掛かる。私は特に勝負なんてした覚えは無いのだけど……あ。

「中学の頃の話? なんだ、そんな昔のこと――」

「あぁ? いつだろうが関係ねぇ。正直俺は世界とかそんなのどーでもいんだよ」

 思いっきり眼を飛ばされた。

「分かったよ、そういうことね」

 やっぱり新しい情報はなしか。

「悪かったな、美青のことなんも知らなくて。まぁ分かってたんだろ? 人の命がかかってんだ、こんな状況になってもまだスパイを続けるほど俺がSOに取り込まれてるとは考えにくい。仮にそうだったとしても、お前らの方に流れかねない俺に奴らが情報を渡すわけがない」

 頷いて答えた。さすが漣冬真、ただの馬鹿な不良じゃないな。

「それでいちいち突っかかって来てたのね。とりあえずこの問題が解決したら……」

 にやりとして続けた。

「いつでも相手してあげる」

 なめんじゃねぇとかなんとか言いながら、それでも漣はどこか嬉しそうに目を細める。

 さて、疑いも晴れたことだし、鈴音の捜索、始めようか。

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