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救世チュートリアル  作者: 紫吹
第三章:入会審査はほどほどに
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新会員あらわる

「ちょっと話があるんだけど」

 背後から声をかけると、その男……坂田(さかた)(とおる)は面白いほど驚いて飛び上がった。

「うぉ! な、なんだよ!」

「なにそんな驚いてるの?」

 一歩詰め寄ると彼はじりじりと後ずさりする。

「急に声かけるからだろ! お前気配ないんだよ」

 声をかけるのなんて急以外にないだろうに。なぜか逆ギレされてしまった。

「そんなことよりさ……分かってるよね?」

 冷たく見据えながら微笑みを浮かべる。

「何がだよ?」

 坂田はポケットに手を突っ込み目を反らした。

 ふーん……正直に言えば許してやろうかとも思っていたが、あくまで知らないふりをするのだな。なら私も容赦はしない。

 鈴音に近づいたこと、そして何よりこの私に楯突いたこと、後悔するがいい!

「確か学習監督だったよね」

 学習監督とは委員会の1つだ。自習時間の責任者であり、先生に頼まれればプリントを配ったり宿題を集めたりする。しかし各科目にも係がいるため、実際ほとんど仕事はない。最も楽な役職だと言われている。

「そうだけど」

 怪訝(けげん)な顔をする坂田ににっこり笑って告げた。

「生活委員企画、学習監督主催のイベント案を学年主任に提出しといたから。頑張って働いてもらうよ?」

「……はぁぁ?! ふっざけんな、余計な仕事増やすんじゃねぇよ!」

 険しい顔で大声をあげる坂田を睨みつける。

「私に隠れて鈴音の連絡先聞いたらしいな。なんのつもり? 悪いけど鈴音はあげねぇよ」

 一瞬黙りこんだ坂田だが、吐き捨てるように言った。

「チッ……うぜぇんだよ、お前は如月の何なわけ?」

 答えることなくその場を後にした。彼の最後の言葉がほんの少し胸を刺す。

 私は……。これで良かったのだろうか。


 放課後。ピアノのお稽古があるということで使用人に車で迎えられた鈴音を見送り、くだらない敵対心で提出してしまったイベント案のせいで発生した仕事を進めに教室に戻る。いつもなら駄弁っている生徒がちらほらいるのだが、この日はもう誰も……いや、いた。

「……ったく、マジむかつくよな。あいつのせいで俺がこんな……」

 教室の後ろのドアから入ると、真ん中で話しているのは坂田と他クラスの男子、(さざなみ)冬真(とうま)だった。

「チッ、くそ女が。如月のおまけのくせに――」

 そうか、私はおまけ扱いなのか。せめてお付きの人とかボディーガードとか、そういう認識がよかったな。

「表情ないしなに考えてるか分かんねぇし。こえーよな」

 彼らのすぐ後ろまで近づいたのだか、一向に気づく様子がない。

 何かしら声をかけようと口を開いた時だった。

「……別にそんな怖くもねぇよ、あいつ」

 おぉ? 漣が意外なことを言い出したのでもう少し聞いておくことにする。

「それにさぁ、そもそも透が如月に手ぇだしたからだろ」

「は? 俺が悪いってのかよ」

「お前が悪い」

 つい口を挟んでしまった。

「うわぁ!!」

 2人は叫んで飛びあがり、勢い余って机をひっくり返す。

 ――――がっしゃぁぁぁん!!!

「……うるさいなぁ、なんなのよ」

校舎中に響き渡る騒音に眉をひそめた。

「ちょ、お前いつからいた!?」

 顔を強ばらせる坂田に、

「無表情でおまけで悪かったね」

そう言って腕を組む。漣に目を向けると彼は慌てて、

「あ、怖くねえっつったけど普通にキモいからな、ブス!」

 私はこいつに何かしたのだろうか……? 久しぶりに会っていきなり罵倒されるとは驚きだ。

「……高校生にもなってまだそんな低レベルな悪口しか言えないの?」

「うるせぇ!」

 言い返すだけ無駄だろう、さっさと自分の席に座る。

「……なぁ」

 漣が何か言っているが無視しよう。

「おい!」

「……」

「なぁって!」

「……」

「…………夜城!」

「何? うるさいなぁ」

 顔をあげると坂田はいなくなっており、教卓に座った漣が不機嫌そうにこちらを見ていた。

「無視すんじゃねぇよ」

「何か用?」

 学力向上キャンペーンの計画書を書きながら答える。

「……世界を救う会、入ってんだろ?」

 一瞬時が止まったような気がした。

「なんのこと?」

 何食わぬ顔をしたが内心動揺している。なぜ、漣がそれを知っている? 鈴音が皆の前で私をSSに入ろうと誘ってはいるが、他クラスのこいつは知らないはずだ。誰だろう、そんなことを言いふらす物好きは。

「とぼけんな」

 私が黙っていると、漣は恐ろしいことを口にした。

「俺も入らせてよ」

 こちらを見下ろしてにやりと笑う。ものすごく、嫌な予感がしていた。

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