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救世チュートリアル  作者: 紫吹
第二章:拠点調査
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猫を追いかけて

「あっ! 動き出した!」

 鈴音が小さく声をあげる。

「よし、行こ!」

 待つことおよそ15分、ようやく尾行が開始できる。

(めい)、あの猫に名前つけない?」

 唐突に鈴音が提案した。

「うん、いいよ。何がいい?」

 考えてあったのだろう、どこか得意気に、

「クレアとか、どう?」

 クレア? あまり鈴音が付けそうな名前ではない気がする。

「かわいいけど、何か意味でもあるの?」

 彼女はよく聞いてくれた! という顔で答えた。

creation(クレアシオン)、フランス語で創造とか結成って意味。あの任務で私たちのコンビが始まったんだからぴったりでしょ?」

 そういえばこの子、フランス語話せたんだったなぁ。普段の様子からは考えられない才女なんだよ、実は。

「へぇ、いいじゃん。……別にコンビ組んだ気もないし、あれを結成と捉えるなら昔からコンビだったようなもんだけどね?」

 クレアはゆったり尻尾をくねらせながら悠々と歩いていく。このまま付いていくだけでいいのだろうか。人間相手の尾行ならまだ経験があるが、猫を追うのは初めてだ。正直どうしたらいいのか分からない。

「え? 私と楓が組んだら最強だよ?」

 私のコンビ結成への否定を軽く流した鈴音。

「なんの自信なの……」

「最高の相棒になれるよ」

「……真顔で言わないで、恥ずかしいな」

 視線をそらすが、鈴音は気にせずにっこり笑う。

「五十嵐さんも混ぜてトリオになりたいなぁ……あ、そういえば五十嵐さんに聞きたいことってな――」

「あぁ!」

 鈴音の言葉を遮ってしまった。なんの前触れもなくクレアが駆け出したのだ。追うべきか否か一瞬迷うが、既に猫の姿は豆粒ほどになっている。

「やめよ、追い付けない」

 走り出そうとする鈴音を引き留めた。

「えぇ、でも……」

 不満そうな鈴音に言う。

「明日までにちゃんと作戦考えてくるからさ」

「んー、楓が言うならしょうがないかぁ。じゃあ明日は朝から捜索するからね!」

 せっかくの休日なのに1日探すつもりなのか……。気は進まないが、鈴音が1度言い出したらどうしようもない。

「分かった。鈴音も考えてきてよ?」

「はーい」

 ……怪しいなぁ。

「ふふ、明日楽しみだなー。ねぇ、相棒」

 くるりと振り返りスカートをひらめかせる鈴音を見ながら、

「楽しみというより不安なんですけど……?」

 なんて言いつつ、相棒と呼ばれるのは嬉しくなくもないのだった。


「…………はぁ」

 大きく溜息をつく。かれこれ1時間、クレアの軌跡と睨みあっていた。

 やる気に満ち溢れる鈴音が指定した集合時間は驚異の朝7時。普段起きるより早いじゃないか!

 時計に目をやると既に21時を過ぎている。あと11時間……。なんとか方針くらいはたてておかないと。

 今日クレアを発見し後を追った道は、GPSを付けたまま歩いた道ではなかった。私たちが手にいれた軌跡は猫の決められたルートではなく、ただの気まぐれ散歩ルートなのだろうか。しかし、それを言うなら今日の方が散歩だろう。少なくとも前回はメッセンジャーという役割があったのだから。

 もう1一度クレアを見つけだすのは難しいかもしれない。

「はぁ……」

 ベッドに仰向けに倒れ込む。尾行については多少考えがあるが、肝心のターゲットを見つけられなきゃ意味がない……。

 五十嵐はこの地図をヒントだと言った。私が何かを見落としている?

 もう一度地図をじっくり眺めた。

「…………ん?」

 起きあがり、明かりの下でじっと目を凝らす。これ……もしかして。

「そういうことね」

 1人呟き微笑んだ。

 見つけた。これが、クレアを発見する方法だ。

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