泣き顔
人影の近くに行くと...
ぐったりと頭を下げたケンちゃんが、ベンチに座っていた。
ケンちゃんは顔を上げずに静かに口を開いた。
ケン「............今は、一人にして............。」
そんなケンちゃんの言葉を反対するように、真剣な気持ちで私は言った。
「........嫌だ。」
ケン「............................。」
「このままケンちゃんを一人にしたら、ケンちゃんが駄目になりそう........だから側にいるよ。」
下を向いたままケンちゃんは、膝に置いている拳を握り締めていた。
ケン「........俺のせいで、残念な演奏聴かせちゃってゴメン....」
「そんなことないよ......私、ケンちゃんの演奏すごいと思ったよ、ケンちゃんが輝いて見えたよ。」
ケン「ありがとう........でも、緊張で手が急に動かなくなったんだ.......」
「....................。」
ケン「そしたら頭が真っ白になって........自分が何でステージに立ってるか、わからなくなって........」
段々声が小さくなっていくケンちゃんは、声と背中が震えていた。
ケン「練習........数え切れないほどしてきたのにね....」
「............ケンちゃん............」
ケン「全部......俺のせいだよな。」
その時、私は初めてケンちゃんの泣いてる顔を見た。
泣きじゃくる、と言うよりも
ケンちゃんは眉を寄せて、我慢するように涙をただ流していた。
「........先輩たち、失敗なんか気にしてないって言ってたよ。」
弱気な発言をするケンちゃんを、なんとか元気にしてあげたかった。
ケン「嘘だ..........そんなの....」
「嘘じゃないよ。最後にケンちゃんと演奏できてよかった。また一緒に演奏したい。って........」
ケン「........................。」
鼻をすするのを止めたかと思うと
ケンちゃんは、涙でグシャグシャの顔で小さく言った。
ケン「............俺も................。」
そして、また泣き始めたケンちゃん。
今度は、シャツの袖で涙を拭いながら
子供のように泣きじゃくった。
「........ケンちゃんは、悪くないよ。皆楽しかったからそれでいいんだよ。あの時、ケンちゃん聞こえたでしょ?皆、声かけてくれてた....応援してたじゃん。」
ケン「.........うん.........そーだね。ありがとう。」
私は震えるケンちゃんの背中を優しく、さすってあげていた。
ケンちゃんが泣くと、私の目頭も熱くなって
瞬きをしたら涙が頬を流れそうなくらい
私の瞳には涙が溜まっていた。
ずっとケンちゃんの背中をさすってあげていると
徐々に落ち着いてきたケンちゃん。
すすり泣く声も聞こえなくなった。
ケン「........琴.......」
「........ん........?」
ケンちゃんに小さく名前を呼ばれ、私も小さく返事をした。
ケン「今だけ...........今だけでいいから....」
「うん........?」
ケン「............めて........」
あまりにも小さい声なので、なんて言ったのか聞き返した。
「え?何?」
ケン「........抱きしめてよ。俺のこと........」




