六階層へ
朝になり、少し眠そうに座るリベルテ。リベルテの肩から、毛布がずれ落ちて寒さに震える。
隣では、ロイが疲れたように寝ている。音をたてないように、静かに立ち上がるリベルテ。毛布がずれて、寒そうに震えるケットシーに毛布をかける。
リベルテは、ローブをはおりテントの外へ出る。
「相変わらず、朝が早いな。おはよう、リベルテ。何か、凄く寒いんだけど。」
防寒着を着て、暢気に笑うカルマ。
「あぁ、かなり寒いな。まぁ次の階層は、雪と氷の世界だから冷気が流れて来るんだけど。」
お湯を沸かしながら言う。
「リベルテ、昨日はロイと何を話してたんだ?」
「さぁ、特には何も。」
サラッと、何でもないかのように笑う。そもそも、リベルテは寝起きは悪い方ではない。だから、寝起きだからと言って口をすべらせる事はない。
「リベルテ、辛かったら言えよ?」
それで、少し察してしまう。まぁ、あれだけ夜中に騒いだんだ。会話を聞かれても、何もおかしくないだろう。全て、聞かれたのだろうか?
「あぁ、ありがとう……。」
コーヒーを、カルマに渡して自分も飲む。
「お前は、昔からそうだよな。辛い癖に、一人で抱え込んで俺らの知らない所で泣いている。」
「………。」
リベルテは、黙って目を閉じる。
「俺らが、辛い時は助けてくれるのにさ。何で、自分が辛い時は俺らを頼ってくれないんだ?」
「………。」
リベルテは、沈黙を守ったまま目を開きカルマを見る。カルマは、泣きそうな表情でこちらを見てる。
リベルテは、申し訳ない気持ちになるが表情に出さずに優しく笑う。偽りの笑みで、自分の心を隠すように騙すように。底知れぬ、罪悪感と戦いながら。
「そのうち、頼るさ。ここは、ダンジョンだし。」
友達に、また嘘をついた。いや、頼る場所をすりかえたと言うべきだろうか。どちらにせよ、二人をこの件に関わらせるつもりはもとから無い。
「リベルテ!」
「こらっ。そんなに、大きな声だしたら皆が起きちゃうだろ?さて、朝食の準備でもするかな。」
立ち上がると、準備を始めるリベルテ。すると、カルマも立ち上がり手伝い始める。
「カルマ?疲れてるだろし、座ってても良いんだけどな。人数も、そんなに多くないし。」
「いや、俺も手伝うよ。」
テントから、フワフワモコモコした服を着たケットシーが出てくる。ケットシーは、一直線にリベルテの足元に行く。少し遅れて、ロイがテントから出てくる。どうやら、ケットシーの着替えを手伝ってくれていたらしい。ケットシーは、フワモコな服を気に入ったらしくご機嫌である。
「リベルテ、ケットシーの服って手作り?」
「えっ!?あれって、手作りなのか!」
ロイが言うと、カルマが驚いてリベルテを見る。
「ケットシーから、聞いたのか?まったく……。」
「それにしても、ケットシーって人化できるんじゃないのか?いつも、猫の姿だけど。」
「あぁ、出来るよ。確か、19歳くらいの青年。」
それを聞いて、耳を疑うロイとカルマ。
「「せっ、青年!?」」
「うん。」
「えっと、あの子供っぽいケットシーが?」
「うん、年齢的には大人だけどな。」
何言ってんの?とばかりに、首を傾げるリベルテ。
「えー、何か子供っぽい。」
「さすがに、人化している時はあのキャラが変わるぞ?一応ケットシーを、まとめる王様で精霊王の元右腕だった実力者だ。かなりの強者だよ。」
ニコッと笑い、食事を運ぶリベルテ。
「「嘘ぉー!?」」
「主ぃ、どうかしたのにゃ?」
「いや、それよりあの子らにも持っていけ。」
暢気に、ケットシーを撫でる。
「はいですにゃ。」
「精霊王の右腕が、子供にこき使われている。」
カルマが、どよーんと呟く。
「ねぇ、何で人化しないの?」
すると、耳をシュンとさせてドヨーンと言う。
「人化したら、主がかまってくれにゃいのにゃ。」
………。笑っ………。
「早く食べて行くぞ?」
リベルテが、暢気に笑って言う。
寒い。そして、雪の世界。
「にゃっほーい!雪にゃ!雪にゃ!」
「普通、雪が降って喜ぶのは犬だろ……。」
苦笑して、カルマが思わず言う。
「我輩は、猫は猫でも猫精霊にゃ。そこらの、にゃんことは違うのにゃ!えっへんにゃ!」
リベルテは、会話を聞いて笑みを浮かべるが次の瞬間スッと表情を引き締めて剣に手をかける。
「アイスゴーレムが、こっちに向かって来ている。たぶん、俺らには気付いて無いけど。」
後ろを振り向き、3人に疲れたように言う。
「お前達は、完全に見つかった。」
雪崩れが、3人を襲うように来る。
「「「キャアァァァ!!」」」
悲鳴をあげて動かない3人。
「馬鹿!!」
カルマが、思わず叫んで動こうとする。でも、ロイが肩をつかむ。間に合わないからだ。
リベルテは、ため息を吐き出しバッと走りだすと3人の前に立ち剣を左手で構える。
「まったく、世話のかかるお嬢さん達だ。」
次の瞬間、雪崩れてきた雪が吹き飛ぶ。剣を鞘に収めてカルマ達の所へ行く。
何が、起こった?
二人は、そう思いリベルを見る。
「取り敢えず、走って逃げるぞ。今のは、前菜にすぎない。モンスターの、フルコースを味わいたくないからな。ほら、前菜のアイスゴーレムが来たぞ。走れ走れ!出来れば、逃げ切るぞ!」
そう言うと、走り出すリベルテ。
「ちなみに、フルコースって?」
「旨味が無い上に、とっても無駄な体力と精神力をつかう無駄骨パレードフルコース。」
「「「「「わかった、走る!」」」」」
こうして、6人は下の階層目指して走り出した。
「主ぃー、待ってなのにゃ。」
リベルテは、首根っこをガシッとつかみ肩に乗せると走り出すのであった。




