一階層
ダンジョンだぜ。一階層だぜ。生意気娘だぜ。
ダンジョン1階Fランクの魔物の階層
「何か、肌がゾワゾワする。」
「だな、寒気しかしない。」
リベルテは、そんな二人を見て考える。
二人にも、この感じがわかるのか。なら、カルマはもうBランク冒険者には当てはまらないな。ロイもだけど、Sには届かなくても近い所までは来てるのか?二人とも、凄く強くなったんだな。
「二人とも、言っておくがここの魔物は外の魔物の20倍の戦闘能力を持っている。だから、ゴブリンだからって油断はするなよ?」
警戒しながら、真剣な表情で剣に手をかけて言う。
「油断大敵って、いう事だね。」
「それで、この寒気がしたんだな。」
二人とも、武器を構えて警戒する。すると、リベルテが険しい表情をする。そして、二人を見て言う。
「ロイ、南南東の方角に8本矢を放てるか?」
「えっ?うん、放てるけど ……。」
「カルマ、北の方角を警戒しろ!」
「おっ、おう。」
リベルテは、小さく舌打ちをして魔力を纏う。
「ロイ、13秒後に矢を放て。カルマは、北から予想通り来る魔物の対応を頼む。俺は、南から来る馬鹿達をどうにかする。気を抜けば、死ぬぞ!」
走って来る、三人の女性を見て二人は対応を始めている。女性の後ろには、ゴブリン、スライムがたくさん付いて来ている。装備は、ボロボロだ。
リベルテは、冷たい瞳で彼女らを一瞥すると魔物を一瞬で一掃する。ロイやカルマも、対応が終わったのかリベルテに近付き彼女らに視線を一瞬向けて背ける。装備は、ボロボロなので見えていたからだ。
「リベルテ、こいつらはどうすんの?」
「放っておく。先に、進もうか。」
リベルテは、冷たい声で怒りを滲ませ言う。
「ちょっ、待ちなさいよ!こんな、可愛い女の子をこんなところで放っとくわけ!?」
「は?誰が、可愛いって?俺にとっては、魔物を当て擦りされたあげく命を助けたのに礼も言わず生意気言う馬鹿にしか見えないんだけど。一歩間違えたら、俺はともかく仲間が死ぬかもしれなかったんだぞ?これ以上、お前達を助ける義理はない。」
ピシャリと言い放ち、スタスタと歩き出す。
「リベルテが、今まで無いくらい怒ってる。」
ロイが、少し嬉しそうに笑う。
「待ちなさいよ!私は、この国の貴族なのよ!」
「だから何だ?今現在、身分がお前を助けてくれたか?魔物達は、身分を振りかざせば攻撃などが止まったのか?ダンジョンでは、身分など無意味だ。実力が全てで、弱肉強食の世界がダンジョンだ。」
「何よ、偉そうに!私は、これでもCランク冒険者なのよ!後で、特もするし助けなさい!」
すると、カルマとロイは腹を抱えて笑いだす。
カルマは、Bランク冒険者。ロイは、Aランク冒険者。そして、リベルテはSランク冒険者だ。つまり3人とも、彼女らより上のベテラン冒険者なのである。これが、二人が爆笑した理由である。
リベルテは、冷たい瞳で石ころを見るように言う。
「お前、貴族の地位を利用してCランクスタートしただろ?ギルドでは、禁止されているのに。」
「なっ、何で知ってるのよ!?」
すると、ロイとカルマも冷たい目になる。
「リベルテ、ギルドマスターにきつく言っといて。リベルテの言葉なら、効果てきめんだろうし。」
「まったく、ずるをするから死にかける。」
リベルテは、頷いてまた歩き出す。
「ちょっと、リベルテさんだっけ?」
リベルテは、止まり振り向く。
「何だ?本当に、先に進みたいんだか。」
「あなた達は、察するにベテラン冒険者よね?」
リベルテは、静かに頷いて女性を見る。
「その、私達の護衛を依頼したいの。」
「断る。お前らのような、お荷物を連れて行けるほどここのダンジョンは甘くない。」
「どうしても、実績を残さないとギルドの冒険者から除名されてしまうの。だから、お願い!」
すると、思わず笑うリベルテ。
「なるほどね。でも、頼んだ相手が悪かったね。」
ロイも、流石に苛ついたのか黒い笑みを浮かべる。
「えっ?どう言うこと?」
「自己紹介をしよっか。僕は、この国の王子ロイだよ。一応、Aランク冒険者なんだけど。ちなみに、君らと違ってFランクから上がってきたね。」
「俺も、この国の貴族でカルマだ。これでも、Bランク冒険者なんだぜ。もちろん、ずるはしてないからな。だって、最近に貴族に戻ったし。」
「俺は、リベルテ。普通の平民だ。」
あえて、嘘の情報を流す。
「あははっ、貴族と王族ならわかるけど泥臭い平民が入ってるだなんて。まぁ、普通?なのかしら。」
すると、ロイとカルマが『うわぁ~……。』とばかり青ざめている。そして、数歩リベルテから離れる。
「そうだな、初めましてSランク冒険者のリベルテだ。ギルドマスターとは、友達で一応だが知略の道化師と呼ばれ恐れられていた過去がある。」
素っ気なく、何でもない事を話すようにさらりと言う。すると、3人から血の気が引いていく。
「ちなみに、あの大国であるシュガロ王国の王子様でもあるよ。君達、喧嘩売ったけど大丈夫?」
ロイが、『苦しめ』とばかりに黒い笑みを向けて言う。さらに、3人から血の気が引いていく。
「そして、このダンジョンのボスの契約者だぞ。」
カルマが、無邪気な満面の笑みを浮かべ言う。
「あっ、あの!私は、ずるはしてません。ギルドに、確認して貰っても大丈夫です。」
「名前は?」
リベルテは、無表情に短く言う。
「ネルローレ男爵家、次女アリア・ネルローレ。」
リベルテは、前に見せてもらった冒険者の資料の全てを数分かけて思い出す。そして、優しい笑みでアリアを見ると柔らかい口調で言う。
「あぁ、クトンの森で精霊姫を助けたあのか。」
「えっ?はい、何故わかったんですか?」
「アルドに、新人の面倒を頼まれてたからここ最近の冒険者の情報は全て覚えている。それに、俺の友達のケットシーも喜んでたからな。」
そう言って、華のような笑みでニコッと笑う。
うきゃぁああああっ!この人、良く見たらかなりのイケメンさんです。そんな、優しい笑みを向けられたら惚れちゃうでしょう!!!!うわぁーん、絶対に顔が赤くなってるよぉ!背景に、花が見える。
「リベルテ、君ってば罪な人だね。」
「まったく、本当にな。そして、これで無自覚なんだからなおさらタチが悪い。」
二人は、ため息をついてリベルテを見る。
「ん?」
キョトンとして、二人を見るリベルテ。
「「何でもない。」」
「そうか、わかった。さて、アリアだっけ?二人を連れて外に出ろ。お前達では、五階層がギリギリだろうし。命は、大切にすべきだ。」
すると、アリアが困った表情をする。
「あの、浄化石とエレメントフラワーがこのダンジョンには四季関係無くあると聞きました。」
「ん?あぁ、あるけど浄化石は50階層だしエレメントフラワーは最下層の100階層ラスボスの部屋にだぞ?しかも、グリモワールが育ててる花で英雄が勝手に摘んで激怒したグリモワールはその英雄をうっかり殺してしまっているんだが。」
困ったように、頬を掻いてうーんと考える。
「「グリモワール、怖っ!?」」
「浄化石も、成竜が住まう中ボスエリアにあるし。かなり、集めるのは難しいんだ。諦めろ……。」
ドヨーンと、ため息混じりに言う。
「それは、駄目なんです!浄化石とエレメントフラワー、そして女神の涙と精霊の雫を集めないと。」
「なるほど、闇の精霊に呪われたのか。精霊姫を救った件で、作戦を邪魔された事が闇の精霊にとって気に入らなかったんだな。お前に、復讐するために家族に呪いでもかけられたか。」
すると、驚いてこちらを見るアリア。
「凄く、詳しいんですね?」
「まぁな、俺と契約してるケットシーは精霊王使えていたし。それに、かなりのおしゃべりだ。」
「主、我輩を呼んだですかにゃ?」
黒い毛に、紫の瞳の猫が現れる。テッテッテッと、近付き嬉しそうに笑う。
「ケットシー、確か女神の涙は宝石で精霊の雫は生命の樹の葉から落ちた水だっけ?」
「そうですにゃ。ただ、女神の涙は魔力不足で暫く見てないにゃ。おーい、グリモワールゥ!主に、しっかり挨拶すべきにゃ!覗かれるのは、かなり不愉快にゃ!出てこいなのにゃあ!」
すると、銀髪に緑の瞳の少女が現れる。
「にゃあにゃあと、うるさい奴じゃ。それより、主ぃー!お久しぶりなのじゃ!」
走って、リベルテに抱きつくグリモワール。
「どわっ!?ぐっ、グリモワール……。」
「ふむ、この姿では主は動揺せぬか。ならば……。」
ドロンッと、煙をたてて現れる美女。
「これなら、どうじゃ?」
「はぁ……。グリモワールは、相変わらずだな。何も知らない奴なら、コロッと落ちるだろうが俺はお前の契約者でお前が体は女でも心は男だって知ってるんだぞ?動揺するわけがないだろ?」
「「初めまして、魔導書の王グリモワール様。」」
カルマとロイは、正式な礼をする。リベルテは、居心地が悪くなってため息をつく。
「うむ、初めましてじゃな。」
「それより、そろそろ離れろ変態……。」
グリモワール、無理矢理引き剥がして言う。
「主よ、久しぶりなんだから良いではないか。」
「次に、どさくさに紛れて魔力を奪ったら契約を終了させるからな。まったく……。」
「にゃんだって!?グリモワールゥ、主に何て事をするのにゃあ!主の童貞は、我輩が守るにゃ!」
リベルテは、表情を赤くしてスパァーンとケットシーを叩く。グリモワールは、ニヤリと笑う。
「あと少しで、魔力の誓い(※婚約の誓い)が出来たのにのぉ。主よ、結婚しようぞぉ。」
「なぜ、こうなった。」
頭が痛そうに、ため息をつくリベルテにロイとカルマは苦笑して慰めの言葉を言う。
「昔は、男だったとはいえ昔の事じゃ。今は女だから、結婚くらい良いではないか。意地悪。」
ふて腐れた、表情で言う。
「我輩、全力でその変態から主を守るにゃ……。」
その台詞を、聞いて耳をピーンとして真顔で言う。
「あぁ、よろしく頼む。」
青ざめて、コクコクと頷く。
「それでは、待ってるぞ。」
グリモワールは、暗闇に消えた。
「まぁ、冒険者なら分かると思うがダンジョンの生死は自己責任だ。もう、止めないから好きにしろ。けど、俺らの邪魔はしないでくれ。」
2階層に、向けて歩き出す。3人は、ついてきている。リベルテは、ケットシーを撫でてから小さくため息をつくのであった。
さて、階層を飛ばしながらも書きたいと思っています。100階層まで、書こうと思えば書けるのですが話が進まないので。




