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冷徹な聖騎士様は、地獄を脱出した元令嬢を溺愛したくて仕方がない〜実は十三年前から初恋でした〜  作者: 銀文鳥


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第81話


長かった戦いと、目まぐるしく人々が交錯した騒がしい日々がようやく過ぎ去った。




賑やかだった屋敷には静寂が戻り、レイヴン邸は今、本来あるべき二人だけの甘やかな時間を迎えている。




重厚なオークの扉が閉じられ、夜の寝室には燭台の柔らかな炎と、二人を祝福するように降り注ぐ青白い月光だけが満ちていた。




「……カティ」




背後から滑り込んできたしなやかで力強い腕に抱き締められ、エカテリーナは小さく息を呑んで振り返る。




そこには、普段の理知的な面影をすっかり消し、灼けるような熱を孕んだ蒼の瞳で自分を見つめるギルバートの姿があった。




「バート……っ? あの……」




「ずっと、我慢していたんだ」




逃がさないと言わんばかりに、ギルバートはエカテリーナの華奢な腰を引き寄せて密着させると、彼女の白く細い首筋へと深く顔をうずめた。




吸い付くような吐息と唇の感触に、エカテリーナの身体がびくりと跳ねる。




「客人が大勢いて、ずっと指一本まともに触れられなかった……。今夜は覚悟してほしい」



「っ……バート、そんな……んっ」




甘い言葉を呑み込むように重なった唇。




深く、熱く、息を吸い尽くすような口づけが何度も落とされる。




熱情に塗れた指先がシルクの薄い衣を滑り落ち、エカテリーナの肌を直接なぞり上げると、彼女の身体からすっと力が抜け、彼の胸の中に身を委ねるしかなかった。








ベッドへと優しく倒し込まれ、覆いかぶさる重厚な体温。




ギルバートの大きな手がエカテリーナの濡れた髪をすくい上げ、幾度も首筋から鎖骨へと甘い痕を刻んでいく。




「……前世の記憶を、完全に思い出したのだろう?」




エカテリーナの薬指で微かに輝く『月光石』を見つめながら、ギルバートは愛おしそうに目を細めた。




「ええ……。セレスティアと、レオン……。あの切なくて、悲しかった涙の記憶も……全部」




エカテリーナが潤んだ瞳で見つめ返すと、ギルバートは彼女の華奢な手を取り、自らの衣の隙間から露わになった素肌――その鼓動の鳴り響く胸元へと深く導いた。




指先から伝わる、狂おしいほどの脈打ち。




「俺が君を遠くから見つめていた時も、奪い去りたいと飢えていた時も……ただの片思いにしては、どうしてこれほど狂おしいのか不思議だった」




ギルバートはエカテリーナの額にそっと額を重ね、吐息が混ざり合うほどの距離で、熱く甘い声で囁いた。




「だけど、すべて繋がったよ。俺が君を好きで好きでたまらなくて、何としてでも妻にしたいと望んだのは……あの日、君を残して逝ってしまったレオンの想いも、ずっと俺の中に受け継がれていたからなんだな」



『生まれ変わったら……今度こそ君を、俺の妻にする』




遠い昔、冷たい荒野で途絶えたあの最期の約束。




「バート……私ね、今すごく幸せよ。聖女としてではなく、ただの『エカテリーナ』として、貴方にこんなにも愛されていることが……たまらなく嬉しいの」




「カティ……もう二度と、逃がしてなんてやらない。俺の生涯も、魂も、この身のすべてで君を愛し尽くす」




再び重なり合う唇。



今は、身も心も余すことなく重ね合わせ、二人は幾重もの運命を乗り越えて、互いの愛を確かめ合っている。




シーツを強く掴み取るエカテリーナの指先をギルバートの指が力強く絡め取り、月光が静かに二人を包み込む中、数千年の時を超えて結ばれた二人の愛は、もう二度と悲劇に引き裂かれることなく、夜の闇さえ優しく溶かしていくのだった。



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