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冷徹な聖騎士様は、地獄を脱出した元令嬢を溺愛したくて仕方がない〜実は十三年前から初恋でした〜  作者: 銀文鳥


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第79話


「オオオオオオッ!! 忌々しい大聖女と騎士めが……破滅せよぉぉぉっ!!」





『邪神ゼノヴィア』が狂乱の叫びを上げると、周囲の空間を歪めるほどの膨大な漆黒の瘴気が凝縮され、世界そのものを穿つような超巨大な暗黒弾となって放たれた。




地響きとともに駆け巡る破壊の波動。




しかし、ギルバートとエカテリーナの瞳に、一片の恐れもなかった。




「――バート、私たちのすべてを……!」




「ああ、届かせよう……数千年の愛と、今度こそ二人で掴む未来を!」




エカテリーナが薬指の「月光石」を胸元で強く抱きしめると、眩いばかりの純白と金の聖光が奔流となって溢れ出した。




前世セレスティアの絶望の涙から生まれ、現世で育まれた深い愛によって覚醒した輝き。




その光は、ギルバートが掲げる聖剣の刃へと一気に収束していく。




澄み渡る月光のように輝く刃。




重なり合う二人の魂が、聖剣を至高の神剣へと昇華させていた。





「ハアァァァァッ!!」




ギルバートが地を蹴り、一撃のもとに真っ直ぐ突き進む。




エカテリーナの放つ圧倒的な浄化の聖光がギルバートの全身を覆い、迫り来る超巨大暗黒弾を真っ向から切り裂き、浄化していく。





「な……なにぃっ!? 我が暗黒の力を……切り裂くだとぉっ!?」




驚愕に目を見開く邪神の眼前に、瞬く間に肉薄したギルバート。




彼の手元には、エカテリーナの祈りと魂が宿る光の刃。





「――聖月光昇天斬(ルナグランドクロス)!!」





閃光が走った。





満月の光を束ねたような一撃が、邪神の巨躯を『石匣』ごと斜めに一刀両断する。






「グアァァァァァァァッ―――!? 忌々しい……月光の……光があぁぁぁっ!!」





邪神の絶叫が夜空に轟く。





斬り開かれた傷口から、溢れ出すのは黒い血ではなく、どこまでも透き通った圧倒的な聖光だった。






数千年間溜め込まれた憎悪も、嫉妬も、邪悪な呪いのすべてが、エカテリーナとギルバートの絆が放つ光に包まれ、瞬く間に浄化されていく。






ゼノヴィアの肉体は瘴気とともにサラサラと光の粒子へ分解され、夜空へと溶けて消えていった。






* * *






ドォン……と静かな衝撃ののち、完璧な静寂が訪れる。





邪神は『石匣』もろとも完全に消滅し、世界を覆っていた禍々しい闇は跡形もなく霧消した。






見上げれば、荒れ果てた庭園の頭上には、濁りのない深く澄み渡った夜空が広がっている。




そこには、二人を祝福するかのように、満月が青白く、優しく温かな光を注ぎ込んでいた。






かつて前世で見た、冷たく切ない月ではない。




二人の絆と愛を永遠に照らし続ける、美しく穏やかな月明かりだった。






「終わった……のね、バート……」





力が抜け、膝から崩れ落ちそうになるエカテリーナ。




ギルバートは聖剣を静かに収めると、すかさず手を伸ばし、彼女の華奢な身体を強く、いとおしそうにその腕の中へ抱き寄せた。





「ああ、終わったよ……カティ。もう、誰も君を傷つけさせない」




月明かりの下、二人は互いの体温を感じながら、静かに、そして力強く身を寄せ合った。






かつては同じ月の下で、愛する人の命を失った二人。




けれど今は――同じ月の下で、愛する人の温もりを確かに感じている。




数千年の時を超えた恋は、今度こそ悲劇ではなく、二人の未来へと繋がったのだった。



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