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冷徹な聖騎士様は、地獄を脱出した元令嬢を溺愛したくて仕方がない〜実は十三年前から初恋でした〜  作者: 銀文鳥


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第65話


エカテリーナが「ピーチパイを取ってくる」と部屋を出て行ったあと、客間にはアランとラーシャの二人が残された。




少し気まずい沈黙が流れるのを和らげようと、アランはテーブルの上に置かれたテキストにそっと視線を落とした。




「……あ、これ。ラーシャが勉強しているテキストかい?」



「あ、はい……」




アランがページをめくると、そこに記された専門的な記述に、思わず感心したように目を丸くした。




「へえ、すごいな。こんな難しい内容を自分で勉強しているのか」




その言葉に、ラーシャはわずかに頬を赤らめながら、首を横に振った。




「いえ……私なんてまだまだです。すべては、カティ先生――エカテリーナ様が、すごく分かりやすく丁寧に教えてくださるおかげなんです」




「あぁ、姉さんの教え方は本当に上手いからね。実は、僕も小さい頃はよく姉さんに勉強を教えてもらったんだよ」




懐かしそうに目を細めるアランの姿に、ラーシャはふっと柔らかな笑みを浮かべた。




「そうなんですね……。アラン様は、王立高等学院に通っていらっしゃるんですよね?」




「ああ。レイヴン侯爵様も卒業された、あの王立高等学院に通わせてもらってるよ」



アランが誇らしげに胸を張ると、ラーシャは少し羨ましそうな、憧れのこもった瞳を向けた。




「学院での生活は、どうですか……?」



「そうだな……まわりは優秀な連中ばかりで刺激的だし、僕もそれなりに頑張っているよ。一応、剣を極めたいと思っていて、将来は正式に騎士になろうと考えているんだ」



「すごいですね……! 剣士を目指しているなんて、かっこいいです」



ラーシャの真っ直ぐな称賛の言葉に、アランは少し照れくさそうに頭を掻いた。




「はは、ありがとう。……ちなみに、ラーシャは将来、何かやりたいことはあるのかい?」




「私は……幼い頃から魔導の技術にずっと興味があって、独学で学んできたんです。ただ、きちんとした学校で基礎から習ったことはなくて……」



ラーシャが少し切なそうに視線を落としたのを見て、アランは明るく元気付けるように言った。



「それなら、学院に魔導の専門コースもあるよ。この騒動が落ち着いて安全になったら、チャレンジしてみたらどうだい?」




「え……私が、王立高等学院の魔導コースにですか?」




驚くラーシャに、アランはうなずきながら続ける。




「あそこの学院はあくまで実力主義だからね。純粋な才能と実力で評価されるんだ。それに、レイヴン侯爵様の奥方であるカティ姉さんの推薦と、入学試験にパスさえすれば、きっと道は開けるはずさ」



「私に……そんなことができるでしょうか……?」



自信なげに不安がるラーシャに対し、アランは優しい笑みを向けて太鼓判を押した。




「大丈夫さ。ちなみに僕なんか、レイヴン侯爵様の強力な推薦があったからこそ入学できたけれど、実際の試験はギリギリ合格だったからね。でも、ラーシャのその熱意と頭の良さなら、きっと試験に合格できると僕は思うよ」



アランの真っ直ぐで力強い励ましの言葉に、ラーシャの胸の奥で、かつてないほど温かい光が灯った。




「……ありがとうございます、アラン様。私、頑張ってみます」



薄紫色の瞳をきらめかせて微笑むラーシャの姿に、アランは再びドキリと心臓を高鳴らせるのだった。



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