00-3.【始原遺物】── 人はそれでも手を伸ばす
《異常存在記録報告書:A-E/No.000-3》
識別仮称:《始原遺物》
通称:《世界卵》《空想機関》《神の核》
分類:現実改変型超常遺物
収容状況:封印作戦実施中
危険等級:特級指定
管轄:国連総合ギルド
異常存在管理局(中央監査部)
閲覧制限:特級閲覧指定
⸻
■第三記録:空想戦争
⸻
■戦争勃発
《始原遺物》を巡る思想対立は、
やがて外交問題へ発展した。
運用継続派は、
研究成果の独占を開始。
封印派は、
運用施設への監査および停止要求を強化。
双方の対立は急速に激化した。
そして古代竜事案から七年後。
国境地帯にて発生した武力衝突を契機として、
全面戦争が勃発した。
後に、
《空想戦争》
と呼称される戦争である。
⸻
■軍事利用開始
戦争初期。
各勢力は通常軍のみで戦闘を行っていた。
しかし戦況悪化に伴い、
《始原遺物》生成技術の軍事利用を開始。
確認記録:
・幻想獣兵器
・自律戦術機構
・超大型魔導兵装
・高位治癒機構
・戦略級防衛結界
これにより、
戦争規模は急速に拡大した。
⸻
■軍事利用成果
当初、
運用継続派は圧倒的優勢を維持した。
戦傷による損耗は大幅に減少した。
兵器は自己修復した。
都市は短期間で再建された。
戦争継続能力は飛躍的に向上した。
一部国家では、
「我々の敗北は存在しない」
との発言すら記録されている。
⸻
■異常兆候
しかし、
戦争長期化に伴い、
生成兵器群には徐々に共通傾向が確認され始める。
・防衛兵器の過剰反応
・攻撃兵器の高火力化
・治癒機構の過剰修復
・自律兵器の命令拡大解釈
いずれも、
運用者が望んだ性能を超過していた。
当初、
各勢力は性能向上であると判断。
運用停止は行われなかった。
⸻
■神代兵装復元計画
戦争中期。
運用継続派に属する
《ヴァルネシア統合王国》は、
極秘計画を開始。
名称:
《神代兵装復元計画》
目的は、
古代文明が保有していたとされる
究極兵装の再現である。
⸻
【内部記録:RV-31】
「戦争を終わらせる力が必要だ」
「絶対に敗北しない力が必要だ」
【内部記録:RV-44】
「もし古代文明に究極兵器が存在したなら」
「我々はそれを再現できる」
⸻
計画は承認された。
そして実行された。
⸻
■神代巨兵出現
計画開始から三か月後。
ヴァルネシア統合王国中央生成区域にて、
超大型人型存在群が出現。
確認特徴:
・城塞級巨体
・超高密度魔力外殻
・自律戦闘能力
・広域破壊術式
当初、
同国は計画成功と判断した。
しかし生成個体群は、
いかなる命令にも従わなかった。
⸻
【最終通信記録】
「命令を受け付けない」
「停止しない」
「違う」
「これは我々が作った兵器では――」
通信終了。
⸻
■王国崩壊
神代巨兵は、
ヴァルネシア統合王国全域へ侵攻。
浮遊要塞群は撃墜。
防衛結界は突破。
魔導都市は崩壊。
王都は七日後に消滅した。
後に回収された資料では、
同国生存率は一割未満であったと推定されている。
⸻
■研究部門見解
現在、
中央監査部は、
神代巨兵出現について以下の仮説を採用している。
当時、
研究班内部では、
「古代文明は、
強大な兵器の暴走によって滅んだ可能性が高い」
との推測が広く共有されていた。
また、
「絶対に敗北しない兵器」
を求める思想も強く存在していた。
神代巨兵は、
それらの空想が複合的に反映された結果である可能性が高い。
⸻
■戦局崩壊
ヴァルネシア統合王国滅亡後。
中立国家群は離反。
運用継続派内部でも分裂が発生。
封印派勢力は急速に拡大した。
そして、
破壊派急進勢力は正式に提案する。
《始原遺物》の完全破壊。
かつて禁忌とされた選択肢であった。
しかしこの時点で、
反対勢力は大きく減少していた。
⸻
■暫定結論
現在、
中央監査部では、
《空想戦争》とは、
“空想を制御できると信じた人類”
と、
“空想そのものを恐れた人類”
による戦争であったと定義している。
しかし最終的に、
双方は同じ結論へ到達した。
《始原遺物》を放置できない。
その一点である。
⸻
■個人付記
彼らは愚かではなかった。
古代文明が滅びたことも知っていた。
警告文書も読んでいた。
それでも手を伸ばした。
自分たちなら制御できると信じていたからだ。
そして、
その考えは古代文明もまた抱いていたのではなかろうか。
――後の中央監査部
第一監査官《アルヴェイン》
⸻
※本報告は「転」段階記録である。
次段階(結)では、
《始原遺物》破壊作戦、
および異常存在管理局設立経緯について報告する。
次回投稿 本日22:00
00-4.【始原遺物】── 終わりは始まりとなる




